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【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
冷ややかな眼差しを向けるノエルとチワ。
その二人の前に、俺は甲板の上で正座させられていた。
正座する俺の両隣には、ずぶ濡れのままのリィナとメルクリウスがぴたりと身を寄せている。
二人は満面の笑みを浮かべ、俺の両腕を左右からぎゅっと抱きしめていた。
「急に仲良くなったわね、二人とも」
ノエルがリィナたちに氷のように冷ややかな目を向ける。
まあ、相手は魔人だ。敵意を向けるのも無理はない。
チワさんも同様だ。あの強大な力を振るい、俺たちを襲ってきたメルクリウスに対し、良い感情を抱けないのは当然のことだろう。
リィナが少しばかり異常なのだ。これほど直ぐに魔人と打ち解けるなど、常人には考えられない。
魔人である俺自身ですら、驚きを通り越して困惑してしまう。
「好きなものが同じ同志、だからねっ」
「おーっ。リィナお姉ちゃんの言う通りなのだっ。ガイアお兄ちゃん好き、同志だからっ」
「同志っ」
二人が俺を間に挟み、さらに強く抱きついてくる。
なんだこれは。抱き合うのであれば、俺抜きでやってほしい。
「なんで間に俺を入れるんだ」
「「好きの同志だからっ」」
話が通じない。
リィナたちは小柄な体格に似合わず、驚くほど胸が豊かだ。それを両腕に強く押し当てられているのだから、俺の居心地が悪くなるのも理解してほしい。
「いい加減にしてくださいっ」
耐えかねたように、チワさんが声を荒らげた。
ふざけ過ぎていたから、怒られるのも仕方がない。
「どうして、敵と仲良くしてるんですかっ」
「敵」
チワさんの口ぶりに、かすかな違和感を覚える。
彼女はメルクリウスのことを知っているかのようだった。
「こいつは、ザドゥを侵略したゲーヒィンの仲間ですよっ」
「そうなのか」
俺が問いかけるも、メルクリウスは不思議そうに首を傾げた。
「げー。だれだって」
どうやらメルクリウスには心当たりがない様子だ。
「お前、ザドゥから来たのか」
「そうだぞっ」
「ということは、お前の姉ちゃんもザドゥにいるんだな」
「うん。ヴィーナスもいるぞ」
なるほど。この噛み合わなさは、多分そういうことだ。
「メルクリウスは、ゲーヒィンの名前を知らないのね」
「知らないぞ。なんだそのふざけた名前のやつは」
魔人は根底で人間を見下している。
人が路傍の虫を個別に認識しないように、メルクリウスもまた、ゲーヒィンという個人を認識すらしていないのだろう。
「下品な顔の、太った偉そうな男に、見覚えはないか」
「ああ、あるぞ。ヴィーナスお姉ちゃんのパシリなのだ」
これで全ての線が繋がった。
ザドゥでは、ゲーヒィンによる理不尽な支配が行われている。だが、その背後にはメルクリウスとヴィーナスという魔人姉妹が君臨しているのだ。
「ゲーヒィンは、魔人の力を利用しているんでしょうね」
メルクリウスの力とは考えにくい。こいつの力は物理的な破壊に特化している。
ヤヒコの街で聞いた怪現象、ザドゥへ行った人間が自らの意思で戻っていくという洗脳じみた事象とは結びつかない。
「パシリはヴィーナスお姉ちゃんに力を借りてたのだ」
「ヴィーナスはどんな魔人なんだ」
「わからんのだ」
俺は耳を疑った。
「わからんってどういうことだ」
「お姉ちゃんは、めるめるにも力の正体を教えてくれないのだ」
そんなことがあるのだろうか。敵同士であれば、手の内を晒さないのは当然の戦術だ。
だが、二人は姉妹なのだ。
家族にすら隠し事をしているというのか。
メルクリウスがぽつりと呟き、ひどく浮かない顔で俯いた。
「あんまり、仲良くないの」
いつの間にか、リィナが俺の腕から離れ、メルクリウスの正面に回っていた。
メルクリウスは力なく、こくりと頷く。
「そっか」
「うん」
リィナは慈愛に満ちた笑顔を浮かべ、彼女の小さな身体をぎゅっと抱きしめた。
「おーよしよしっ。なら今日から、もっと甘やかしてあげるよっ。妹よっ」
「お、お姉ちゃん。おねえーちゃーんっ」
メルクリウスが縋るように、リィナの背中に腕を回して抱きしめ返す。
彼女の大きな瞳には、うっすらとうれし涙が浮かんでいた。
その光景を前に、ノエルとチワさんも言いたいことはあるらしい。
チワさんの心情は理解できる。結局のところ、メルクリウスは故郷を奪った敵側の存在だからだ。
だが、ノエルはどうしてこれほど険しい顔をしているのだろう。
「チワさん。メルクリウスは、直接悪いことはしていないみたいだ。ヴィーナスが主導でやっていることらしい」
チワさんが静かに口を噤む。
敵側の魔人ではあるが、チワさんの家族に直接的な危害を加えたわけではない。
「ガイアさんは、どうしてメルクリウスを庇うんですの」
「庇ってない。ただ、何も悪いことをしていないのに、理由もなく嫌われるのは、ひどく辛いものだからな」
俺も魔人だ。元のパーティメンバーたちは、俺の正体を知った途端に怯え、遠ざかっていった。
俺は彼らに何も危害を加えていないのに。ただ魔人という化け物だというだけで、拒絶されたのだ。
それは、身を切られるように辛い経験だった。
同じ境遇に置かれたメルクリウスに、どうしても同情してしまうのだ。
「いちおう、わかりました」
メルクリウスを今すぐ処分しろと、チワさんが強硬に主張するつもりはないらしい。俺は密かに安堵の息を吐いた。
しかし、ノエルはずっと黙ったまま、底冷えするような瞳でメルクリウスを睨みつけていた。
彼女の胸中に、一体どんな思いが渦巻いているのだろうか。
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