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POL 終末のロボット警察官  作者: 如月いさみ


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高松交番の守り人 4

 シェルターの中は静寂が支配していた。

 アナウンスや警察官の誘導でシェルターまで逃げてきた人間ばかりで正に着の身着のままであった。


 もちろん、それは瀬野明里も同じであった。

 いやそれ以上に今ジッと自分を見ている人々と同じでこの状況が……核戦争が起きたこと自体が……本当かどうか信じられない気持でもあった。


 だが。

 本当なのだ。


 警察官である三木達樹が、いや、警察で正式に認められている警察官ロボットであるPOL033こと春海茂和が嘘でそんなことを言う訳がないと頭の何処かで理解していた。


 明里は固唾を飲み込むと

「当面の食料の配給を警察から行います。それから住居用テントもありますので設置のご協力をお願いします」

 と告げた。


 ザッと見回した感じでは60人足らずで男性が30人ほど、女性が20人ほどで子供が10人足らずであった。


 達樹も明里の後ろから

「ご協力宜しくお願いします」

 と頭を下げた。


 立て籠もりをしていた吾妻千鶴男という男が立ち上がった。

「その……俺で出来ることがあるなら」

 それにあの時の父親である加辺誠一も立ち上がり

「私もその……忙しくは動けませんが」

 と告げた。


 他の男性も4人ほどが立ち上がった。他の男性や女性は未だ呆然とした状態で加辺誠一の娘の凛々子を始めとして子供たちがわらわらと

「何するのー?」

「俺もー」

 とこんな状況なのに何処か無邪気に駆け寄ってきたのである。


 竜次と坂井進は息を吐き出した。

 竜次は「俺もきょどってるだけじゃダメだ」というと明里たちの元へ行き

「じゃあ、テントと食料のチェックをする」

 と告げた。


 明里はPOL033こと春海茂和を見ると

「春海、B区画へ案内してくれ」

 と告げた。


 春海茂和は敬礼をすると

「はい、こちらです」

 と足を進めた。


 ぞろぞろと有志の男と子供たちを連れて明里は一番奥の扉の前に立った。

 POL033こと春海茂和は

「シャッターを開けます」

 というと自動で扉が開いた。


 そこに水を入れている所謂飲料水用の大きなタンクがあり、数台の車と業務用の巨大な冷蔵庫があった。


 一番手前に骨組みのパイプを入れた袋が積み重ねられ、その横にビニールのカバーも置かれていた。


 明里はそれを見ると

「先ずはこのテント用の資材から外へ出してセットにしていこう」

 と告げた。


 竜次は頷いて

「了解」

 と答え

「俺がビニールカバーを置くからその上にパイプを置いていってくれ」

 と告げた。


 吾妻千鶴男もまた

「俺もカバーを置いていくのでパイプをお願いします」

 と告げた。


 加辺誠一がそれに

「それなら俺にもできるので」

 とパイプを吾妻千鶴男が並べるビニールカバーの上へと乗せていった。


 達樹はセットを手にした男性たちにテントを立てる場所を指示した。女性たちは当初こそ呆然とその様子を見ていたがやがて罰が悪そうに立ち上がると、POL033こと春海茂和と共に食料の分配を行っていた達樹の元へとやってきた。


 時間は分からないが最初の食事は箱に入っていた菓子パンとお茶であった。


 家族は家族同士で。

 一人の場合は一人でテントの中に寝られるようには付け焼刃だが出来るようにはなった。


 それが終わって誰もが菓子パンをテントの中央に作った空間で集まって食べているとPOL033こと春海茂和が

「現在9時をお知らせします」

 と告げた。


 明里はチラリと見て

「夜のだよな」

 と聞いた。


 春海和茂は笑むと

「夜のであります」

 と答えた。


 それに誰もが小さく笑って息を吐き出した。


 その後、それぞれが家を決めてテントの中へと入り眠りについたのである。

 達樹と坂井進はB区画の入口に大目に立てたテントを仮の高松交番としてPOL033こと春海茂和と共に待機した。


 明里と竜次はそのすぐ側のテントでそれぞれ眠りについたのである。


 24時間。交代制でシェルター内の高松交番野勤務は決まり食料の配布を行うようになった。

 その準備については女性達も手伝うようになったのである。


 シェルターで残った人々は少なく明里も竜次も何とか落ち着いたと安堵の息を吐き出して午前の配給を終えてテント内でゆっくりしている時に一人の男性が姿を見せた。


 POL033こと春海茂和はテントに姿を見せた男性に目を向けると

「岡山市議の本田剛也さんです」

 と告げた。


 テントの設置や食料の配給などが落ち着くまで呆然としていた一人なので明里も竜次もあまり記憶がなかったのだ。


 明里は本田剛也を見ると

「こんにちは、あの何かありましたでしょうか?」

 と聞いた。


 本田剛也は咳払いをすると

「いいか、これからの食糧の配給などは市議である私の指示に従ってもらう。それから住居用のテントについても私の家については二つ用意してもらいたい。この中の色々な取りまとめについても市議である私に全て報告してもらう」

 と告げた。

「どうやら市議でシェルターにいるのは私だけの用だからな」


 竜次は明里を見ると

「それって俺たちが公平にしていないって意味か?」

 と聞いた。


 明里は立ち上がると

「食料の配給は春海が管理して平等に行っています。配分もあるので市議と言えど勝手は困ります。今は非常時です。市議も市民も関係ありません。いや、今は全員が一致団結して乗り越えることが大切なんです」

