↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【Web版】追放された【重力使い】は万有引力を支配し、最強に至る  作者: 茨木野
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
91/91

91

 魔人たちの長兄ソル。彼がいるのはガイアたちのいた迷宮都市から、遥かに離れた場所。

 空よりも遥かに遠い。

 星の外、遥かに遠くにある場所。太陽だ。


 灼熱の星の上に、ソルは胡座をかいて、静かに微笑んでいる。

 太陽の表面温度は約五千五百度から六千度。

 燃え盛る紅炎が周囲で荒れ狂い、全てを灰にする熱線が降り注ぐ。

 言うまでもなく、人間が生きていられる場所ではない。

 無論、魔人もそうだ。


 だというのに、ソルはまるで春の暖かな日差しの下にでもいるかのように、柔らかく微笑んでいる。

 太陽の表面に触れている衣服や肌が焼け焦げることもなく、額に汗ひと粒かいていない。


「ああ……ヴィーナスは負けてしまったか。しょうがないか」


 同胞が殺されたというのに、ソルは悲しむ様子を全く見せていない。

 悲しみの涙を流すことも、怒りの炎を上げることもない。ただ静かに、凪いだ瞳で微笑んでいる。


「所詮は青き星の子。地球から発生した魔人じゃ、あの程度の力しか出せないか。まあ、ガイアは特別だけれど」


 すると、目の前の揺らぐ陽炎の中に、一人の女が姿を現す。


「よぉ」


「やぁ、テラステラ」


 ガイアの師匠であり、星の賢者テラステラ。

 彼女は気怠げに、ひらひらと片手を挙げる。

 彼女もまた、灼熱の太陽の上を平然と歩いている。ただし、ソルと違って。


「立体映像かい」


「あったりめえだろ。こんなきしょいとこで平然としてられるのは、赤き星の子であるお前くらいだよ」


 テラステラが呆れたようにため息を吐き、太陽の地表を指差す。


「お前、何を企んでんだ。青き星の魔人の振りなんかして。この星の魔人のくせによ」


「そんなことを聞くためにわざわざ立体映像をよこしたのかい。星の賢者様は随分と暇みたいだね」


「うっせー。早く答えろ」


 ソルは口角を上げ、ニコッと笑う。


「他の魔人たちと同じさ。僕もまた、あの星に住む害虫たる人間たちを退治したい」


 ソルは静かに目を閉じ、自身の胸にそっと手を置く。

 それは心からの言葉であることを表明する、優雅な所作だった。

 だが、テラステラは不愉快そうに顔をしかめる。


「ふんっ。気に入らないね。お前のそれは、半分正しく、半分嘘だろうが。一番重要なとこが抜け落ちてるだろ」


「おや、ばれちゃったかな」


 ソルは微笑む。そう、笑っているのだ。

 柔らかな笑みを一切崩さず、彼は言う。


「正確に言うなら、僕が望むのはあの星と、星に住むすべての生物を滅ぼすことだよ」


 ヴィーナスを含めた魔人たちは皆、あの青い星から生まれ落ちた。

 魔人たちは動機に多少の差はあれど、星に住まう害虫である人間たちを殺そうとしている。

 それは偏に、あの青い星を本来の綺麗な状態に戻すためだ。

 青い星の存続のために、彼らは戦い、人間を滅ぼそうとしている。


 だが、ソル。彼だけは決定的に違う。

 人間を滅ぼすのは、あくまで彼の目標地点の半分でしかない。

 人を殺し、星さえも跡形もなく滅ぼす。それが、彼の真の望み。


「お前はあの星を滅ぼすために、他の魔人たちを都合よく利用してる。それでお前は心が痛まないのか」


「ええ、全く。使えるものは全部使うよ。あの青い星、そして星に住む人々全部を、壊す」


 人類抹殺どころの騒ぎではなかった。

 ソルの狂気を孕んだ壮大すぎる目的を聞いても、テラステラは何もしない。否、物理的にできないのだ。

 彼女の本体は今、この赤い星から遠く離れた場所にいるのだから。


「お前をぶん殴るのは、ガイアに任せるよ」


「そうかい。ふふ、楽しみだ」


 テラステラは不愉快そうに鼻を鳴らすと、陽炎のようにその場からフッと姿を消した。

 一人残されたソルは、遥か遠くで青く輝く星を見つめながら、楽しげに唇を動かす。


「さぁて、次はどうやって、あの星を壊そうかな」



    ☆



 俺は星の引力を借りて、電波塔に巨大隕石を落とすことに成功した。

 塔を一瞬で木っ端微塵にした。だが、その代償は大きかった。


「これは」


 俺の目の前に広がるのは、跡形もなく消し飛んだザドゥの街。

 巨大な塔のあった場所には、深くえぐれた巨大なクレーターだけが残されている。

 その周囲には、本当に何もない。

 土埃が風に舞い、焦げた石の匂いが鼻を突く。

