良の過去(1)
現実世界で良が高校1年生のころ――――
「ふぅ…荷物はこのくらいか。手伝ってくれてありがと、兄さん。」
「いや〜別に。思ったより広いアパートでなによりだよ。」
兄さんに手伝ってもらい、俺はこの春、一人暮らしを始めた!
理由は一つ!俺がこれから通う桜の道高校が実家からだと電車で片道最短3時間もかかるからである!
両親にも、そして今年高校を卒業し、もうすぐ彼女と同棲を始める兄にも、わざわざ一人暮らしなんてせず、高校はもっと近いところでいいんじゃないかと何度も打診されたが、俺は折れなかった。この学校の進学実績や部活、方針や校則はもちろんのこと、なにより、雰囲気が、The青春であったからだ!!
俺は中学生の頃、超に超がつく陰キャであり、心のなかではうまい返しやツッコミが思いついても、家族相手じゃないとなぜかついつい不安になって、「あ、」とか「う、」とか、「そ、そうだね」とか…まさに陰キャが共感してくれるであろう言葉の2文字目に絶対句読点が来る感じの話し方になってしまったのである!
2年生や3年生になって、ここから頑張るぞ〜とギアを上げても、結局のところ陰キャはなにをやっても陰キャであり、誰にも注目されず、日の目を見ない…ある意味完膚なきまでの陰キャライフを送ってきたのだ!もはやこれは誇れることである!
そのため俺は、中学3年生の頃にこの桜の道高校の文化祭で見た生徒全員が主体的かつ楽しんで、キラキラと輝いている…まさに御校の教育理念である「主・楽・輝」に沿った生徒たちに感銘を受けたのです!
…と、いけないいけない。
入学面接の練習をしすぎたせいで面接から1ヶ月が過ぎても台本が頭から抜けない…
とまぁとにかく!俺はきらめく輝く青春を夢見て、桜の道高校に入学!そして引っ越しまでしたのだ!!
ようやく中学生のころの陰キャな自分とはおさらば…明日からは高校生として、桜の道高生として、友達と寄り道したり、彼女と文化祭回ったり、部活に熱中したり…あ、ちょっと遅刻して先生に怒られちゃったりするのも、意外と青春っぽかったり…
まどろみの中でそんなことを考えながら、高校の入学式前夜、俺は眠りについた。
翌朝待っている最悪の試練も知らない、穏やかで儚い眠りだった。




