Day1(2)
いつもの部屋で目が覚めた。
目覚まし時計を見ると、もう昼の12時である。
体を勢いよく起こし、スマホをみる。よかった、日曜だ。
ほっとしたのもつかのま、俺はつい数時間前の出来事を思い出し、周囲を見渡す。机に、やはり見知らぬ女の子…いや、琉張優月がいた。
「目が…覚めましたか?」
その妙に落ち着く声と話し方になぜかほっとした。
「あぁ、ありがとう。」
「急に驚かせてしまい、すみません。全部、ご説明しますね。」
彼女の説明をまとめると、こういうことだった。
まず、彼女は車に思いっきりはねられたことで死亡。しかしなんの神様のいたずらなのか、異世界でもう一度やり直す権利を与えられたらしい。つまりここは、現実によく似た別世界…異世界というよりかはパラレルワールド的なものらしい。そしてなんとびっくり、今は高校の入学式の前日である4月9日であり、俺たちは新高校1年生、つまりは明日共に同じ学校に入学する生徒なのである。要するにパラレルワールドでありタイムスリップ…
そして、「ある条件」をクリアすれば、彼女はまた、現実世界で車にひかれる前日に戻り、そのまま生きて生活ができるらしい。
「な、なる…ほど?それで、その条件って、なんぞや?」
「はい、実は…」
「実は?」
「90日以内に誰かと心からの「恋人」になることなんです」
その瞬間俺には適任の大学3年生(この世界だと2年生か)の顔が浮かんだ。
懸念点は彼女持ちなところだが、まぁここパラレルだしなんとかなるっしょ!
「なるほど。それならいい案がある!じつはうちの兄が」
「いや、そうじゃなくて!」
「ん?」
「それを、あなたにやっていただきたいんです」
……え
「な、なんでそんなことに???」
「だってあなた、投げ銭もたくさんしてくれて、ライブの応募も毎回欠かさずしてくれてましたよね?コメントもいつも読んでましたよ。グッズもこんなに。その…ファン…なんですよね?神様によると、私が指名した人と恋しないと現実世界には戻れないそうなんです!」
うわ。これ…相当まずったか
この子は兄がしたあれやこれやを全部俺がしたと思ってる?これはもう…潔く言うしかねぇ!
「いや…大変申し訳ないんだけどさ。」
「はい」
「俺別に…君のファンじゃないんだよね。」
しばしの沈黙の末…
「はぁ!?!?!?」
それが彼女から発せられたものだと理解するまでに数秒の時間を要した。内気で丁寧な彼女らしからぬ声色であった。
「え、いやちょっと…」
思わずでた声は情けなく、なんの牽制にもならなかった。
「いやーまじか。てかふざけんじゃねーよ!こちとらファンの前で顔出しまでして大サービス大喜びですんなり現実世界に戻れると思ったのによぉ!!」
いよいよあっけにとらえられた。
彼女もハッとしたような顔になり、いつもの落ち着く声と口調で、
「ということで…これからよろしくお願いします…」
とまるで二重人格かなにかのように気まずそうに挨拶をした。
「いやいやいや!!今のなかったことにしようとしても無駄だよ!?」
思わずツッコんだ。
そう、内気で丁寧、語尾は敬語の可愛らしい女の子なんていうのは幻想に過ぎなかったのである。




