骸骨怖い
お久しぶりです。寒い寒いと思っていたら、急に暖かくなり、もう春です。最近曜日の間隔がいろいろとずれてきているので、そろそろ修正しないとと思いつつ、怠けています。
忙しい時期をようやく抜けたと思ったらまた忙しくなってしまい、なかなか更新することが出来ませんが、地道に書いていっているので生暖かい目で見守っていてほしいです。
では第二十九話、楽しんでいって下さい。
「――――そうかもね」
やはり。そう言わんばかりの表情で真道は何かを言おうと口を開く。その前に桜は「でも」と言葉を繋げた。
「私はそれでも構わない。裏切られようが切り捨てられようが私は私が守りたいから勝手に守るし、親友でいたいと私が思うから親友でいる。嫌われても裏切られても切り捨てられてもそれは私がバカだったからで、皆を嫌うなんてあり得ない。私がそうしたいからそうしてるんだ。絵空事だろうが構わない。相手がどう思ってようが知ったことじゃない。私は私のやりたいようにやる」
真道は信じられない思いで桜を見つめる。真っ直ぐ己を見返す紅玉色の瞳に迷いの類は一切見受けられない。
裏切られてもいい、と言ったのだ。切り捨てられてもいい、嫌われてもいい。たとえそうなっても信じ続けるのだと。守り続けるのだと。相手を嫌うことなど、あり得ないのだと。
――――ずっと味方でいるのだと。
「俺は・・・・お前を裏切らないし、切り捨てっ・・・ない。・・・・・・親友、だからな」
「うん。信じてるよ、恭哉」
恭哉の言葉に心底から嬉しそうに笑う桜、それを見て真道ははっと鼻で笑う。
「馬鹿馬鹿しい。理解しかねますね」
「別に理解してほしいなんて思ってない。よって、理解しなくて――――いい」
スルリと猫のように真夜の拘束から逃れ、最後の言葉と共に真道の肩口目掛けて太刀を振り下ろす。それを真道の太刀が迎え撃つ。
「遊びはお仕舞いですよ」
刹那、真道の姿が視界から消えた。敵を見失い、泳いだ桜の死角から真道の太刀の柄ががら空きの脇に叩き込まれる。そこは先ほど塞いだばかりの箇所だった。
「・・・はっ・・・・・・・くっ・・・・そ・・・」
一瞬息がつまり、膝から崩れ落ちた桜の腹部が再び湿り気を帯びる。傷口が開いてしまったようだ。桜は咳き込みながらも今だ戦意を失っていない瞳で真道を睨み上げる。燃えるような眼差しを真っ向から受けとめ、真道は心地良さそうに目を細める。
「桜!!」
螢斗の色を失った叫びが鼓膜を震わす。彼の声に応えようと喉に力を込めるが、競り上がってきた鉄の味がする生暖かい液体が言葉を封じる。数回咳き込むと廊下が赤黒い液体で斑に染まった。
悲痛な叫びを合図にしたように飛び出した真夜が異能者の目でも捉え難い速さで抜刀し、真道に太刀を振り下ろす。間近に迫っている白刃が見えているはずなのに、彼はいっそ優しげな口調で歌うように言った。
「あなたを追い詰めて第三の異能を目覚めさせようと思っていましたが、やめました」
真道まであと数ミリという狭間を残して青い太刀が空中で止まった。まるで、見えない壁にでも阻まれたように。真道は気にした風もなく続ける。
「あなたは親友や家族とやらを傷つけられる方が余程堪えるらしい。あの日もそうでしたしね。それでしたら話は簡単です」
右手に血で作り出した刃を握り、にぃと唇の端をつり上げる。真夜が避けようと体に力を込めたのがわかったが、体が動いていない。真道がやろうとしていることが嫌でもわかった桜はひくり、と息を呑む。
「『血の領域』は破れませんよ」
「やめろぉぉ!!」
上手く力の入らない腕で上半身を懸命に起こそうともがく桜の目の前で、真夜の胸に刃が突き立てられた。鮮血の刃は真夜の背中から飛び出る。生暖かいものが数滴桜の頬にかかった。
どっくん
極限まで目を見開いた桜の心臓が大きく脈打つ。
また、繰り返すのか
