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第四百二十二話「一晩明けると……」


 今日泊まるホテルは旅館でもなければ高級ホテルでもない。明日は観光へ向かうのでそのために今のうちに距離を稼いでおく必要がある。というわけで、空港でチャーターしていたマイクロバスに乗り込み、市街地を抜けて自動車専用道へと入る。自動車専用道から高速道路へと接続している。


 でも今日このまま目的地へ向かうわけじゃないから途中で下道に降りる。今日はもう時間も遅いし、明日の移動時間を短縮するために走っただけだ。本来なら空港の近くのホテルでもよかったんだろうけど、少しでも明日の移動時間を減らして目一杯遊びたいということでこうなった。


 今日の部屋は四人部屋を二部屋取っている。椛と柚は別で二部屋には含まれて居ない。今日の部屋割りは俺と薊ちゃん、譲葉ちゃん、蓮華ちゃんの四人で一部屋。もう一部屋が皐月ちゃん、茜ちゃん、椿ちゃん、芹ちゃんとなっている。椛と柚は二人でどこかに部屋を取っているだろう。それが同室なのかどうかは知らない。


「あ~、疲れましたね、咲耶様!ここらで一服、ツイスターゲームでもしましょう!」


「あの……、薊ちゃん……、言っていることがよくわかりませんが……」


 確かに移動で疲れたというのはわかる。でもその後の言葉がまるで繋がらない。何故一服にツイスターゲームをするというのか。そんなことをしたら余計に疲れるんじゃないのか?そもそも何でツイスターゲーム?そんなことをしたら大変なことになってしまうぞ。主に俺の心が……。


 俺はツイスターゲームを楽しんだという記憶は前世を合わせてもまったくない。でもあれがどういうゲームであるのかは知っている。アイドル達がキャッキャ言いながらツイスターゲームをしている動画とかには非常に興味があったからな。


 もし俺がここにいる同級生の女の子達とキャッキャウフフでツイスターゲームなんてしてしまった日には……。不可抗力であんな場所を触ってしまったり、抱き付いてしまったり、急接近したり……。果てはバランスを崩して倒れて組んず解れつウハウハになってしまうかもしれない。もしそんなことになったら俺の鋼鉄の意志といえど崩壊して皆に襲い掛かってしまうんじゃないだろうか。


 まだ初等科六年生程度の子達を相手に何を言っているんだと思うかもしれない。でも侮っては駄目だ。皆もう結構あちこちが膨らんできていて女を意識してしまう。単純に胸だけじゃなくて、お尻とか太腿とか、あの丸みはもう女のソレと言っても過言ではないだろう。あのムチムチの太腿に挟まれたらと思うともう……。


「咲耶様とツイスターゲームがしたいんです!」


「はぁ……?」


 何か薊ちゃんにそう力説されてしまった。まぁわけのわからない理屈を言われるよりも、『やりたいからやりたいんだ!』と言われた方がはっきりしていてわかりやすいとは思うけど……。


「というか結局ツイスターゲームを持ってきたのですね……。この旅の間にするつもりはありませんが……」


「もちろん持ってきましたよ!それに咲耶様はそう言われていますけど、私は絶対にこの旅行の間に咲耶様とツイスターゲームをしますからね!」


 何でそんなにあんなゲームがしたいのか……。あれは男目線でいやらしい目で見るゲームのような気がしてしまう。それは俺の心が汚れているからか……。


「まったく……。薊は何を言っているんですか」


「皐月ちゃん」


 もう一部屋のメンバー達が荷物を置いてこちらにやってきたようだ。そして入ってくるなり聞こえた薊ちゃんの言葉に皆呆れて……。


「咲耶ちゃんとツイスターゲームをするのなら私達もちゃんと呼んでください!」


「そうですよ。薊ちゃんだけしようなんてずるいです」


「いや……、あの……、皐月ちゃんも椿ちゃんも、そういう話じゃないでしょう?」


 何か二人の、いや、向こうのグループの抗議の仕方も色々とおかしい。皆が当たり前のようにそう言ってるから俺だけがおかしいのかと思ってしまいそうになるけど、どう考えてもおかしいのは皆の方だろう。


