表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺だけが乗れる父の遺した廃騎士を、世界最強の騎士へ~嫌われ者の養子は、父の遺志と精霊を継ぎ、誰にも知られず辺境を守る~  作者: なごやかたろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/39

第二十八話 二つの顔

 王立辺境学園。

 昼休み。

 校庭では生徒たちが訓練を行っていた。


「次!」


 掛け声とともに、木剣がぶつかる。

 その中心にいるのは、一人の少女だった。


「セレス・エルピス!」

「また勝ったぞ。」

「やっぱりすごいな。」


 周囲から声が上がる。

 セレスは息を整えながら木剣を下ろした。


「ありがとうございました。」


 礼をする。

 相手の男子生徒は苦笑した。


「相変わらず強いな。」

「俺、全然相手にならなかった。」

「そんなことないです。」


 セレスは首を振る。

 けれど。

 誰が見ても分かる。

 彼女は同年代の中でも突出していた。


◇◇◇


 少し離れた場所。

 アルトはその様子を見ていた。


「……すごいな。」


 思わず呟く。

 剣術。

 魔力操作。

 判断力。

 どれを取っても、自分とは違う。

 いや。

 違いすぎる。


「また見てる。」


 声がした。

 振り向く。

 セレスだった。


「別に。」

「別にって顔じゃないけど。」


 アルトは視線を逸らす。


「お前はすごいなと思っただけだ。」


 セレスは少し驚く。

 アルトから素直な言葉を聞くことは珍しい。


「……ありがとう。」


 一瞬だけ、空気が柔らかくなる。

 しかし。

 アルトは続けた。


「でも。」

「才能だけで勝ってると思うなよ。」


 セレスの表情が変わる。


「……またそれ?」

「努力してるのは分かる。」


 アルトは言う。


「でも、お前は恵まれてる。」

「魔力も。」

「才能も。」

「周りから期待される環境も。」


 セレスは黙る。

 そして。


「あなたは。」


 静かに言った。


「いつも、そうやって人の持っているものばかり見るのね。」


 アルトが顔を上げる。


「え?」

「私がどれだけ努力したか。」

「何を失敗したか。」

「何を怖がっているか。」

「見ようともしない。」


 その言葉に、アルトは何も返せなかった。


「……。」


 セレスは小さく息を吐く。


「あなた、本当に面倒。」


 そう言って去っていく。


◇◇◇


 放課後。

 セレスは孤児院へ向かっていた。

 途中。

 街の掲示板を見る。

 そこには最近の魔物討伐情報。

 そして。

 小さな記事。

『謎の騎士機による魔物討伐』

 セレスは足を止めた。


「……。」


 顔も分からない。

 名前も分からない。

 でも。

 その人はきっと。

 誰にも褒められなくても、誰かを守る人。


「すごい人……。」


 思わず呟く。


◇◇◇


 その夜。

 倉庫。

 アルトは機体整備をしていた。


『本日の会話について。』

「聞いてたのか。」

『はい。』

「忘れてくれ。」

『不可能です。』


 アルトはため息をつく。


「俺ってさ。」

「なんであんな言い方しかできないんだろうな。」


 精霊は答える。


『契約者は、相手を高く評価しています。』

「え?」

『しかし、自分との差を強く意識しています。』


 アルトは黙る。


『その結果、言葉が攻撃的になります。』

「……。」


 図星だった。

 セレスが嫌いなわけじゃない。

 むしろ逆。

 眩しい。

 羨ましい。

 だから。

 素直に褒められない。


「難しいな。」

『人間関係は複雑です。』

「機械なのに分かるのかよ。」

『長期間、人間と共に存在しています。』


◇◇◇


 同じ頃。

 孤児院。

 セレスは今日届いた寄付の品を整理していた。

 子供たちは喜んでいる。


「また助けてもらったね。」


 院長が微笑む。

 セレスは頷く。


「はい。」


 そして。

 ふと考える。

 もし。

 もしも。

 謎の騎士が、あのアルトだったら。


「……。」


 すぐに首を振る。


「違う。」


 あの人は。

 もっと優しい。

 もっと強い。

 もっと大人だ。

 そう思ってしまう。

 まだ。

 二人が同じ人物だとは知らない。


◇◇◇


 夜空の下。

 一機の騎士が静かに立つ。

 その操縦席には。

 昼間、言葉を間違えた少年がいた。

 そして。

 誰かに感謝されていることを知らない少年だった。

 二つの顔。

 二つの評価。

 その距離は。

 まだ、少し遠い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