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POL 終末のロボット警察官  作者: 如月いさみ


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33/37

高松交番の守り人 3

 そもそも300万の詐欺が明らかになっていたら男は罪を犯さなかったかもしれない。


 監禁籠城と言う時点では男は完全に犯人である。

 だが、その前にある300万詐欺を無にはできない。それもまた罪は罪なのだ。


 POL033が配属されて三木達樹の特別訓練の巡回が始まり数カ月が経った。

 瀬野明里は小谷和典と山口信雄の二人から引継ぎ報告を三木竜次とPOL033と共に受け、彼らが署へ戻って行くのを見送り詰所の椅子に座ると息を吐き出した。

「何か、事件と立て続けに遭遇して色々考えさせられるよな」

 そう告げた。


 竜次もまた頷いて

「そうだな、欲にかられただけの犯罪なら、こう……ゴンって出来るけど先の奴みたいに相手がそもそも犯人を騙して詐欺をしていたりすると迷うよな。半分は気持ちが分かるって言うかさ」

 犯罪は犯罪だけどな、と告げた。


 明里は立っているPOL033を見ると

「POL033、お前はどう答えを出す?」

 と聞いた。


 当初は三木竜次の相棒としてやってきたが今や二人の相棒となっている。

 竜次は笑って

「なんか、POL033って瀬野を助けに勝手に動いたりさ。人間的だよな。しかも俺より瀬野の相棒って感じがする」

 と言い

「けど俺もAIの答えって聞いてみたいな」

 と告げた。


 POL033は考えるような恰好をすると

「監禁籠城時点では男性が加害者で取り締まるべきと答えが出ました。ただ、瀬野巡査の詐欺が無ければ起こらなかったという言動を加味すると被害者であった女性もまた加害者となりました」

 と言い

「今はどちらも加害者となると判断します」

 と告げた。

「ただ詐欺を止めるか詐欺を先に裁くことが出来ていれば良かったと私の中の一番高い答えとしては出ました」


 明里と竜次は顔を見合わせると笑みを浮かべた。

 明里は頷くと

「そうだよな。本当に犯罪を未然に防ぐということが一番なんだよな」

 と告げた。


 竜次もまた「だよな」と答えた。


 その時、詰所の扉が開き三木達樹が姿を見せた。

「その通りだ。犯罪が起きてしまっては結局被害者も加害者も救われることがない。何よりも一番は未然に防ぐことが大切だ」


 ……同時にその予兆を見つける軽微な犯罪を見逃さないことが大切ということだ……

「それが巡回だ」


 達樹は二人がぽかんと見るのに

「今日は巡回はなしだ」

 と告げた。

「なので坂井巡査長には休んでもらっている。ここのところ非番なのに出勤してもらっていたからな」


 POL033は敬礼をすると

「三木警部、おはようございます」

 と冷静に告げた。


 明里は慌てて立ち上がると敬礼し

「おはようございます」

 と告げた。

 竜次も慌てて

「あ、そうだ。おはようございます」

 と敬礼した。


 達樹は頷いて

「おはよう」

 と答え、三冊の同じ本を出した。

「今日はこの本を勉強する。これは日本警察の父と言われる川路利良の本だ」


 ……警察官の心得として俺はこれを大先輩から君に渡すように受け取った……

「これを瀬野巡査、大切にするように」


 明里は受け取り

「あ、ありがとうございます」

 と答えた。


 達樹はもう一冊を

「これは俺がずっと使っていた分だ。竜次」

 と渡した。


 竜次は少し戸惑いながら

「え、何か……形見っぽくて俺はいらない」

 と言い

「俺、買う。自分で」

 と笑みを浮かべた。


 達樹は目を見開くと笑みを浮かべると

「……そうか?」

 と聞いた。


 竜次は頷くと

「ああ」

 と答えた。


 達樹は何かを決意するように視線を下げると

「わかった。じゃあ、今日は取りあえず貸しておく」

 と答えて渡し、最後の綺麗なモノをPOL033に渡すと

「これはPOL033、お前に……ロボットであっても警察官であるなら必要な心得だ」

 と告げた。


 POL033は笑むと

「ありがとうございます」

 と告げた。


 達樹は本をそれぞれに読ませ、時折空を見上げた。

 青い空が広がり、雲が流れている。西の方には大平山の緑の稜線が浮かび長閑な日であった。


 太陽が南天に近付き11時になると竜次が午前の巡回を行った。これは通常業務であった。その時に竜次は自身の本を購入した。

 

