表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺だけが乗れる父の遺した廃騎士を、世界最強の騎士へ~嫌われ者の養子は、父の遺志と精霊を継ぎ、誰にも知られず辺境を守る~  作者: なごやかたろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/19

第八話 素直になれない

 朝の教室は、いつも通り賑やかだった。

 アルトは眠そうな目をこすりながら席へ着く。

 昨夜も修理が長引き、帰ったのは日付が変わる頃だった。


『契約者。睡眠時間三時間二十二分です。』

(数えなくていい。)

『慢性的な睡眠不足は作業効率を低下させます。』

(分かってるって。)


 そんなやり取りをしていると、教室の扉が開いた。


「おはようございます。」


 セレスだった。

 透き通るような銀色の髪を揺らしながら、自分の席へ向かう。

 教室の空気が少しだけ華やぐ。


「今日も可愛いな……。」

「成績も一番だし。」

「魔法もすごいしな。」


 そんな声があちこちから聞こえてくる。

 アルトは机へ突っ伏した。


(……人気者だな。)

『契約者。』

(なに。)

『心拍数が上昇しています。』

(うるさい。)

『緊張ですか?』

(違う。)

『では恋愛感情でしょうか。』

(もっと違う!)


 思わず吹き出しそうになった。


「アルト?」


 気付けばセレスが目の前に立っていた。


「……何?」

「昨日の魔物学のレポートですけど。」

「ああ。」

「解体図、とても分かりやすかったです。」

「そう?」

「ええ。」

「少し見直しました。」


 その一言に、アルトの胸が少しだけ高鳴る。

 だが。

 次の瞬間。


「でも。」

「授業中に寝るのは、やっぱり良くないと思います。」

「……はい。」


 結局、最後は説教だった。


◇◇◇


 昼休み。

 中庭では模擬戦が始まっていた。


「次、セレス!」


 教師に呼ばれ、セレスが前へ出る。

 相手は上級貴族の息子。

 火属性魔法を得意とする少年だった。


「始め!」


 炎が走る。

 だが、セレスは慌てない。

 最小限の動きでかわし、魔法陣を展開する。


「《風刃》」


 一瞬。

 相手の杖が弾き飛ばされた。


「そこまで!」


 歓声が上がる。


「すげぇ!」

「やっぱり首席だ!」


 セレスは一礼して席へ戻る。

 アルトはその様子を眺めながら、小さく笑った。


(やっぱりすごいな。)

『契約者。』

(なに。)

『尊敬していますか?』

(してる。)

『では、なぜ普段は突っかかるのですか?』


 アルトはしばらく黙っていた。


(……あいつは真っすぐだから。)

(俺みたいなのが近付いたら迷惑だろ。)

『理解できません。』

(だろうな。)


 精霊には難しい話だった。


◇◇◇


 放課後。

 校門を出ようとした時だった。


「アルト。」


 呼び止められる。

 振り向くと、セレスが立っていた。


「今日のレポートのこと。」

「ありがとう。」

「参考になりました。」


 アルトは少し照れくさくなり、視線を逸らす。


「……別に。」

「また何かあったら聞いてもいいですか?」


 その言葉に、胸が少しだけ熱くなる。

 本当なら。


「もちろん。」


 そう答えたかった。

 けれど。


「自分で調べろ。」


 口から出たのは、正反対の言葉だった。

 セレスの表情が曇る。


「……そうですよね。」


 小さく頭を下げ、そのまま歩き去っていく。

 アルトはその背中を見送りながら、大きくため息をついた。


(またやっちゃったな。)

『契約者。』

(分かってる。)

『先ほどの回答は、本心と一致していません。』

(分かってるって。)

『なぜ、そのような発言を?』


 アルトは苦笑する。


(俺は辺境代官の養子で、出来損ない。)

(あいつは学年一位。)

(住む世界が違うんだ。)

『理解できません。』


 精霊は静かに言った。


『契約者は、優秀です。』


 アルトは思わず笑ってしまう。


「ありがとう。」

「でもさ。」

「世の中には、そういう理屈じゃないこともあるんだ。」


 夕日に染まる帰り道。

 アルトは誰にも聞こえないよう、小さく呟いた。


「……ごめんな。」


 その謝罪が、セレスへ届くことはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