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救急車を呼ぶのは3回目だけど心臓バクバクしちゃった話  作者: 夏目 碧央


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10/11

手術について聞いた。次男の出した答えは?

 退院の3日後に、病院へ手術についての話を聞きに行く事になっていた。

 その日、私は友達と出かける予定が入っていた。退院前に次男からこの日の話を聞き、予定があると言ったら、次男は一人で大丈夫だと言った。まあ、もう成人済みだし一人でいいよな、と思っていたのだが、夫にこの話をしたら、

「次男一人じゃダメでしょ。金曜日?都合つくかな。」

と言った。この日は飲み会があるという事だったが、飲み会は夜だから大丈夫だとも言っていた。そうか、やっぱり手術をするかどうかの大事な話だから、一人ではなく家族で聞いて、みんなで考えた方がいいのか、と私も考え直した。

 退院した時のタクシーの中で、次男に夫から言われた事を話したら、とても嫌そうな顔をした。まあ、両親に付き添われて行ったら、まるで自分が子供のように感じるだろうな、とその顔を見て思った。それに、色々自分が質問しようとしているのに、横から口を挟まれたらやりにくいだろうとも。

「私が予定あると言ったから、お父さんが都合をつけようかと思っただけで、私が行かれるならお父さんは一緒には行かないんじゃない?」

と言い、やはり一人だと聞き漏らしたり、質問したい事を忘れたりするかもしれないとか、客観的には手術をした方が良さそうでも、本人は手術が怖いと思って判断が鈍るかもしれない、などと説得し、私も一緒に聞きに行く事に同意させたのだった。

 病院の予約は10時半。私の予定の方は、病院の用事が終わってからということで12時集合にしてもらった。またあの、最寄り駅と言うには遠すぎる駅へ歩く事にした。そこから電車ですぐの所が集合場所なのだ。

 ということで3月6日金曜日。10時半の予約だが、なるべく早く行って早く終わるようにという話をしていた。が、やっぱり次男がなかなか起きず、結局病院に着いたのは10時半ピッタリになってしまった。

 マイナ保険証がない、というかあるけれども期限切れという事で多少時間がかかり、また外科には初めてかかるということで問診票のような物を書いたりと、受付が済むまでに10分はかかった。以前次男から、内科には予約した時間にすぐ呼ばれたという話を聞いていたが、外科が、なのかどうなのか、待合室には既にたくさんの人が待っていて、なかなか呼ばれない。11時15分までに終われば待ち合わせに間に合うので、余裕だと思っていたのだが、全然余裕はない。11時半にここを出ればギリギリ間に合うかな、と思っていたのだが、呼ばれたのが11時15分だった。でも、早回しでというわけにも行かない。納得いくまで質問しないとね。

 さて、外科の先生は、けだるそうな、ちょっと横柄なしゃべり方をする男性だった。それだけで委縮してしまう人もいるだろう。しかし、そこはおばちゃんパワーで跳ねのける。というか、長年の間に色んな人と接してきたので、あまり動じない。後ろめたさがあれば別だが、こちらに非はなく正当な権利行使をしている場合にはひるまない。

 ところで、次男の腸閉塞の原因は「癒着」で、それは1年前に入院した時も同じだったと言う。恐らく虫垂(盲腸)が腫れた事と関係があるだろうと。

 私ははじめ、なるべく黙っていようと思っていた。次男が主体的に話したり質問したりして、私は補う役割に徹しようと思ったのだ。だが、次男は口が重くてなかなか話さない。先生が、初めて入院した4年前の話で、虫垂炎は抗生剤を投与したのですか、と次男に聞いた。だが、次男はよく分かっていない。未成年だったので、治療の方針などは保護者である私に話されたからだ。なので、

「あの時は虫垂炎が腫れた跡がある、と言われただけで虫垂炎が原因ではなかったのですが、細菌感染しているからと抗生剤の投与はされていました。」

と答えた。それと、開腹手術は一度もしていないですか、とも聞かれたが、本人は赤ちゃんの時の事までは分からないわけで、していない、と私が答えた。というわけで、私も一緒に交じって3人で話をする事になった。つまり口を出す事にした。

 癒着と言われても、どこがどうくっついているのかよく分らないので、しつこく質問した。そうしたら、腸が腸以外の部分にくっついているという事だと言う。てっきり腸の内部が狭くなる感じにくっついているのかと思っていた。それなら普段はどうして大丈夫なのか、と不思議だったのだ。次男の腸は、太さに問題はないらしい。それならどうして閉塞が起こるのかと言うと、こういう事らしい。

 5メートルくらいある小腸は、いつも自由に動いている。だが、次男のように一箇所癒着していて固定されてしまっていると、何かの拍子に折れたりねじれたりして閉塞してしまうのだ。消化の悪い物が通ったりするとそうなるらしい。