真道は返り血がつくのも気にせず太刀を引き抜く。派手に血飛沫が上がり、がくりと膝をついた真夜は血溜まりの中に沈む。「くそっ」と呟いたのがわずかに動く唇の形でわかった。
「真夜!」「姉貴っ!」
倒れたままピクリとも動かない真夜に駆け寄った螢斗はざっと傷を確認する。急所はギリギリ外されているが、このままだとどちらにしろマズイ。螢斗はポケットから無線のようなものを取り出し、それに力一杯怒鳴る。
「関ヶ原さん!今すぐ来てください」
『うぉあ!?その声、螢斗か。俺は眠いんだ。可愛い子には爆睡させよって言うだろ』
「いいから早く来てください!」
滅多に声を荒げない螢斗の声から尋常ではない焦燥を感じ取り、関ヶ原は仕方ないといった様子で了承する。
「ほい、来たで」
無線を切ったと同時に螢斗の眼前に転移陣が展開し、関ヶ原が転移してきた。寝起きだったのかパジャマ姿だ。ご丁寧にナイトキャップまで被っている。
「真夜と龍、恭を医療棟に運んでください。応急処置は施しておきました」
「任せろ」
関ヶ原は転移陣が書いてある手のひらを床につける。と、彼の足元に転移陣が展開し、龍護と恭哉、真夜の三人を掴むと消えた。チョークで書いた陣より転移できる範囲は限定されるが、校内の陣を書いた紙を置いてある場所、または人の元へならどこへでも自由に転移できるのだ、と彼は以前自慢げに語っていた。
一連の会話は桜の耳には入ってこなかった。否。入ってこないのではない。入ってきたとしても音として認識できていなかった。桜は別の声を聞いていた。心臓よりずっと深い場所から響いてくる、声を。
『恨メ』
彼女が聴いているのは頭に直接響いてくる声。ひび割れていて、聞いているだけで震えあがりそうなほど恐ろしい声。
しかし、とても甘く、甘美な響きを孕んでいた。
ドックン
その声をかき消さんばかりに心臓が体内で一際大きく脈打つ。
『無力ナ己ヲ。何モ出来ナイ己ノ無力サヲ』
耳障りな笑い声が頭の中で反響する。桜は頭を押さえ、頭の中に響いてくる声を振り払おうとする。だが、声は鳴り止まない。
桜の首から下がっているチェーンに桜色の光が集まる。そのことに彼女は気付いていない。
『サァ、我ヲ開放シロ。貴様ニ出来ナイ事ヲ我ガ代ワリニシテヤロウ』
「嫌だ」
即答して頭の中の声を無視しようと集中する。彼女の考えを見抜き、乱そうと目論んでか、声はさらに続ける。
『十年前、貴様ハ我ヲ受ケ入レタ。ナノニ今、何故、我ヲ拒ム』
桜色の光が、徐々に形を変えていく。
「十年前がどうとか知らないけど、私はお前みたいな得体の知れないものの力は借りない」
きっぱり言い切ると太刀を支えに上半身を起こす。『再生と死滅』の連続行使のせいか、身体が鉛のように重い。さきほど脇腹に柄を叩き込まれたせいで少し動いただけで鮮やかな赤い染みが広がっていく。
『ボロボロノ体デ何ガ出来ル。無力ナ己ヲ恨メ、憎メ。ソウスレバ我ノ力ハ強クナル』
桜色の光はLのように折れ曲がり、色を変えていく。桜色から、黒へと。
「うっさい。そしてしつこい」
頭に響いてくる声を黙らせると片膝を押して立ち上がる。若干ふらつくが、一応立てた。
前を見るといつの間にか龍護達の姿がない。ついでに関ヶ原の姿も。残っているのは真道と戦っている螢斗のみ。二人は激しく斬り結んでいた。互角かと思いきや、螢斗が押されている。
「けっ」
螢兄と呼ぼうとして慌てて口を塞ぐ。彼の集中を乱したくない。
桜色の光は拳銃へと完全な変化を遂げ、グリップの下部分に桜色の不死鳥が刻まれる。これは他の異能者全員に共通するもので、具象化の姿形が武器に刻まれるのだ。
『貴様ノ兄モ大シタ事ナイナ』
ブチッ
「螢兄を馬鹿にする奴は何人たりとも許さん。死、あるのみ」
桜は静か過ぎる声で呟くと、胸に手を当てる。数秒後、紅玉色の瞳が何かを見つけたようにくわっと見開かれ、握った形のまま手を引く。と、桜の内から何かが引きずり出された。
