第3話 「準備をしましょう」
私達は歩きつつも、これと言って危ない様子も無く、奥の方へと向かっていた。
「なぁセリア。だいぶ歩いたけど、どこ向かってるんかわかる?」
「ん-…。フラワは時折周りの音を聞いて歩いているみたいですが…」
そうやって話していると、「きゅいっ」と小さく鳴いてフラワが振り返る。
「…到着?」
「フラワ。ここが安全なんですか…?」
まるで肯定するようにぴょんっとその場で飛ぶ。
「ん-。たぶん安全な場所みたいですね?」
それを聞いて皆さんが周りの様子を見るように見渡す。
「確かに物凄い静かやけど…なんでなん?ミィ、なんか生物的にわかる?」
溜息交じりにミィさんが動き出して地面や木々を見たりしていく。
「…生物の痕跡が無い。たぶん、どの縄張りにも属してない場所」
「あっ、他の動物とかの縄張り外だから安全ってなったんですね!」
小さくミィさんが頷くとルーテリアさんやエルマさんも周りを見ていく。
「開けた場所で、付近には少し歩けば水辺がある。木々もほぼ生い茂っているから空からの奇襲もない…。野営地としては確かに理にかなっていますわね」
「あ、あの…こっちには岩場が?」
「ねぇ、全部揃ってるのが逆に怖いんだけど?」
「流石野生の勘よなぁ。縄張りの匂いとか嗅ぎ分けれるんやし?」
納得するように頷いていると、ルーテリアさんが何かに気が付き周りを見渡す。
「どしたんルーテリア?」
「──いえ、何でもありませんわ?とりあえず野営に必要な物を準備致しますわよ」
──そう言いつつ、私達は野営の準備と食料を集めていた。
「ふぅ…。木の実はこのくらいですかね…?」
フラワとメロデの案内で果実や木の実を集めたりしていた。
どうやら人工ダンジョンにも自然のように実っているようで、手つかずの所であれば残っているみたいです。
ふと私がメロデの方を見るとツンツンっと木の上のを啄んでつまみ食いをしており、下からヒヤンが見上げて欲しそうに「ぷぅ…」と鳴いていた。
「ふふ。ヒヤン、一緒に食べましょうね?」
私がそう言いながら撫でるとじーっと見つめてくる。
それを見ながら木の上のキナコも「くるぅっ」と鳴いてすぐに私に飛びついてきた。
「わっ。もうキナコったら…?ほら、行きましょうか?」
皆に告げると私は服を袋のようにして皆で一緒に野営地に行く。
「──?。そっちはどうだったの」
クローディアさんは簡易テントを張りつつ、私を見るなり言う。
「はい。無事に大量に食料を確保できましたよ」
そう言って付近に持って来てミィさんの土魔法で作った大きい器にごろごろと入れていく。
「よくこんなにあったわね…。え、ダンジョンってこんなにあるの…?」
「皆草食や肉食でも虫などを啄んでってしますから、それもあってすぐ見つけられたのかと…?」
キナコ達を見て「そう言えばそうだった」とある意味納得する。
「あの、ところで皆さんはまだ?」
「まだよ。ミィは釣り、ルイネは狩り、ルーテリアは周辺マッピング、エルマは枝拾い中。」
「なら、一つ果実を先に貰っても?ヒヤンとかがお腹が空いて不機嫌で?」
「まぁそのくらいなら良いんじゃない。」
私は「ありがとうございます」と言いながら一つ手に取ってヒヤンに氷のナイフを作ってもらうようにお願いする。
練習したお陰でそれらしい刃物のような氷が出来て、私は果実を切っていく。
「どうぞ」
そう言ってアシスやヒヤンなどあまりつまみ食いが出来なかった子たちにあげると喜んで食べていく。
──ふとした時、ガサガサっと音がする方向に咄嗟に振り返る。
「…?今音が…」
「襲撃…?それともモンスター…」
クローディアさんはその方向を見ながら臨戦態勢に入る。
そして少ししてから出てきたのは。
小型犬のような白い毛並みの子供だった。
傷がついており崩れるように座る。
「はい…?」
魔法を準備しようとしていたクローディアさんは拍子抜けをするように腕を下げる。
「だっ、大丈夫…?!」
慌てて私が抱き抱えると、逃げる気力が無いのか息が浅い。
「えと、えとえと…と、とりあえず治癒を。あ、エルマさんいない…ならえっと…」
私は夕方の野営地の中その子を抱き抱えつつ、皆の前に連れてくる。
「──なんかの犬?の子供ね。はぐれ?」
「とりあえずご飯をあげないと…。クローディアさん、あの果実すり潰してくれませんか?」
「え、私…?ま、まぁ良いけど…」
渋々といった雰囲気で「なんで私が…」と言いつつも拾ってきて一度洗った石を使ってすり潰していく。
──そして丁度5分後くらいに、ミィさんやエルマさんが帰ってくる。
「ただいまで…す?何をしてるんです…?」
「…介護?」
「あっ、二人とも丁度良かった。あの、この子がボロボロになってて…回復してあげてください。」
「え、あ、はっはい…!えと…痛覚緩和」
浅い呼吸、強張った前脚、セリアの腕の中で小さく震えている中、淡い光が広がりゆっくりと呼吸が少しだけ安定するようになっていく。
「────。第二。肉体再生」
続けざまに魔法を行使し、ゆっくりと体の傷を癒していくと、少し浅かった呼吸がゆっくりになり、前脚の力が抜け、セリアの服に鼻先を寄せて眠る。
「ふぅ…。これでな、なんとか…?」
エルマさんに感謝をしつつ、ミィさんに見せる。
私の腕の中で眠るこの子犬のような子を見つつミィさんは首を傾げる。
「…犬?狐?」
そう言いつつ見るも顔を腕に埋めてしまっておりミィさんは首を横に振る。
「…とりあえず起きたら見る。埋まってるとわからない」
「あぁ…ですよね…。」
苦笑しつつ、話していると丁度ルーテリアさんとルイネさんも帰って来たので事情を説明する。
「──。なるほどなぁ。んで、助けたと…。」
「幸い、食料はここの付近が入り組んでて見られないからかふんだんにありますわ。とはいえ数を増やすのは…ましてや人工ダンジョンですわよ」
「それはわかりますけど…こんな子供まで助けれなかったらたぶん後悔すると思って…。」
クローディアさんは「どれだけ面倒増やすのよ」と言われると、胸が痛い。
でもその通りではあると私自身もわかってしまう。
「…とはいえ、今日は遅い。明日に何か見る。」
そのミィさんの言葉に頷き、私達は軽く食事を済ませる。
──時間が過ぎ、夜も更け、交代で見張りを続ける中、私は腕の中で眠る小さな子をそっと撫でていました。
「……早く元気になると良いですね」
まるで親にすがるようにして、腕の中に埋まる子犬を撫でていると、皆も寄ってきて覗いたり、自分も撫でて欲しそうにしたり、何時も通り寄り添ったりと各々がまるで心配してるかのように、その夜を明かしていく。




