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7/8

良の過去(3)

目覚まし時計が鳴る。止める。起きる。

今日から学校だ!!

喜びで朝からタンスの角に小指をぶつけ、パンをくわえ損ねて落とし、色々あって最終的に椅子を破壊したがこれからの素晴らしい高校生活を思えばこんなのかすり傷にもならない。

家のドアを開けると、青空が広がっていた。

まるで応援されているようで、うれしくなった。

バスと電車を乗り継ぎ、桜の道高校に着いた。

文化祭の時以来である。

「ふぅ〜〜〜〜〜〜」

大きな溜め息を吐いた。というかこれは深呼吸か?

校門に入る。入ろうとする。でも…やばい!緊張する!!やっぱ無理かも!!だってずっと楽しみにしてたし!!

しばらくそんなこんなで校門の周りをうろつき、ようやく一歩踏み出す。

よし、まず教室に入ったら元気よく挨拶。そんで席が近くの子と雑談。委員会とかも今日決める予定らしいから学級委員になる。そんでクラスの中心的存在として…

そうこう考えているうちに自分のクラス、1年8組の前につき、俺は再び大きく息をついた。

息を吸いながら引き戸を思いっきり引く。

そして体中の二酸化炭素を放出する覚悟で挨拶をする!!

「おはよう!!!」 

思わず絶句した。

教室はあり得ないほどがやついており、俺の覚悟のこもった二酸化炭素の塊などあっという間に消え去ってしまったのだ。

誰一人としてこちらをみない…

いや…まだまだ!!

プラン2,近くの人と友達になる!

自分の机を探すと、教室の窓際であった。

窓際か…窓際は本来なら4方向いるはずのご近所さんの1つがが窓になるからなるべく避けたかったが苗字が「む」から始まる以上宿命である。

席につき、周りをみる。ん?なんか俺の席の周り、だ、誰もいなくないか…?

その後スクバの中身を出しながら見回してみたところどうやらみんなすでに仲良しグループができているらしい。うっかりスクバの中身を床にばらまいてみたりもしたが誰一人見向きもしない。

馴染めなかったであろう数人のクラスメイトは本を読んだりイヤホンを付けたりして完全に1人の世界に入っている。

俺はあぁはならない…ならないんだ…そのためにこの学校に来たのである。

さっそくなにか話している明るく活発そうな男子数名のグループに話しかけてみる。

「お、おはよう!実は俺…入学式から風邪引いてさ〜し、しかも37.7っていう絶妙な熱で…笑えるくない?」

我ながら割としっかり喋れたんじゃないのだろうか。まずは話せただけでもほっとした。

「あー、そなんだ。お大事に。」

男子の1人がそう言ってくれた。

「あ、ありがとう…」

やばい…。このあとなんて言えばいいんだろう!雑談って難しくないか!?

あ、そうだ。今流行ってるって聞いたアイドル、Critical Workの話とか!ちゃんとミュージックビデオも見て、推しもとりあえず決めたし…話してみるか!

「あの、それで今流行ってるCritical Workなんだけどさ!」

俺が話そうとしたと顔を上げた時には、すでにその男子たちは違う話題で盛り上がっており、俺の言葉など届いていないようだった。

いや…まだまだ!!

「あ、ごめん!今なんの話してる感じかな?」

尋ねてみる。

その時だった。

「ねぇ…Critical Work好きなの?」

ぽんぽんと肩を叩かれ、振り向いた。

そこにはさっきとはまた違う雰囲気の男子グループがおり、こっちは優しくて穏やかそうだ。

「あ、うん!!」

「へー!!誰推し??」

「えーっと、オレンジの諏訪さん?って人かな!」

この前みた自己紹介動画の記憶を辿り、なんとか名前を絞り出す。

「あー!煌良ね!なるほどなるほど!僕は結菜がすきなんだよね〜」

「俺は望〜」

「僕は沙也加推しだよ!」

よかった、あたたかくてなんとか馴染めそうなグループだ。

「そうなんだ!みんな可愛いよね!」

思わず相槌を打つ。

「そうそう!ちなみにファンクラブには入ってるよね?」

…え?

「この前上がってたファンクラブ限定の動画やばくなかった〜!?」

「あと限定グッズ売られるってね!やばいよな!」

ちょ、ちょっと待ってくれ!どうしよう!ファンクラブに入ってないしもはや入るつもりもないしというか金欠だから未来永劫そんなグッズなんて買う日は来ないと思うんだが!!

俺が悶々としていると追い打ちをかけるように

「ライブのチケットは?もう取ってる?連番しようよ!!」

と善意100%の笑顔を向けられた。

これは…無理かもしれない。なんかもう、普通に申し訳ない!こんなにわかがファン気取ってすごく申し訳ない!!

「ご、ごめん!ちょっと急にトイレ!!」

思わず教室を出る。

その後も複数のグループに話しかけてみたがことごとくうまく行かず、学級委員の投票はあの、最初に話しかけた活発そうな男の子との投票でボロ負けた。クラスの中心とは程遠く、俺は初日から中学校時代と同じ、陰キャでなにをやっても日の目を見ない男になってしまった。

そんなことが続くともう部活に入る気力や、話しかける気力や、明るく振る舞う気力やらが薄れ、俺が会話する人間は家に入り浸る兄さん1人くらいしかいなくなってしまった。


俺は高校で完全に孤立した。

次回からはまた現代に戻って優月も出てきます!

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