表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺だけが乗れる父の遺した廃騎士を、世界最強の騎士へ~嫌われ者の養子は、父の遺志と精霊を継ぎ、誰にも知られず辺境を守る~  作者: なごやかたろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/30

第四話 父とは違う

 それから三日が過ぎた。

 放課後になると、アルトは毎日のように東の森へ向かっていた。


『反応を確認。』

(三時の方向。)

『正解です。』


 精神リンクを通して交わす会話にも、少しずつ慣れてきた。

 角兎の動きも読めるようになっている。


「はっ!」


 横へ踏み込み、一閃。

 角兎は悲鳴を上げる間もなく倒れた。


『討伐を確認しました。』

「よし。」


 四体目だった。

 初日にはあれほど苦戦した相手を、今では落ち着いて倒せるようになっている。

 アルトはナイフを抜いた。


「頼むぞ……。」


 慎重に解体していく。

 心臓の裏。

 魔力の集まる器官。

 指先で探る。

 しかし。


「……ない。」

『確認しました。』

『蒼晶石は存在しません。』


 アルトは天を仰いだ。


「また外れか。」

『現在の討伐数、四体。』

『統計上、採取できない可能性は七一・六%です。』

「計算しなくていい。」

『失礼しました。』


 謝っているのかどうか分からない口調だった。

 アルトは思わず笑ってしまう。


「いや、ありがとう。」


◇◇◇


 さらに二日。

 討伐数は七体になった。

 それでも蒼晶石は一つも出ない。

 倉庫へ戻る頃には、すっかり日が暮れていた。

 アルトは騎士の足元へ腰を下ろす。


「今日は疲れた……。」

『お疲れ様です。』

「励ましてる?」

『事実を述べています。』

「そっか。」


 苦笑しながら、いつものように雑巾を取り出す。

 脚部を磨き始める。

 十年間続けてきた日課。

 素材が見つからない日でも、これだけは欠かしたことがない。

 精霊はその様子を静かに見つめていた。


『契約者。』

「ん?」

『戦闘記録を閲覧しますか。』

「父さんの?」

『はい。』

「見たい。」


 精霊が指を軽く振る。

 コックピットの上空へ、青白い映像が映し出された。

 荒野。

 無数の魔物。

 その中心で、一騎の騎士が大剣を構えている。


「……。」


 アルトは息を呑んだ。

 巨大な魔物が飛び掛かる。

 騎士は一歩踏み込む。

 次の瞬間。

 轟音。

 大剣が一閃しただけで、魔物の巨体が真っ二つになった。

 さらに二体。

 三体。

 圧倒的だった。


「すごい……。」

『前契約者アルバン・ノーツ。』

『近接戦闘を主体とする戦闘スタイルです。』


 映像はまだ続く。

 重い一撃。

 豪快な踏み込み。

 正面から敵をねじ伏せる戦い方。

 まさに英雄だった。

 アルトはしばらく見入っていた。

 やがて、小さく笑う。


「俺には無理だな。」

『はい。』


 迷いのない返事だった。


「即答か。」

『前契約者は卓越した身体能力と魔力量を有していました。』

『契約者アルト・ノーツが同じ戦闘方法を選択した場合、期待戦果は著しく低下します。』

「だよな。」


 悔しくはなかった。

 父は父。

 自分は自分。

 それはずっと分かっていた。

 アルトは騎士を見上げる。

 右腕を失い。

 脚は崩れ。

 今にも倒れそうな父の愛機。

 その姿を見ながら、ぽつりと呟いた。


「でも。」

「父さんと同じになる必要はないよな。」


 精霊は静かにアルトを見る。


『質問の意図を確認できません。』

「俺、昔から整備する方が好きだった。」

「武器を見るのも好きだし、仕組みを考えるのも好き。」

「だったらさ。」


 アルトは騎士の装甲へそっと手を置いた。


「俺が一番戦いやすいように作り替えればいい。」


 静寂が流れる。

 精霊は数秒間、何も答えなかった。

 やがて。

『設計思想の変更を確認。』

 目の前へ新たな画面が開く。



【機体運用方針】

標準戦闘仕様  終了

個体最適化計画 開始

対象契約者:アルト・ノーツ



 アルトは思わず目を丸くする。


「そんなことまでできるのか?」

『可能です。』

『本機は契約者ごとに最適化する設計思想で開発されています。』

『前契約者の仕様は、アルバン・ノーツ専用です。』


 アルトは画面を見つめたまま、小さく笑った。


「じゃあ。」

「父さんを真似するんじゃない。」

「俺だけの騎士を作ろう。」


 精霊は静かに頷いた。


『了承しました。』

『契約者専用機体への改修計画を開始します。』


 その瞬間。

 アルトの胸は、不思議と高鳴っていた。


◇◇◇


 翌日。

 八体目の角兎を倒す。

 もう動きに迷いはない。

 解体にも慣れ始めていた。


『心臓の後方です。』

「分かってる。」


 慎重にナイフを入れる。

 指先に、硬い感触が伝わった。


「……!」


 取り出した掌の上で、小さな蒼い結晶が夕日に照らされて輝く。


『蒼晶石を確認しました。』


 精霊の声が、いつもより少しだけ柔らかく聞こえた。


『修復計画、第一段階へ移行します。』


 アルトは結晶を強く握りしめる。


「父さん。」

「やっと、スタートラインだ。」


 蒼い結晶は、まるでこれから始まる未来を祝福するように、静かに輝いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