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忘れたはずの彼が、気になってしまう。 ―琥珀の瞳が、嘘をつく―  作者: HANABI
学園編①

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第16話:それぞれの強さ

朝の訓練場は、少しだけ冷えた空気に包まれていた。

石床に差し込む光がやわらかく広がり、生徒たちのざわめきがゆっくりと集まっていく。


「なんかね、朝から実技ってちょっとテンション上がるよね」

ミアが軽く体を伸ばしながら言う。

「おまえはいつでも上がってるだろ」

キースが笑う。

「そんなことないし!」

「いや、ある」

「レオンまで言うの!?」

「事実だ」

あっさりとした返答に、周囲から小さく笑いがこぼれる。


リナも思わず笑っていた。

「でも、少し楽しみかも。こうしてちゃんと試されるのは」

「リナは余裕そうだな」

キースが肩をすくめる。

「そんなことないわよ。ちゃんとやらないと、すぐバレるもの」

「それでも“ちゃんとやればできる側”だろ」

「どうかしら」

少しだけいたずらっぽく笑う。


「少なくとも、俺は油断しない」

レオンが静かに言った。

「さっきの動き、見ていた。踏み込みが速い」

「ありがとう。でも、レオンも無駄がなかったわ」

「まあな。無駄は嫌いだ」

自然な会話の中に、少しだけ火花が混じる。


「はいはい、次は基礎の確認と応用だ」

クロードの声が静かに響く。

「剣と魔法、両方見るぞ」

生徒たちがそれぞれ配置に着きはじめた。


空気が、すっと引き締まる。

「まずは剣。レオン、リナ」

「はい」

「ええ」


向かい合う。

視線が交わる。

「手加減はしないぞ」

レオンが言う。

「望むところよ」

リナが少し口角を上げる。


「始め」

踏み込んだのは、リナが先だった。

速い。

迷いがない。


剣がぶつかる。

重い音が響く。

(強い……)

互いに同時に思う。

二撃、三撃、四撃。

剣筋がぶつかり、火花のように弾ける。

リナの動きは軽く、無駄がない。


「やっぱり速いな」

「そっちこそ、ちゃんと受けるじゃない」

「受けられなきゃ意味がない」

打ち合いが続く。

二人の動きは滑らかで、互いに崩れない。

周囲の空気が少しずつ熱を帯びていく。

「すご……」

ミアが思わず呟く。

「ああ、レベル違うな」

キースも頷く。


一瞬の隙。

リナが踏み込み、剣先がレオンの喉元で止まる。

静止。


「……一本」

クロードの声。

わっと空気が緩む。


「今の見た!?」

「めっちゃ綺麗だった!」

周囲の声が広がる。

リナは少し息を整えながら剣を下ろす。


「……いい勝負だったな」

レオンが言う。

「ええ。楽しかった」

「……ああ、同じく」


ほんの少しだけ、表情が柔らぐ。

その様子を、カイが少し離れた場所で見ていた。


「へえ、いいじゃん」

軽く言う。

でも、その目はしっかり見ていた。


「次、魔法」

ミアが前に出る。

「よーし、見ててよ!」

手をかざす。

少し離れた土の上から

風が巻き上がり、その渦の端に炎が乗る。

「おお……!」

「綺麗!」

炎が暴れずに、人の高さ位に上がっていった。

「やるじゃん」

キースが笑う。

「でしょ!」

ミアが満足そうに胸を張る。


「制御がいい」

レオンが言う。

「焦らなければもっと伸びる」

「え、ちゃんと見てくれてたの?」


「当然だ」

「ちょっと嬉しいかも」

ミアが照れる。


その空気の中で。

「カイ」

名前が呼ばれる。

「はいはい」

軽く前に出る。

「何でもいい。見せろ」


「雑だなあ」

笑いながら手を上げる。

 その瞬間――

空気が、変わった。

炎が生まれる。


さっきとは違う。

密度が、重い。

静かに、強い。

一瞬で大きく形を作り、そして静かに消えた。

無駄がない。

誰も言葉を発さない。

「……十分だ」

クロードが言う。


リナは、目を離せなかった。

(……なんなの)

胸の奥が、ざわつく。

懐かしいような、怖いような。

そのとき――


風が、止んだ。

「……あれ?」

ミアが小さく言う。


訓練場の端。

一瞬だけ、影が揺れた。

「今、何か……」


誰も答えない。


でも、カイだけが静かに視線を向けていた。


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