第2話 「ダンジョン演習」
「組み分けは終わったな。再度おさらいをしておく。」
ガーバント先生は改めて組み分け後の全員を見て言う。
「5~7日間のサバイバル形式だ。討伐点、採取点、生活点の合計によって順位を決める。」
「下位では義務労働、そして予算と単位の削減が入っているが、上位であれば報酬として単位の得点が入る」
「一つは冒険者階級の特例昇進。在学中でも高難易度依頼の受注や観覧が可能になる。」
「次に二つ目は素材・遺物の所有権。売却益8割還元に、錬金工房で優先加工をしてもらえる。」
「そして3つ目。学園特権。特別寮への優先入居剣、魔導図書館のSランク以上限定利用の禁書庫を期間限定で観覧出来るようになり、個人専用演習室も付与される」
説明が終わると各々がざわざわとし始めるもガーバント先生は「しかしだ」と続ける。
「どれだけ順位が低かろうと命あっての物種だ。くれぐれも無茶な行動をせず、生還してくるように。以上だ」
全員が頷き、他クラスの人たちと一緒に入口へと向かう──。
その頃、同学年の中でも不穏な動きがあった
「ねぇ…あそこの空気最悪過ぎない?」
「確かに…ヴァルザードさんの所なんか…重いってか」
「同行してるやつもなんか顔が暗いし」
そう聞こえる中、ヴィクトリアはチラッとその様子を伺う。
(あの様子…相当迷走はしているか…周り巻き込んで吹き飛ばさないと良いけれど)
──。
私達は出発して数分経つ頃には周りには人がいない状態になりつつも、契約獣を出して同行させた状態でフラワやポヨンの先導のまま歩いていた。
そこはまるで大自然の一部のような場所で、草木が揺れ、鳥のさえずりも聞こえるような場所で、とても施設内とは思えない。
「そういえばここって未開拓の大迷宮なんですよね…?」
「えぇ。要は魔力が帯びていてまだ未知の場所が点在している自然発生した場所ですわ?」
「迷宮って言ってるのに空見えるんはほんまに謎やけどな?」
時折空を見るとピヨピヨと小鳥が飛んでいる光景が見えた
「こうやって見ていると、なんだか大自然って感じですね」
「セリアさん。その言い方ではピクニック気分とバレますわよ」
「まぁ言いたい事は割とわかるっちゃわかるけどな?」
「…でも、不思議と静かな道」
「あの、迷宮はこれが初めてなんですが普通は違うんですか?」
私がそう言うとクローディアさんは歩きつつ横目で見て口を開く
「聞いたところによると、少し歩けばモンスターが飛び出してきたりするというのはあるけど?」
「あ、えと…私も少しだけ聞いた事があります。その、本当に手が付けられてない場所だと色んな危険がある…って」
「ある意味間違いありませんわね。実際の所、モンスターがいないにしても盗賊の根城があったりして襲撃をされるというのも記録自体にはありますもの」
「まぁーそんな盗賊程度やったらうちらのこの面子からしたら朝飯前やけどな?」
「…盗賊も馬鹿じゃない。ルーテリアの蒼月の霊狼がいるのにわざわざ来ない」
「ふふっ。それならシルヴァンちゃんにも感謝しないとですね?」
ルーテリアさんの横を歩くシルヴァンちゃんは「バフッ」と小さく返事をするように言う。
「まぁ危険度もⅦ段階あるうちの確かⅣやしな。そら来たくても無理か♪」
そう言いつつ「学園管理やから盗賊おらんけどな?」とからからと笑う。
「Ⅳは町が危険になる…程度でしたっけ?」
ミィさんは歩みを止めることなく、淡々と説明を続ける。
「…ん。その上のⅤが国家出動。…早々いない分類になっていく」
「災害を起こせる強い個体…ってことですね。そういうのがいたら真っ先に逃げましょう…!」
「そもそもこんな学園が管理をしてる迷宮に出るわけないでしょ。せいぜい危険度Ⅳよ出ても」
「えっと…母数自体は多くてもⅠやⅡが多いですからね…?」
そう話していると小川に差し掛かり、きらきらと空の光を受けて水面が揺らめいていた。
「わぁ綺麗。魚も泳いでますね。ん?あれってカニ?」
違和感を覚えて見るとカニみたいなシルエットが見えて反射的に指をさす。
「へ?えーっと……カニなんているんですか?」
「ほらあの岩の横にいる少しだけ色が違う甲羅みたいな」
「…ん、清流の水晶蟹。甲羅が透明な水マナ結晶のカニ」
「ようそんな距離から見えたな…?!」
「少し色が違って見えましたので?」
「…甲羅は高級治癒ポーションの触媒になるからよく狙われる。危険度はⅡ」
「ならあれを倒せばポイントになるわね」
「あの、でも可哀そうじゃ?」
そう言うと「はい…?」と私を見ながらクローディアさんが首を傾げる。
「セリア…?趣旨わかってる…?ポイント集めなんだけど」
「わかってますけど何もしてないのに狩猟をしたら可哀そうですよ」
そう言うと「えぇ……?」と更に首を傾げられる。
「まぁそう言うんもセリアらしいけど、開始してからなーんもポイントが無い状態なんよな」
「とはいえまだ初日。焦ったところで微々たるポイントになるものですわ?」
「ま、まぁ…荷物も全部私たち自身が管理しないと…ですからね…」
「…ん。でもそこがこの遠征の難しい所」
そう言いながらも「…でもセリアの料理は食べたい」と言うミィさんに「食事の事だけは要求するんかい」とルイネさんがツッコミを入れる。
「─故郷で過ごしてた時は現地調達もそうですけど、場所選びも重要だったので。たぶんここじゃないような気がするんです」
「なにそれ。野生の勘みたいなもの…?」
「たぶんそうですね!」
私が自信満々に言うと「うわぁ…信用できない…」と吐露されながらも笑いが小さく起きる。
「とはいえ、契約獣を出している以上はそれなりに食料は必須ですわ?狩猟も視野に入れて散策する方向で動かなければならないのも事実でしてよ」
「えーと…肉食がシルヴァンちゃんにフォレスちゃん、ライボルちゃんですね」
「こういう時だけはまだ召喚獣従えて無くてよかったって思うわ」
クローディアさんは契約獣を見つつ肩を軽くすくめる。
「…ブックはミィの魔力」
「なら、自ずと目標が絞れますね。体が大きい分空腹にも耐えれると思いますし、果実などを中心に探しつつお肉を確保しましょうか」
「では、方向性は決まりましたわね。」
「じゃあうちは水だけ汲んどいて加熱殺菌だけして飲み水確保しとこか」
「えぇ。その加熱をしている間に整理しますわよ」
ルーテリアさんは要点を纏め始める。
「優先順に1つ、野営地の確保。2つ、食料の確保。3つ、安全第一に行動といった所ですわね?」
そう言いつつ、私達は方針を明確にし、演習へと挑み始める。
──その様子を、木々の奥から静かに見つめる影があった。




