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ラージアンの君とキス  作者: 月宮永遠
3章:宇宙戦争

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31/42

10

 シュナイゼルの腕の中で泣いた、あの日。

 自分の中の淡い想いに気付いてから、少しずつ彼と距離を取ることにした。

 ラージアン達といる時は、シュナイゼルと離れた所にわざと立ち、彼とばかり会話しないように気をつけた。抱きかかえて運んでもらう必要がある時は、シドに頼むようにしている。


 ――避けたりして、ごめんね……。


 夏樹のぎこちない態度を、シュナイゼルは問い詰めたりしなかった。心配そうにこちらを見つめることはあるが、そっとしておいてくれる。

 シュナイゼルはすごく大人だ。

 距離を置いているのは自分の方なのに、何も言ってこないシュナイゼルに対して不満を感じることもある。その度に自分勝手な感情に嫌気がさした。


 ――最悪だよ、私……。


 気分転換しようと家の外へ出たら、今日に限って、リリアンとシュナイゼルが並んでいる姿を偶然見つけた。

 何だか踏んだり蹴ったりだ。

 思わず引き返そうとしたけれど、それよりも早くシュナイゼルに気づかれた。


「夏樹」


 リリアンを残して、シュナイゼルは一人で夏樹の傍へやって来る。


「いいの?」


「何がだ?」


「リリアン……」


 シュナイゼルは振り返りもせずに「構わない」と頷いた。


「散歩しようかと思ったんだけど、シュナイゼルは?」


「一緒に行こう」


「ここで何してたの?」


「夏樹の様子を見にきただけだ」


 その言葉を聞いた途端、心はふわふわと浮き立った。シュナイゼルに、気にかけてもらえたことが嬉しい。


 ――距離を置くんじゃなかったっけ……。


 たった一言二言のやりとりで、シュナイゼルに寄せる気持ちが、むくむくと膨れ上がってくる。ここ最近の決意と行動が水の泡だ。


「――夏樹、そろそろ戦闘が始まる」


「戦闘?」


「心配はいらない。我等ラージアンの敵ではない。すぐに決着はつくだろう」


「そっか……」


 戦闘と言われても、いまいち想像がつかない。曖昧に返事すると、シュナイゼルは迷ったように口を開いた。


「夏樹……」


「ん?」


「私を、避けている理由を教えて欲しい」


「――っ」


「見守ろうと思っていたが……、やはり気になる」


「避けてないよ」


「しかし……」


「……」


「私のせいか?」


「違う……!」


 咄嗟にシュナイゼルを見上げた。額の信号は淡い紫色に染まり、金色の煌めきが浮いては消えた。夏樹の反応を心配しているようにも、怯えているようにも見える。背後で揺れるしっぽも、何となく元気がない。


 ――最強のラージアンなのに……。


 沈黙が気まずい。このまま並んで散歩を続けるのは、無理な気がしてきた。


「疲れちゃった。やっぱり、帰って休もうかな……」


「夏樹……」


 シュナイゼルの顔を見ることができない。

 俯いて自分の足を見つめていたら、シュナイゼルはそれ以上追及せずに、夏樹の背中を優しく叩いた。


「送ろう」


 ――ごめんね、嫌な思いをさせて……。


 家に帰った後、ディーヴァからワールドカップ観戦しようと、お誘いをもらったが、具合が悪いからと断った。

 初めてディーヴァの誘いを断ったが、許してくれた。

 破天荒な性格をしているが、ディーヴァは何だかんだで優しい。もしかしたら、夏樹が一番、彼等に対して不誠実で、優しさに欠けているのではないだろか……。


 ――あ――……、テンション落ちてる……。





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