第12話:同じクラスの距離
昼休みの鐘が鳴ると同時に、教室の空気が一気に緩んだ。
さっきまでの静けさが嘘みたいに、あちこちで椅子の音や笑い声が広がっていく。
「ねえリナ、一緒に行こ!」
ミアがすぐに立ち上がって、こちらを振り返る。
「どこへ?」
「食堂!もうお腹すいたんだけど!」
さっきまで授業を受けていたとは思えない勢いに、リナは思わず小さく笑った。
「元気ね」
「だって朝早かったし!」
当然でしょ、とでも言いたげに胸を張る。
「リナは?お腹すいてないの?」
「……すいてるわ」
少しだけ間を置いて答えると、
「でしょ!じゃあ決まり!」
腕を引かれる。
そのまま流されるように教室を出る。
こういう勢いは、あまり慣れていない。
でも、不思議と嫌ではなかった。
廊下もまた、賑やかだった。
行き交う生徒たちの声が重なり、あちこちで名前を呼び合う声が飛び交っている。
「ねえねえ、さっきの授業どうだった?」
「普通に難しくない?」
「え、私全然分かんなかったんだけど」
そんな会話を横目に見ながら、リナは少しだけ周囲を見渡す。
「……人が多いのね」
「そりゃそうよ、3クラスあるし」
ミアが当然のように答える。
「3学年あって1クラス10人前後でかな。成績でクラス分けされてるの。うちのクラスは2年の中でも上位寄りって感じかな」
「そうなの?」
「うん。だからかな?ちょっと変な人多いよ」
「あなたも含めて?」
「もちろん!」
にこっと笑う。
そのやり取りに、リナは思わず笑みをこぼした。
食堂に入ると、さらに賑やかさが増した。
広い空間に並ぶ長いテーブル。香ばしい匂いと、にぎやかな声。
「ほら、あそこ空いてる!」
ミアが空席を見つけて駆けていく。
席に着くと、すぐに別の声が飛んできた。
「お、新入りじゃん」
軽い調子の声。
振り向くと、明るい表情の少年が立っていた。
「話しかけていいタイプ?」
遠慮のない一言。
「キース、最初くらい普通に話しなさいよ」
ミアが呆れたように言う。
「いや普通だろこれ」
肩をすくめる。
「キースだ。よろしくな」
「リナよ。よろしく」
「おー、ちゃんとしてる」
感心したように頷く。
「飛び級なんだって?すげえな」
「まだ分からないわ。これからよ」
「その余裕いいねえ」
にやっと笑う。
「レオンがさ、さっきから気にしてたぞ」
「余計なことを言うな」
低い声が横から入る。
いつの間にか、レオンもそこに立っていた。
「別に気にしてはいない」
「はいはい」
キースが軽く流す。
レオンは一瞬だけリナを見る。
その視線は鋭いが、不快ではない。
「……実技で分かる」
短く言う。
「そうね」
リナも素直に頷いた。
「楽しみにしているわ」
その言葉に、ほんのわずかに空気が変わる。
「……いいね」
キースが面白そうに笑う。
「今年、当たりかもな」
「ちょっと、勝手に盛り上がらないでよ」
ミアが軽く肩を叩く。
そのやり取りを見ながら、リナはふと息をついた。
にぎやかで、少し騒がしくて。
でも、どこかあたたかい空気。
(……悪くないわね)
気づけば、自然と笑っていた。