最初は紅玉色の狼、次に桜色の不死鳥、最後に鎖に囚われている紅桜色の炎を目の部分に灯した骸骨。気の弱い者なら逃げ出してしまいそうなほどリアルに怖い。人体模型などこれに比べれば可愛く思えてしまう。
しかし、彼女はなんとも思わないのかゴキゴキと指を鳴らし、口の端に冷笑を刻む。
「お前か」
『マ・・・・待テェ~』
ドカバキボギャボキボキ以下略。
ち~ん、という効果音がとてもよく似合うシーンが出来上がってしまった。まぁ骸骨の自業自得なのだが、少しだけ同情してやってもいいかな、程度のやられっぷりである。骨が何箇所か真っ二つに折られていて見ていて大変痛々しい。
「ふん。次螢兄のこと悪く言ったら――――消す」
パンパン、と手を叩きながら死刑宣告する桜。骸骨が床に頭が埋まった格好で謝る。
『ズ・・・ズミマゼンデシタ』
「よろしい」
偉そうに言うと骸骨に巻きついている鎖に触れる。ジャラ、と鎖が鳴る。
「んで、これは何の飾り?噂に聞くコスプレってやつ?」
些かずれたことを真顔で述べる桜。骸骨は床から頭を出そうともがいていたのも忘れ、沈没する。
「これはこれは」
「本当に第三の異能が・・・」
骸骨が引きずり出されたあたりから戦いを止めていた二人が、片や楽しげに片や驚愕の眼差しで骸骨を見つめている。骸骨は床から頭を引き抜くと、桜に詰め寄る。
『違ウワ!貴様ノ父親ガ我ニ施シタ封印ダ!』
「私の親父が?」
『ソウダ!貴様ガ自ラ我ヲ呼ビ出サナイ限リ、我ガ出テ来レナイヨウニスル鎖。ソシテ貴様ノ意思ナクシテコノ鎖ハ解ケナイ。貴様ガ自分自身デ我ヲ使ウト決メナイ限リ、我ノ鎖ハ解ケナイ』
一気にまくし立てられ、桜は目を白黒にする。つまりこういうことだろうか。私がこいつの力を使うと言わない限り、この鎖は解けない、と。
「これが天空 桜の第三の異能の具象化。喋って動く骸骨とは・・・なかなか面白いですね」
「あの骸骨、黙ってればそれなりに怖いのに喋ったり動いたりすると恐怖が薄れるな・・・ん?」
螢斗は違和感を覚えて桜の胸元で揺れているネックレスに目を凝らし、眉根を寄せる。
一つ、増えてないか?
「私の断りなく勝手に暴れない。異能を使わない。出てこない。これを守れるならいいよ。あ、あとは絶対に人を殺さない」
真道と螢斗がそれぞれ勝手に骸骨を評価していると、桜が骸骨の鎖を引っ張り骸骨の瞳を覗き込む(瞳はなく、紅桜色の炎が揺らめいているだけだが)。
骸骨は(多分)笑って承諾する。
『イイダロウ。コノ鎖カラ逃レラレルナラソノ条件、飲モウ。タダシ、此方ノ条件モ呑ンデ貰オウ』
「内容による」
『貴様ニ死ナレテハ元モ子モナイ。貴様ガ絶体絶命ノ窮地ニ陥ッタ時、我ハ勝手ニ異能を使ワセテ貰ウ』
『何を勝手な』
憤然と抗議したのは不死鳥だ。狼は何も言わないが、鋭い眼差しで骸骨を睨み付けている。グルル、と低い威嚇の声が牙の間からもれる。
「・・・・・・わかった」
『桜!』
桜の了承に抗議の声を上げる不死鳥。狼も低く唸って同意できない事を示す。彼らを押さえつけて付け足す。
「ただし、不死鳥と狼|と協力するように。それから、たとえそうなったとしても人は殺すな」
『決マリダナ』
「話は纏まりましたか?」
骸骨と桜のやり取りを黙って見ていた真道が頃合を見て声をかける。桜は皮肉混じりに返す。
「お待たせしてしまって申し訳ありませんね。反撃の時間です」
骸骨が骨を鳴らしてケタケタ笑う。桜は太刀を抜くと骸骨に巻きついてる鎖を斬り捨てる。骸骨は自由になった両腕を振り回し、全身で喜びを表現する。気の弱いものが見たら泡を吹いて気絶しそうだ。
「踊ってないで集中しろ!ていうか異能の使い方教えろよ、骸骨。使い方がまったく判らん」
『コレハ失敬。ガ、我ノ使イ方ヨリ先ニ我ノ名前ヲ覚エロ。我ノ名前ハ、炎桜』
「エン・・・オウ・・・すごい綺麗な響き・・・どう書くの?」
『炎ト桜ダガ』