 建物も、外壁も、道も。街の全てが完全に吹き飛んでしまったのだ。


「しょうがないよ、ガイア」


 ノエルが静かに俺の傍へやってきて、そっと肩に手を置く。


「メルクリウスが衝撃を防いでなかったら、島の外にいる人たちもろとも消し飛んでいた。これが、私たちにできる最善策だったよ」


 そう、だよな。

 必死に頑張って、その結果がこれだ。

 故郷を失った町の人たちは、さぞ落胆していることだろう。


「ガイアさーんっ」


 背後から声が聞こえ、振り返る。

 チワさんをはじめとした街の人たちが、連れ立ってこちらへと歩いてきていた。

 俺は思わず、彼らからスッと目を逸らしてしまう。

 あんな大口を叩いておいて、結局街の形を救うことはできなかったのだから。


「だいじょーぶだよ、ガイアっ。それに、めるちゃんもっ」


 リィナが俺と、そしてさっきから俺の背中に隠れて震えているメルクリウスに、明るい笑顔を向ける。


「ほらっ。見てっ」


 チワさんは小走りでこちらへと駆け寄ると、俺とメルクリウスの前に立ち、深く頭を下げた。


「我々を、巨悪から救ってくださり、本当にありがとうございました」


 チワさんや、街の人たち。

 全員が、俺たち魔人に向かって深々と頭を下げる。

 衣擦れの音が響き、静寂が包む。

 それは決して、形式的なものではないと肌で感じた。

 顔を上げた皆は、笑っている。心から安堵し、感謝してくれているのだ。


「あ、あれ。なんなのだ、これは」


 メルクリウスの大きな瞳から、ぽろぽろと大粒の涙がこぼれ落ちていた。

 それを、リィナが柔らかな指先で優しく拭ってあげる。


「きっと嬉し涙だよ。あたしも、人から感謝されると嬉しいもん」


「感謝されると。ははっ、そうだな。嬉しいのだっ」


 今まで魔人であるメルクリウスの人生で、誰かから心底感謝された経験などなかったのだろう。

 俺だって、そうだった。

 パーティを理不尽に追放されるまでは、ずっと孤独だった。


 人に感謝されるということは、誰かに必要とされるということだ。

 それは、胸の奥がじんわりと温かくなるような、何物にも代えがたい喜びをもたらす。

 俺も、みんなを助けられてよかったと、心の底から思えた。


「チワさん。すみませんでした。街を吹っ飛ばしてしまって」


「構いませんわ。言ったでしょう。街は所詮、人が住むための箱。皆がいて、初めて意味を成すのです。ここには皆がいます。街は、また再興できますから」


 そういえば、そんな力強い言葉を口にしていたな、チワさん。

 町が瓦礫の山と化し、これから途方もない苦労が待っているというのに、彼女の顔に悲壮感は微塵も漂っていない。

 本気で大丈夫だと思っているのだ。皆で力を合わせればどうにかなると、強く信じている。


 強い女性だ。

 そんな気高くて強いこの人たちの、少しでも役に立ちたいと、純粋にそう思った。


「なぁ、二人とも」


 俺はリィナとノエルに声をかける。


「街の復興を、手伝おうぜ」


 リィナたちは、俺が言うまでもなかったのだろう。うんっ、と力強く頷いた。


「わたしも手伝うぞーっ」


 メルクリウスが元気よく両手を挙げて主張する。

 重力と音波を操る魔人が二人もいれば、瓦礫の撤去などあっという間に終わり、町はすぐに元通りになるだろう。


「ありがとうございます。さぁ、頑張りましょう、皆さんっ」


「「「おーっ」」」


 俺やリィナたち、そして町の人たちが一つになって拳を空へ突き上げる。

 もう、孤独に怯えていた頃の俺はいない。

 今はここに、確かな居場所を築けている。


 俺も、メルクリウスも、魔人だ。人間じゃない。

 それでも、人間でなくても、こうして人間たちの中で共に頑張れば、居場所は作れるんだ。


 師匠。ありがとう。

 あなたのおかげで、俺はこうして温かい居場所を作れています。

 これからも、俺は前を向いて頑張りますので、遠くの空から見守っていてください。


 心の中で、今はどこにいるかわからない師匠に向かって、俺は静かにそう語りかけるのだった。


一区切りです。

一旦完結扱いにします。状況見て再会しますので、よろしければブックマークはそのままでお願いします。



【作者からお願いがあります】


少しでも、

「面白い!」

「続きが気になる!」

「更新がんばれ、応援してる!」


と思っていただけましたら、

広告の下↓にある【☆☆☆☆☆】をタップして、

【★★★★★】にしてくださると嬉しいです!


皆様の応援が、作品を書く最高の原動力になります!


なにとぞ、ご協力お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。