 1人だけ特別扱いはできません、と告げた。


 本田剛也は目を細めると

「君は交番の駐在員だろ? 上を呼べ上を! 私は市議だぞ!!」

 と告げた。


 それに後ろから三木達樹が姿を見せると

「本田さん、今は瀬野巡査が言った通りに市議会も何もありません。シェルター内では全員が同じ配給と同じテントで生活をしていただきます」

 と告げた。

「食料やテントなど物資についてはシェルター管理のロボットが行いますので我々は不平等にならないように心掛けているつもりです」


 本田剛也は達樹を指さし

「君の階級は何だ!」

 と告げた。


 坂井進は中に入って竜次と明里を見ると

「この状態で市議だの階級だのって……もうそう言う段階は終わってるって分からないのが凄いと思う」

 と告げた。


 明里は小さく頷いた。


 そうなのだ。

 そもそもシェルターの外で生き残っている人々がいるかどうか、他の県やそれこそ東京などはどうなっているのかなど全く分からないのだ。


「クローズドサークル……だよな」

 正に閉じられた空間なのだ。


 達樹は息を吐き出すと

「俺の階級は警部です。しかし、県警本部長から全てを一任されています」

 と答えた。

「いまこのシェルターの中では階級も何もない。いや、意味をなさないとご理解いただきたい」


 そこへ一人の女性が駆け寄り

「お父さん、私とお父さんと二人なんだから十分でしょ?」

 と告げて、頭を下げた。

「すみません、父がご迷惑をおかけして」


 本田剛也はそれに

「百合子、お前は……代々市議をしてきた本田家の娘としての自覚がない!!」

 と怒鳴った。


 声は広がりワラワラと人が遠巻きに姿を見せた。

 それに年配の男性が

「ああ! あの悪徳代議士か! 知ってるぞ、小宮のばあさんの土地を騙して売らせてそこに市の建物を建てるって高く売ったってばあさんが嘆いていたぜ」

 と指をさした。

「そんな奴が実家の七光りで代々市議だったってだけで市議とはねぇ」


 本田剛也は振り向くと

「それは! ちゃんと正式に書類も交わした契約だ。不正などしていない。偶々私が小宮さんが売りたがっていた土地を購入したらそこに市が建物を建てると言っただけだ」

 言いがかりも甚だしい! と怒鳴った。


 男は足を進めると本田剛也の襟を掴み

「どの口がそういうんだ!! ばあさんがどれだけ悔しい思いをしたか! この守銭奴野郎が!! お前こそ食料を独り占めして一人だけ私腹をこやそうっていうのか!」

 と怒鳴った。

「さんざん俺たちがテントを立てていたのを知らんふりしていたのに落ち着いたら権力風かよ」


 達樹は男の手を掴むと

「とにかく落ち着いて……ここは我々だけなんです」

 と告げた。


 本田剛也の娘の百合子は本田剛也を見ると

「お父さん、警察の方はちゃんと平等にしてくださっているし本来なら自分たちで立てるテントも立ててくださったんだから……お任せしましょ」

 と告げた。


 男は彼女を見ると

「お嬢さんもそういう汚い金で育ったんだぞ」

 恥ずかしくはないのか? と言い放った。


 彼女は頭を下げると

「すみません」

 と告げた。

 瞬間に明里は男の手を掴むと

「あんたの言いたいことは分かった。だったら、どうしてこんな場でなくてもっと前の外にいる時に言わなかったんだ!!」

 と怒鳴った。

「娘さんはちゃんと父親の行動を止めようとしただろ! 確かにそういう金があったかもしれないが自分が優位になると思った瞬間にあーだこーだと責めるだけなのは卑怯じゃないのか!」


 だったら、ちゃんと裁けるときに密告しろ!!


 竜次は目を見開くと

「おいおい、密告って」

 と慌てた。


 周囲の人々もざわめきが広がった。

 達樹は息を吐き出した。だが、強ち間違ってはいないのだ。


 男は顔を伏せると

「確かに」

 と呟いた。


 春海茂和は笑むと

「近藤光男さん貴方が我々が困っているのに助け船を出そうとしてくれたことは理解します」

 と言い

「ありがとうございます。けれど、ここで押さえてください」

 と告げた。


 達樹もまた

「ええ、それよりもここは閉じられた空間です。外へ再び出れる時まで事件を起こすことなく全員で外へ出ることが我々警察の願いでもあります。ご協力お願いします」

 と告げた。


 明里はハッとすると

「あの、すみません。言い過ぎました」

 と頭を下げた。


 近藤光男は笑って

「いやいや、俺もな。ついついばあさんのことを引き合いに出してエキサイトしちまった」

 と言い

「お嬢ちゃんはちゃんとしているみたいなのにな」

 悪かったな、と告げた。


 百合子は首を振ると

「いえ、それも事実ですから」

 と頭を下げた。


 本田剛也は息を吐き出すと

「本田家を……絶対に許さんぞ」

 というと踵を返して周りに集まる人々の手を払って立ち去った。


 人々もばらばらと立ち去り、騒ぎは収まったものの明里も竜次も達樹も進むも何もなければいいがと一抹の不安を感じずにはいられなかったのである。


 その中で一人の青年だけが沈黙を守り睨んでいたのである。そして、それの不安が数日後に現実となるのである。


 シェルター内で始まった新しい生活の中の最初の事件であった。


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