「へぇ。良い名前だね。よろしく、炎桜」
にこっと笑い骸骨の手を握る。骸骨は「馬鹿か、こいつ」と言いたげな雰囲気をかもし出しながらも頷く。
『ソレカラコイツ等ノ名前ハ不死鳥ガ桜鈴、狼ガ紅花ダ。主ナラ覚エテロ』
「了解。桜鈴に紅花ね。よし、覚えた」
『我ノ使イ方ヲ説明スル。先ズハ標的ヲ定メロ』
「標的?真道に的を絞れって事?」
『ソウダ』
言われたとおり真道に意識を集中させる。真道は何をするでもなく棒立ちだ。自らの目で桜の異能を見よう、という腹なのだろう。螢斗は邪魔にならないよう端に避ける。
桜が真道に意識を絞ったのを確認すると、炎桜は次なる指示を出す。
『我ハ貴様ノ思イ出シタクナイ過去ノ塊、貴様ノ己ニ対スル怒リ、憎シミ等ヲ糧ニシテイル。使エバ精神ガ不安定ニ成リ、異能ノ制御ガ難シクナル。我モ出来ル限リカバースルガ、ソレモ気休メ程度シカ出来ナイ』
つまり、使うたびに思い出したくない過去を思い出すってことか。
「――――っ。わかった」
覚悟を決めたように答える桜。炎桜は骨を鳴らして笑う。
『ソレデハ始メヨウ。復唱シロ。「魂ニ、痛ミヲ」』
「魂に・・・痛みを・・・?」
疑問符をつけながら復唱する。瞬間、真道が両膝をつき胸を押さえて苦しみだした。桜は何が起こったかまったく理解できずぼかんと突っ立っている。隣の螢斗も同じくだ。
『コレガ我ノ異能、魂ヲ直接攻撃スル異能ダ。防御不可ノ絶対攻撃、名ヲ『魂撃』』
「『魂撃』?」
問い返したのはいち早く立ち直った螢斗だ。桜は虚空を見つめ、ぽかんとしている。炎桜は骨を鳴らしながら肯定する。
『ソウダ。我ハ魂ヲ攻撃シ、死者ノ魂スラモ呼ビ出ス事ガ出来ル。言ノ葉一ツデ魂ヲ痛メツケ、死ヲ与える死神ノ力』
「死神の力。けど、いつ目覚めたんだ?桜の異能は俺と同じで二つだったはず」
『コノ異能ガ目覚メタ日デモアリ、源デモアル十年前ノアノ日、桜ハ精神的ニ大キナ傷ヲ負ッタ。本人ハ覚エテイナイ・・・。イヤ、記憶ヲ封ジラレテイルガナ』
螢斗は十年前の記憶を思い返す。だが、そんな場面を見た記憶はない。では自分はその場にいなかったのか。十年前といえば龍護が重傷を負って病院送りになったくらいか。己の思考に沈んでいると、声が耳に入ってきた。
「これが第三の異能、『魂撃』。防御不可の絶対攻撃。流石ですね。この僕が膝をつかされるとは。フッ・・・・フフフ、ハッハハハ。素晴らしい異能だ」
真道はこみ上げてきた笑いを押さえようともせず肩を震わせ、ふらりと立ち上がる。ふっと桜を見ると、頭を押さえて呆然としてる。その目はどこも見てない。
「桜・・・?」
その様子に違和感を覚えた螢斗がそっと呼びかけるが、桜の反応はない。
「さく「そこまでだ。№4」
桜咲「今回のプロフィール紹介は天空 洸哉さんです」
洸哉「三珠学園中等部三年B組在籍しています、天空 洸哉と申します。年は15になります。身長は162cm。体重は50kg。血液型はA型。好きな事ですか?勉学です。嫌いな物は辛い物。恐い物は・・・唐辛子です(ニッコリと見ていて寒気を催す笑みを浮かべつつ)」
桜咲「唐辛子・・・ですか?(うわっ。背筋に寒気が・・・)。どうして恐いのか、聞いてもいいですか?」
洸哉「(笑ったまま何も言わない)」
桜咲「えっと・・・はい。すみません。洸哉さんはあの恭哉さんと真夜さんの義弟なんですよね?顔立ちとか雰囲気とかはなんとなく似てますけど、性格はあんまり似てませんね」
洸哉「よく言われます。兄さんと姉さんは小さい頃から勉学やその他のことを放り出して天空家本家に遊びに行っていて、反対に僕は勉強詰めの毎日でしたから、そこでいろいろと変わったのではないでしょうか」
桜咲「あ~、たしかに。天空家本家にいる皆々さんは一癖も二癖もある人がたくさんいますからね。最後に一言お願いします」
洸哉「これからも僕の兄さんと姉さんの事をよろしくお願いします」