「ともかく今日はそんな遊びをしている場合ではないでしょう?もう時間も遅いですし、早くお風呂に入って寝なくては明日にさわりますよ」


「そんな!?ツイスターゲームが出来ないのなら今日咲耶様と同室になった意味がありません!」


「そうです!咲耶ちゃんのセクシーショットを眺めるも良し、一緒に組んず解れつするも良し、のはずだったのに!」


 だから薊ちゃんも蓮華ちゃんもその変な努力の方向性をもうちょっと良い方向にだね……。


「はぁ……」


 もう何か疲れてしまった。今日は飛行機の到着時間も遅かったし、ここまで車を飛ばしてきたとはいえそれなりに走ってきた。明日も朝早いことを考えたらもう早く寝る準備を始めた方がいい。


「ほらほら。明日の観光で失敗する方が困るでしょう?皆さん早くお風呂に入って寝ましょう。向こうの部屋の皆さんも」


「咲耶ちゃん引率の先生みたいだねー!」


「咲耶先生に色々と教えてもらいたいです!」


 駄目だこりゃ……。


 何とか皆を説得して今日は遊ばずにすぐに寝る準備に入らせるのに随分と手間取ったのだった。




  ~~~~~~~




 何とか皆を説得して、部屋に分かれて寝る準備を進めることに成功した。誰か先にお風呂に入っても良いよと言ったんだけど、全員に俺が先に入るように勧められたので一番風呂をいただく。まぁ狭いユニットバスだし一番風呂もクソもないんだけど……。


「ふんふふ~ん♪ふんふふ~ん♪」


 狭いお風呂でパチャパチャと水を叩く。九条邸の広いお風呂も良いんだけど、前世庶民育ちの俺としてはこういう普通のお風呂も落ち着く。あまり広すぎるとそれはそれで不安になるというか何というか。だから俺としてはたまにはこういう狭いお風呂も大歓迎だ。毎回狭いのも嫌だけどね。


「咲耶様~?湯加減はいかがですか~?」


「ええ。丁度良いで……、ぶふぅっ!?あっ、ああっ、薊ちゃん!?何をっ!?」


 久しぶりの狭いお風呂を堪能していると、突然薊ちゃんが扉を開けて突入してきた。体の前にだけ小さなタオルを垂らして隠している。でもそんなものじゃまったく隠せていなくて、チラチラと薊ちゃんの見えてはいけない体が見えそうで見えなくて……、俺の中のどこかで『プツリ』と何かが切れる音がしたのだった。




  ~~~~~~~




「…………はっ!?え……?あれ……?」


 気が付くと……、俺はベッドで眠っていた。いつベッドに入って眠ったのかまったく記憶がない。昨日はどうしたんだっけ……?確かお風呂に入っていてそれから……。駄目だ。何も思い出せない。いつお風呂から出て、その後何をどうしてどうやって眠ったのか綺麗さっぱり記憶にない。


「んむぅ……、しゃくやしゃまぁ……」


「えっ!?」


 目が覚めた俺が起き上がろうと思ったら隣に重みを感じた。そちらを見てみれば、この狭いベッドで俺の隣に薊ちゃんが眠っている。それもかなり肌蹴た格好だ。薊ちゃんって下着で寝る子だったっけ?林間学校や修学旅行ではそんなことはなかったよな?


「咲耶ちゃ~ん……、もっとぉ……」


「ひぇっ!?」


 今度は逆の方から甘えた女の子の声が聞こえて見てみれば……、こちらも服をかなり肌蹴させた蓮華ちゃんが俺にくっついて眠っていた。この狭いベッドに三人並んで眠っていたようだ。そして足元が重い。もしかしてと思って首だけ持ち上げて見てみればそこには……。


「んにゃぁ……、んにゃぁ……」


「譲葉ちゃん……」


 俺の足元に猫のように丸まって眠っている譲葉ちゃんの姿があった。どうやら昨晩は三人とも俺のベッドに入ってきて一緒に眠っていたらしい。何だこの状況は?俺の記憶がなくなっている間に一体何があったというのか。知りたいような怖いような、何とも言えない感情が湧き上がって来る。


「咲耶様、朝の準備に参り……」


「――ッ!もっ、椛っ!?違っ、これは違うのです!」


 椛はこの部屋の鍵を持っていたらしく、朝俺がいつも起きている時間に部屋に入ってきたらしい。そこで薊ちゃん達三人を同じベッドで寝かせている俺の姿を見られてしまった。これはやばい……。


「…………」


「…………」


「……わかっております咲耶様。咲耶様がご自分で女性と閨を共にするようなお方ならば私も苦労しておりません。大方その者達が勝手に布団に潜り込んだのでしょう。さぁ、その者達が起きる前に準備を始めましょう」


