↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺だけが乗れる父の遺した廃騎士を、世界最強の騎士へ~嫌われ者の養子は、父の遺志と精霊を継ぎ、誰にも知られず辺境を守る~  作者: なごやかたろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/39

第三十八話 最後の一撃

 大地が揺れる。

 一歩。

 また一歩。

 森の奥から現れた存在に、誰もが息を飲んだ。

 巨大な身体。

 黒く染まった外殻。

 周囲の魔力を喰らうような異質な気配。


『識別不能。』


 精霊の声が響く。


『推定危険度――災害級。』


 アルトは剣を握り直した。


「……。」


 十年前。

 父が戦った存在。

 その姿に、どこか覚悟を感じる。


「父さんは……。」


 小さく呟く。


「これと戦ったのか。」


◇◇◇


 魔物が咆哮する。

 空気が震える。

 巨大な腕が振り下ろされた。


「来る!」


 アルトは機体を動かす。

 地面が砕ける。

 間一髪。

 攻撃を避ける。


『装甲損傷。』

『右脚部、負荷上昇。』

「まだ動ける。」

『推奨しません。』

「でも。」


 アルトは後ろを見る。

 その先には街がある。

 避難した人々がいる。


「ここで止める。」


◇◇◇


 魔物が再び迫る。

 騎士は剣を構える。

 しかし。

 硬い。

 刃が弾かれる。


「効かない……。」

『通常攻撃では有効打になりません。』


 アルトは歯を食いしばる。


「なら。」


 機体へ魔力を流す。


『警告。』

『出力限界を超えます。』

「構わない。」


 セレスが隣で息を飲む。


「アルト……。」

「大丈夫。」


 アルトは前を見る。


「俺はもう、一人じゃない。」


◇◇◇


 セレスの魔力が流れ込む。

 古びた騎士の内部。

 長い年月眠っていた力が目覚める。


『精神リンク率上昇。』

『魔力循環、安定。』

『限定的な性能解放を確認。』


 錆びた装甲。

 古い機体。

 誰にも見向きされなかった騎士。

 その動きが変わる。


◇◇◇


 巨大な魔物が吠える。

 騎士が走る。

 互いの距離が縮まる。


「行くぞ。」

「はい。」


 一瞬。

 全てが静止したようだった。

 アルトが剣を振る。

 セレスの魔法が重なる。

 二つの力。

 二人の想い。

 それが一つの刃となる。

 巨大な魔物の身体を貫いた。


◇◇◇


 咆哮。

 大地を揺らす最後の叫び。

 そして。

 静寂。

 巨大な身体が崩れ落ちる。


『対象反応、消失。』

『災害級個体、討伐確認。』


 アルトは大きく息を吐いた。


「……終わった。」


 セレスも目を閉じる。


「……勝ったんですね。」

「ああ。」


 その瞬間。


『警告。』


 精霊の声が変わる。


『高エネルギー反応。』


 アルトの表情が変わった。


「……何?」


◇◇◇


 倒れたはずの巨体。

 もう動かないと思われた身体。

 しかし。

 その奥。

 残された魔力が膨れ上がる。


「アルト!」


 セレスが叫ぶ。

 アルトは反射的に操縦桿を動かす。

 だが。

 完全には間に合わない。

 最後の力を振り絞った一撃。

 巨大な衝撃が。

 騎士の胸部へ叩き込まれる。


『操縦区画、損傷。』

『警告。』

『生命維持機能低下。』

「ぐっ……!」


 激しい衝撃。

 アルトの身体が座席へ叩きつけられる。


「アルト!」


 後方のセレスが叫ぶ。

 しかし。

 彼女には大きな傷はない。

 前方。

 操縦席。

 全ての衝撃を受けたのは。

 アルトだった。


◇◇◇


 古びた騎士が膝をつく。

 外から見れば。

 一機の騎士が。

 最後の敵を倒した後。

 力尽きたように見えた。


 そして。

 森の奥。

 魔物たちが動きを止める。

 主を失ったスタンピード。

 やがて。

 一体。

 また一体。

 森へと戻っていく。

 災害は終わった。

 街は救われた。


 しかし。

 誰も知らない。

 その勝利の中で。

 一人の少年が。

 もう立ち上がれないほど傷ついていたことを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。