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忘れたはずの彼が、気になってしまう。 ―琥珀の瞳が、嘘をつく―  作者: HANABI
学園編①

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第17話:秋の気配

夏の熱がやわらいで、空気が少しだけ軽くなってきた頃だった。

中庭の木々はゆっくりと色づき始め、風が吹くたびに葉がかすかに揺れる。


「ねえ見て、あの葉っぱちょっと赤くなってない?」

ミアが指をさす。

「ほんとだ。もう秋なんだな」

キースが空を見上げる。

「ついこの前まで暑かったのにね」


「季節の変わり目は早い」

レオンが静かに言う。

「油断すると体調を崩す」


「またそういう真面目なこと言う〜」

「大事なことだ」

「でもレオンってさ、そういうとこちょっとお兄ちゃんみたいだよね」

「……意味が分からない」

「えー、絶対分かってるでしょ」

ミアとキースが笑い合う。


その様子を見ながら、リナも自然と笑みをこぼした。

「でも、こういうのいいわね」

「何が?」

ミアが聞く。

「季節が変わるのを、ちゃんと感じられるの。誰かと一緒に」

「……あ、それ分かるかも」

「なんか、ちょっと特別な感じするよね」

ミアが嬉しそうに頷く。


リナは、無意識に首の鎖骨辺りに触れた。

服に隠れた小さな琥珀の首飾り。


(……不思議)

落ち着くのに、どこかざわつく。

そんな感覚。


少し離れた場所ではカイが女の子達に囲まれていた。

「カイってほんと話しやすいよね」

「そう?」

「うん、なんか距離近いっていうか」

「それ褒めてるの?」

「褒めてるよ〜」

「じゃあいいや」

軽く笑う。


でもその視線は、一瞬だけリナの方に向いていた。

そして――レオン達を見る。

「……ふうん」

小さく呟く。


その一瞬だけ、少し空気が変わった気がした。


そのあと。

「ねえリナ!」

ミアが腕を引く。

「今度の校外学習、森らしいよ!」

「ええ、聞いたわ」

「なんかワクワクしない?ちょっと怖いけど、それも含めて楽しいっていうか!」

「ミアは本当に楽しそうね」

「だってさ、みんなで行くんだよ?絶対楽しいじゃん」


「まあ、それはそうだな」

キースも頷く。

「問題は無事に帰ってこられるかだ」

「ちょっと、それ怖いこと言わないでよ!」

「冗談だよ」

「顔が冗談じゃないのよ!」


わいわいとした空気が広がる。

 

「何の話?」

後ろから声。

カイだった。

「校外学習の話よ」

「へえ、森か」

少しだけ目を細める。


「気をつけろよ」

「どうして?」

ミアが聞く。

「なんとなく」

「それ一番信用できないやつ!」

「だろ?」

軽く笑う。


でも、その目だけは笑っていなかった。

リナは、ふと首飾りに触れる。

ほんの一瞬。

かすかに、温もりが強くなった気がした。

「……?」

気のせいかもしれない。

でも――

胸の奥が、少しだけざわつく。


その日の夜。


コン、と小さく窓を叩く音。

「……また?」

呆れたように言いながら、窓を開ける。

カイがいた。

「来すぎじゃない?」

「そうか?」

「そうよ。ここ寮なんだから」

「知ってる」

「知ってて来てるの?」

「まあな」


悪びれもなく言う。

思わずため息が出る。

でも――追い返さない。


「……で、今日は何」

「別に。顔見に来ただけ」

「それ理由になるの?」

「なるだろ」

あっさりと返す。


少しだけ、言葉に詰まる。

「……変なの」

「よく言われる」

軽く笑う。


少しの沈黙。

夜風が静かに流れる。

「森、行くんだろ」

「ええ」

「無理すんなよ」

短い言葉。

でも、どこか真剣で。

「……あなたに言われなくても大丈夫よ」

「だろうな」

すぐに返す。

その距離感が、少しだけもどかしい。


「ねえ」

「ん?」

「どうして、あれくれたの」

ペンダントに触れながら聞く。

一瞬だけ、沈黙。


「似合うかなって」

「それだけ?」

「実際似合ってるし、それ以上いる?」

軽く笑う。


やっぱり、はぐらかされる。

でも――

それ以上、聞けなかった。


夜の空気が、静かに流れる。

言葉にできない何かが、そこにあった。


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