「はっ、はぃ……」


 よかった。椛は怒っていないようだ。仮に俺が女の子と同衾したからといって椛に怒られる筋合いはないはずだけど、こうして怒られずに済むというのならその方が良い。


 薊ちゃん達を起こさないようにそっとベッドから抜け出した俺は、椛に手伝ってもらって朝の準備を始めたのだった。




  ~~~~~~~




 どうにもおかしい……。朝起きてから薊ちゃんも蓮華ちゃんも俺の顔を見ると真っ赤になって俯いてしまう。まさか……、まさかとは思うけど……、本当に昨晩何かあったんじゃ……?でなければ二人のこの態度は説明がつかない。


 もう一つの部屋のメンバーも合わせて皆でホテルの朝食のビュッフェをいただいているけど……、何か薊ちゃんと蓮華ちゃんは俺を見るたび真っ赤になるし、もう一部屋のメンバー達からは白い目で睨まれてるし、俺は一体どうすればいいんだ?というか昨晩一体何があったんだ?


「にゃぁー!」


「それで……、譲葉ちゃんはどうして猫になっているのでしょうか?」


「にゃぁ?」


 可愛く手を丸めて顔の横に持ってきて猫の鳴き真似をしている。朝も猫のように足元に丸まって眠っていたし、本当に昨晩あの部屋で何があったんだ……。


「咲耶ちゃん……、同室だったメンバーに一体何をしたんですか?」


「ヒェッ!?」


 皐月ちゃんが笑ってない笑顔でそんなことを言う。滅茶苦茶怖い……。これなら師匠と一緒に修行でもしている方がまだ楽だ。


「どうぞ咲耶様」


「あっ、ありがとう、もみ……、ヒェェッ!」


 ビュッフェなのに給仕をしてくれている椛が俺の前にお茶を置いてくれた。一息つこうと思ってそれを飲もうと思ったんだけど、お茶を置いてくれた椛の顔は般若になっていた。


「えっと……、あっ!今日の観光楽しみですね!」


「ええ……。そうですね……」


 何とか芹ちゃんが話題転換を図ってくれて、怖い笑顔を浮かべていた皐月ちゃんも『ふぅ……』と深い溜息を吐いてから表情を和らげてくれた。まだ追及しようとは思っているという雰囲気は出しているけど、一先ず今の所はこれ以上何も言わないでいてくれるようだ。


「それでは準備が出来次第出発しましょうか。今日は移動も長いですし」


「そうですね……」


 朝の準備が一通り終わるとホテルを出る……、前に予想外の人物に遭遇した。俺達がもうホテルを出ようと思っていた時にフロントで椛と柚と話している五辻樒とばったり出会った。


「やぁ、偶然だね」


「はぁ……」


 いや、偶然かこれ?本当に偶然だったとしたらどんな奇跡だよ。広いこの国の中で、数ある日時の中で、丁度たまたまこんな都心から離れた場所で偶然出会うなんてあり得ないだろ。都内で会ったとか見かけたというのならまだしも……。


「九条さん達の修学旅行以来だったかなぁ。まぁ元気そうで何よりだよ」


「五辻さんは……、何かキャラが変わられましたね」


 何か……、前はこんなにチャラいキャラじゃなかったような気がする。無責任というか放任というか、そういうのは前からだったけど、今は前にも増して何だかチャラい。


「そうかな?大学生なんてこんなものじゃないかな?」


「はぁ……?」


 それは世の真面目に頑張ってる大学生の皆さんを敵に回す言葉じゃないかな?大学生だからって皆が皆、チャラくて遊んでるわけじゃないぞ。


「咲耶様、そろそろ出発いたしましょう」


「それじゃまたね」


「え~……、御機嫌よう」


 何か色々と腑に落ちないけど、確かにいつまでもホテルのフロントでダラダラしている場合じゃない。今日は移動距離も長いから早く行動しないと予定通りに終われなくなってしまう。こんな所で樒と再会したのは驚きだったけど、まずは俺達の旅を楽しもう。


「それでは今日は予定通りにお寺と神社を見に行きましょうか」


「「「はーい!」」」


 高速道路の無料区間なのか、自動車専用道なのか、どこからどこまでがどうかはわからないけど、とにかく昨晩走ってきた高速道路を通って、いざ、今日の最初の目的地へ!



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[一言] 女教師咲耶ちゃんも良いが保母さん咲耶ちゃんも良いと思うんだ(何)
[一言] にゃんにゃんしたんだな
[一言] 譲葉ちゃんがネコに...!!そういうことか!
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