 長閑な日であった。

 夕方までは……である。


 午後6時前に明里は立ち上がると

「じゃあ、巡回行ってきます」

 と詰所の戸に手をかけた瞬間にPOL033は空を見上げた。


「Jアラートが発動されました」


 明里も竜次も「「は?」」と首を傾げた。

 達樹は目を細めて「ついに来たか」と呟くと

「直ぐにパトカーに乗って周辺を回る! POL033、着弾までの時間は?」

 と立ち上がりながら聞いた。


 POL033は冷静に

「着弾まで20分足らずです」

 と告げ

「まだマスター契約がされていません。シェルターのアクセス権が設定されていません」

 と答えた。


 達樹は目を見開くと僅かに震えた。


 明里は慌てて

「三木! 相棒だろ!」

 と告げた。


 竜次の相棒として配属されたのだ。

 竜次は戸惑いながら

「けど、どうすれば」

 と告げた。


 達樹は二人を見ると

「……瀬野、お前がPOL033に名前を付けろ」

 と告げた。

「直ぐにだ!」


 明里は竜次と達樹を交互に見た。竜次も驚きながら二人を見た。


 明里は驚きながらも

「わけわかんねぇ。でもでも……じゃ、は、春海! 春海茂和!!」

 と告げた。


 POL033は冷静に

「春海茂和、登録完了しました」

 と言い

「アクセス権登録完了しました。シェルターを開きます。着弾までに18分。13分後にシェルターを閉めます」

 と告げた。


 達樹は笑むと

「乗れ! 回ってたどり着ける人を助ける」

 と告げた。


 その時に車が一台止まり中から小谷和典と山口信雄が降り立ち

「三人ともいたな」

 と言い

「坂井、お前も行け」

 と告げると敬礼し

「いま岡山県警本部長の指示で全員で避難誘導をしています。三木警部、二人と坂井を連れてシェルターへ急いでください。避難誘導は我々がします」

 と告げた。

「人々を、お願いします!」


 ……瀬野、三木、坂井。お前たちの役割は重いぞ……


 達樹は全てを理解すると敬礼して

「必ず、未来に連れて行きます」

 と涙を滲ませた。


 そしてパトカーに乗ると

「急げ!!」

 と告げた。

「車の中で話す」


 POL033こと春海茂和は助手席に乗り他の三人は後部座席に座った。


 明里は前を見ると

「あの、三木警部」

 と呼びかけた。


 達樹はパトカーでアナウンスを流しながら

「……POL033のマスターに選ばれたのは瀬野、お前だった」

 と告げた。

「だが本部長は自分の息子だからと……特別扱いをできないと……三木巡査の相棒として配属した」


 その辺りの経緯を坂井進は実は先に聞いており沈黙を守った。

 達樹は見えてきた大平山の麓にある高松城水攻め築堤跡へと向かった。

「勿論、POL033のマスターに瀬野が選ばれたのに本部長の意向は全く関わっていない。全く知らない内に警察庁で決まりPOL033の配属と共に言い渡されたんだ。AIが岡山県警関係者全員の中から選択したと」


 明里は俯くと

「俺、親父に……警察官に向いてないって思われているから不満だったんだろうな」

 と呟いた。


 竜次はフンッと息を吐き出すと

「向いてる! それは俺が断言してやる。俺、宝石強盗の時だって動けなかった。あの監禁の時だってな。お前、助けようと、人のために動けただろ」

 と告げた。


 坂井進は息を吐き出すと

「瀬野、瀬野本部長が就任する前に事件があってな。警務部長が息子を試験に落ちていたんだが採用したんだ。まあ、縁故はあるからな。だが、その息子が自分は警察官に向いていないって辞めたいって言っていたんだが、警務部長はそれに縁故で入れたメンツがあると……結局、息子は業と事件を起こしてその後、自殺騒ぎにまでなったんだ」

 と告げた。

「きっと、瀬野本部長もそれを考えたんじゃないか? お前に息子だからと過剰なプレッシャーを与えてお前が苦しんだらと警察官に無理やりなって、もしダメだと思った時に引き返せなくなったらとお前のことを考えたんだと思う」