 癒着が起こる原因で一番多いのは、開腹手術だそうだ。だから医師たちは、手術によってまた腸閉塞を起こしやすい要因が出来てしまうから、癒着を剥がす手術はあまり勧めないのだそう。だが、一年に3度も腸閉塞を起こすようなら手術をするメリットはあると言っていた。手術後の再発は10%ほどだが、手術してまた腸閉塞を起こす人はそうはいないという。それから、手術をしたら癒着しにくい処置をするとも言った。

 次男が、若い人はこの病気にならないのですか、と質問した。内科で散々言われたからね。そうしたらこの外科の先生は、そんな事はないと言った。何人も診ていると。9歳のお子さんで、しょっちゅう腸閉塞を起こしていた患者さんに癒着を剥がす手術をしたら、すっかり性格も明るくなったという話をされた。

「私は手術をした方がいいと思います。」

と、私は言った。だが次男は、

「とりあえず様子を見たい、というか今日は決められないです。」

と言った。また出たよ。気が弱い。怖がり。優柔不断。どう聞いても手術した方がいいじゃないか。やはり手術が何となく怖いという心理が働いているのではないか。2カ月に1回腸閉塞を起こす方がつらいだろうに。だが先生は、

「一番つらいのは本人ですし。」

と、次男の意向を尊重。もちろん私も本人の考えを尊重しようと思う。そうですね、と引き下がる。そして、その後次男が色々と質問し始めた。癒着しているのはどこかとか。おへその後ろ、背中に近い深い部分だとか。いつも救急車に乗る時に、どこが痛いかと聞かれると、次男はおへその辺りを触っていたなと思い出す。

 それから先生は、癒着していても問題ない人もいるし、何カ所も癒着している人もいるけれど、それでうまく行っている人の癒着を剥がしてしまうと、却っておかしなことになる場合もあるなどという話もしていた。

 それらを聞き、次男は「手術をしない」という結論を出した。もちろん「今のところは」だ。今日色々分かったから、手術をせずに様子を見ると。もう、今から手術の予約をしてもいい、という話だったのに、今後の予約はしないで終わりになった。先生も、

「また腸閉塞を起こしたら、その時また来院するでしょうし。」

と言っていたが、また起こしたら今度こそ手術に踏み切る事になるだろう。それにしても、話してみると意外と良い先生だったな。最初に抱いた威圧感はすっかり消えていた。

 11時半頃に終わった。その時、友達から10分くらい遅れると連絡が入った。私もそのくらい遅れそうだったのでホッとした。だが、支払いをするのに時間がかかり、20分程遅れる事が確実になった。それでもまだまだ待たされるので、もう私は先に出る事にした。今日の支払いは大した金額ではないだろうから、自分で払ってきてもらっても大丈夫だろう。もっと早く出れば良かった。

 そうそう、支払いを待つ間、次男に、

「どうして手術をしない方がいいと思ったの?」

と聞いてみた。そうしたら、

「癒着はあの一箇所とは限らないから。」

だそうだ。他にもしているかもしれないと。そして、意識する場所が分かった、とも言っていた。まあね、消化の悪い物が……という話だったから、つまりはよく噛んで食べればいいのではないか、と私も思った。そう言ったら、次男も賛同していた。

「量は食べても大丈夫なんだね。」

と言っていた次男。ずっと、一度にたくさん食べてはいけないと思って、食べる量を減らしていた。回数を分けているようで、カロリーメイトやお菓子、甘い飲み物でカロリーをちょくちょく摂っているようだが、かなり痩せている。中学生の時より7キロも減ってしまった。運動しないで筋肉が落ちたからでもあるが、たまに3日間の断食をしているからでもあるだろう。しかし、私もよく噛んで食べるようにしようと思った。閉塞したら困るもの。


 数日後、次男が言っていた。今まではお腹が痛くなったら静かに横になっていたけれど、それは意味がなかった事が分かったと。むしろ逆立ちをした方がいいのかもしれないと。お腹が痛い時に逆立ちをするなど、ちょっと考えにくいが、次男は元々逆立ちが得意だったから、あるいはやるのかも。それと、彼は腸を揉むという手法も手に入れたらしい。後日調子が悪かったのがそれで治ったとか。

 今後、彼はよく噛む、逆立ちをする、腸を揉む、などの対処法で腸閉塞になるのを防げるのか、それともまたすぐに閉塞してやっぱり手術をする事になるのか。もしまた腸閉塞を起こしたならば、私はまたエッセイを書くだろう。ずっとこの手のエッセイが発表されなければ、次男が腸閉塞を克服したと思っていい。1年経っても音沙汰なければ祝福してやって欲しい。

 というか、ふと思ったのだが……腸を揉む事が出来たなら、癒着を剥がせたのではないか……。次男にそう言ったら、彼も体感的にはそんな気がすると。もしそうなら、すごい!


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