良の過去(2)
入学式当日―――――
目が覚めた。今、何時だ?寝起きの頭がさえ、ほとんど条件反射で目覚まし時計をみる。
時計盤は午前5時50分を指していた。目覚ましをかけた時間のちょうど10分前であった。遅刻するどころか早く起きた自分にまずは安堵し、その後苦笑した。普段は目覚ましが鳴らないと、というか鳴っても起きられないタイプであり、朝はめっぽう弱いのだが今日に限って目覚ましが鳴る前に起きられるとは…しかも準備をゆっくりとするため結構余裕を持った時間設定であるにも関わらずだ。自分の、高校生活への胸の高鳴りをより一層感じながら体を起こした。
その時であった。
「うっ…」
俺は思わずうめき声をあげて頭を押さえた。
頭痛…頭痛がするのである。
しかも、体がだるい。
立ち上がるのもつらかったがひとまず水と薬、そして体温計と冷えピタをとって、またヨロヨロとベッドに戻り、体温計を挟む。
高校にいけないかもしれないという不安からくるのかウイルスから来るのかわからない悪寒に耐えながら計測完了を知らせる電子音を響かせた体温計を、恐る恐る見る。
37.7。
「いや…なんでやねん!?!?」
思わず大声でツッコんだあとに激しく咳き込み、自分が病人であることを思い出した。
普段からこんなふうにツッコめたら人気者になれたんだろうか。
というかもちろん平熱であることが一番なのは置いておき、いっそのことバカ高い熱を出して高校で友達を作る際の小さなネタにしたかった。
ん?でも待てよ…「入学式37.7っていうちょーびみょーな熱で休んだんだよね〜笑笑」とか言えばみんなちょっとは笑って「お前それはびみょーすぎー笑」くらいのツッコミはしてくれるんじゃないか…!?うん…この可能性にかけるしか今はない…
とにかく今は寝て、1日でも早く学校に行こう。
とりあえず高校に一報を入れ、俺は再びベッドに潜り込んだ。それから3日間は熱が上がり下がりをうやむやに繰り返し、そんなこんなで寝て過ごし、週末に突入した。
誰かの話し声が俺の耳を突き、俺は目を覚ました。どれくらい寝ていただろう。
ふと見ると、テレビがついている。話し声の音源はそこらしい。
血の気が引き、目と頭がさえる。
なんで…?俺はテレビなんてつけてない。誰がつけたんだ?合鍵は誰にも渡していない。兄さんにさえも。つまりこの家には、誰か、得体の知れない人物が侵入していることになる。
一旦落ち着こうと顔を下げ、深呼吸する。
ふと、手元を見る。
リモコンがある。
…………ん?
「あ、そういうこと!?!?」
つまり俺の寝相が悪かったせいで手がたまたまリモコンの電源ボタンに当たってテレビがついた…
え、それだけ!?俺がびびってた不審者なんてはなからいなかったってこと!?
「いや…自分で言うのもなんだが…恥ずかしすぎるだろ!!!」
ツッコんで気づく。
あれ?喉が痛くない。
熱を測る。
36.3。
あ、平熱だ。
「よっしゃ…!!これでやっと待ちに待った高校生活だ!!」
喜んだのもつかの間、今日が週末であったことに気づき、愕然とする。あと1日早ければ学校に行けていたのに!
まぁそんなことを今更悔やんでも仕方がないので、とりあえずダラダラ土曜昼恒例のバラエティを観る。普通の中学生ならば部活だ遊びだなんだで土曜の昼間からやってるバラエティなんて観ることがないだろうが俺は中学で部活にも入り逃がし遊ぶ友達なんていなかったため、見慣れた光景であった。しかしまぁ、ここ7ヶ月くらいは受験勉強に没頭していたためなかなか観る機会もなく、レギュラーメンバーと言われるメンツもそこそこ変わっている。
そんなこんなで夜になり、ご飯を食べて、寝る。
日曜はてきとーに中学のころかろうじて連絡先を交換したクラスメイト(もちろん、よろしくスタンプを送り終わるだけで会話が途切れている典型的なやつである)や目立つタイプだった人が大声で自信のアカウントを公言していた今人気の投稿サイトを開く。
みんな、高校で新たにできたんであろう友達との、リア充感満載の写真を投稿していた。
俺も来週にはこうなっているのかも知れない。
期待に胸を躍らせながら布団に入る。
ようやく明日から、待ちに待った学校に行ける。