 達樹は笑むと

「お前に渡した本は本部長からの本だ。お前のことを考え過ぎて逃げていたのは自分だと立派な警察官になれと、どんな苦難も乗り越える強さを持てと伝えてくれと託された」

 と告げた。

「俺は……ここで終わるつもりだった。だが……お前たちを未来へ連れていく。船頭だ」


 ……俺やお前達全員が岡山警察官の祈りを背負っているんだ……


 明里も竜次も全てを理解すると目の前が滲むのを感じながら唇を噛み締めて前を見つめた。

「「はい」」

 そう強い口調で答えた。


 車をシェルター前に止めると降り立ち

「後8分だ、ギリギリまで誘導するぞ!」

 と告げた。


 明里は涙をにじませながら

「父さん、俺……やっぱりまだまだ人が分からなかった」

 と呟き

「でも、乗り越えてみせる。父さんに恥じない警察官になるからな!」

 と足を踏み出して

「はい!」

 と駆けだした。


 POL033も明里の後について足を進めた。

 竜次もまた

「俺も兄貴に恥じない警察官になる。ちょっと、臆病だけどな」

 と足を踏み出した。


 達樹は笑むと

「竜次、お前は臆病じゃない。良いか、突っ走る部分の強い瀬野にはお前のように少し引いて俯瞰して見れる相棒が必要なんだ。大丈夫、お前良い警察官になる。POL033のこともちゃんと受け止められるお前は俺の自慢だ」

 と告げた。


 竜次は目を見開くと涙を滲ませて

「ありがとう、頑張る」

 と告げて、逃げてくる人々を誘導した。


 人々は戸惑いながらもシェルターの入口へと逃げてきていた。

 青い空に流れる雲。

 風に揺れる緑はいつもと変わりがないのに……俄かには放送が信じられなかった。


 明里は声を上げて

「急いでください!!」

 と叫んだ。


 そして、後ろの方で子供を抱いて辛そうに足を進める男性を見ると足を踏み出しかけた。あの時の親子である。

 

 その時POL033が

「後4分です。もう間に合わない」

 と告げた。


 明里は「俺が子供を抱いて走れば間に合う」と走りかけた。が、その時、後ろから走ってきた男性が子供を抱いて父親に

「急げ!!」

 と叫んだ。


 子供を監禁した男性であった。仮釈放中だったのだ。

 父親は「ありがとう」と頷いて早歩きで足を踏み出した。


 明里は彼らの後ろに人が見えないことに目を細めて

「父さん、俺は父さんに恥じない警察官になります」

 と言い、彼らと共にギリギリにシェルターに飛び込んだ。


 POL033は扉を閉めて暫く沈黙を守ると

「岡山城上空で弾頭が破裂しました」

 と告げた。


 明里と竜次は顔を見合わせた。

 足元から冷気が立ち昇った。


 怖い。怖い。怖い。

 警察官だって人間なのだ。怖いモノは怖い。


 そう改めて考えた二人に達樹と坂井進は近寄った。

 達樹は彼らを見て

「今は避難できた人々のこれからを考えるんだ」

 と告げた。

「俺はお前たちを導くために岡山県警にその荷を託された。それを果たしていこうと思っている」


 坂井進もまた

「ああ、俺も小谷巡査長から瀬野と三木のフォローをするように言われている。全員で力を合わせて乗り越えていこう」

 と告げた。


 明里は少し震えながらも

「はい!」

 と答えた。

 竜次も頷いて

「はい」

 と答えた。


 達樹は明里を見ると

「瀬野、シェルターの管理はPOL033だけがしている。情報を頼む」

 と告げた。


 明里は頷くと

「春海、シェルターの設備を教えてもらいたい」

 と告げた。


 POL033こと春海茂和は笑むと

「シェルターにはB区画がありそこに100世帯分の食料一か月分と住むためのテントが100基あります。また救急車両が2台。パトカーが2台。一般車が2台。その他の機器があります。地下一階には備蓄食料と水耕栽培用設備があり、地下二階には何かがあります」

 と告げた。

「当面はB区画で回せると判断します」


 達樹は少し考えて頷くと

「了解した。先ずは食料の配布と住居用テントの配布と設置だな」

 と告げた。


 三人はそれに頷いた。

 明里は怯えて身を寄せ合う人々を視て足を進めた。


「当面、このシェルター内で生活するだけの食料とテントは確保されています……その……設置配布のご協力を願いします」


 そう、警察だけではダメなのだ。

 地域の人々と協力することなのだ。


 終末のそれが一歩であった。


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