退院。アレを忘れて病院に入れず
午前10時には病院に着くように、急ぎ家事を済ませてバスに乗った。やはり雨だ。バスに乗ったらコートの裾も何もびしょ濡れだった。もうすぐ着く頃になって、マスクを忘れた事に気づいた。いつも持って来ていたのに、うっかりした。次男に連絡したら、「渡そう」と返って来た。私が入院の荷物の中に、マスクを何枚か入れておいたのがある。だが、病室に行けない事になるな。「1階まで一人で降りて来られる?」と聞いたら、大丈夫だと返って来た。やはり管を入れて何も食べなかった期間が短かったため、体力の消耗も少ないようだ。まあ、家では2日半ほとんど何も食べなかったのだが。
病院に着き、傘を閉じて中に入ろうとしたら、
「中に入る時にはマスクをしてください。」
と、病院スタッフのおじさんに言われた。だから入れなかった。入口の外には屋根があり、傘を差さずに立っていられるものの、風が吹いていて寒い。次男に着いた事を連絡し、そこで待つ事にした。
ところが、次男は看護師さんを待っているようなのだが、まだ来ないから降りて来られないと言う。とにかく待つしかない。マスクがないと中に入れないから外にいると連絡し、1階に着いたら連絡してと言っておいた。
しばらく入り口の外にいると、例のおじさんが私に声を掛けてきた、
「どうしました?」
と。
「退院のお迎えに来たんですけど、マスクを忘れてしまったんです。」
と言った。だが、マスクは買えるよ、と言われると思って(中の売店や自販機でマスクが売っている)、
「今、息子がマスクを届けてくれるので、待っているんです。」
とも付け加えた。するとおじさんは、
「寒いから中で待っていたら?」
と言ってくれた。入口は自動ドアの二重扉になっていた。扉と扉の間にいればいいと言ってくれたのだ。おじさん優しかった。人が通る所を避け、車いすが置いてある辺りに立っていた。そこでスマホを見ていたが、私は外のタクシーに興味深々だった。タクシーが続々と来るのだ。これは一体……。
連絡して、と言っておいたが、連絡なしでいきなり次男が目の前に現れた。マスク入れを差し出されて、私はマスクを取り出して着けた。次男はやたらとしっかりしていて、病人には見えない。痩せてしまっているけれど。すると例のおじさんが、
「息子さん?あ、入院病棟には、面会許可証をもらってつけないと……」
と、次男に言い始めた。
「今、退院してきたんです。」
と次男が言うと、おじさんは「ああ!」と驚く。入院患者は高齢者が大半を占める。私がお迎えに来たと言った後に息子が~と言ったのも悪かった。退院するのは私の親とか夫で、先に来ていた息子がマスクを届けてくれると思ったに違いない。
「私はお金を払いに来たんです。」
と、私は言った。そう、こんなにしゃんしゃんしている人は、お迎えなんてなくても帰れそうだからね。そして、これから会計に行くわけだが、その前に聞きたい事があった。
「あの、このタクシーは皆さんが呼んだものなんでしょうか。」
するとおじさんは、呼んだ人もいるかもしれないけれど、大抵呼ばなくても来ると答えてくれた。やはり需要がある所にはタクシーが集まって来るのだな。
「でも、11時台になると静かになっちゃうかもしれない。もしタクシーを呼ぶならここに電話番号があるから。」
と教えてくれた。アプリがあるから電話番号は要らないだろう。
さて、会計だ。しかし、どうしたらいいのか分からない。するとインフォメーションで次男が自分で尋ねていた。すっかり大人になった。と、大人になった、まだなってない、とコロコロ印象が変わるお年頃である。
入院費は高かった。後である程度戻って来るのだが。そして外へ。意外に荷物が少なかった。洗濯物を途中で持って帰ったからだろう。リュックがとても重たいのだが、それは事も無げに次男が自分で背負っているからか。
二重扉を抜ける時、おじさんに挨拶をして出てきた。短い間だったがお世話になった。外にはおじいさんが一人、ベンチに腰かけていた。タクシーは今一台もない。タクシー乗り場という札があり、恐らく一番前と思われる方へと歩いて行くと、タクシーがやってきた。そのタクシーには人が乗っていた。この病院まで乗って来た人だ。支払いをして、降りようとしている。だから待っていた。先に座っていたおじいさんは、自家用車のお迎えが来て乗って行った。それから、おばさんが外にいたスタッフに、タクシーに乗るにはどこにいればいいかと聞いていた。我々の場所で合っていた。
お年寄りを下ろしたタクシーが、我々の前へとやってきた。呼ばずに乗れて良かった。そう、夕べの時点では気づいていなかったのだが、今朝夫にタクシーアプリの話をしたら、迎車料金は?と聞かれ、調べたら400円かかるという事が分かったのだった。どうしてもの時は400円払ってでも呼ぶが、捕まえに行ったり、こうして待っていれば来るのであればできるだけ迎車料金を払わずに乗りたい。呼ぶ時は、タクシーがなかなか来ない時や具合の悪い時だな、と思った。そこで、救急車もやっぱり500円でも700円でも取っていいのではないか、と思った。どうしてもの時には呼ぶけれど、自力で病院に行かれるならその料金を節約する為に自力で行くだろう。タクシー代よりも安かったら意味がないだろうか。あまり高いのは困るけれど……2000円くらいでもいいかもね。※私個人の感想である。
無事家に着いた。私は全粥の作り方まで調べておいたのだが、次男はお粥でなくていいと言う。帰って来るなりラーメンが食べたいと言い、自分で作って食べていた。夕飯には何が食べたいかと聞いたらハンバーガーだと言ったからね。結局それは叶わず、冷凍のピザを美味しそうに食べていた。因みに3月3日だったので、義母からちらし寿司が届いて、それも少し食べたのだった。




