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POL 終末のロボット警察官  作者: 如月いさみ


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終末のガディス 6

 まるで時が止まっているような状態であった。

 シェルターの中はそれなりの明るさを保っているのに何処か薄暗く感じるのである。


 狭間周次は出入口の扉の前に立つ自分たちを見ている人々を見て固唾を飲み込んだ。自分自身が何が起きているのか分からなかったからである。


 最初に唇を開いたのは本条燕であった。彼は眼鏡を軽く押し上げて

「皆さんがここで最長5年近く生活できるように準備されています。我々警察が準備を行うのでお手伝いいただくと思いますがご協力宜しくお願いします」

 と告げた。


 周次は彼の言葉の『警察』と言う言葉に我に返ると

「お願いします」

 と告げた。


 それに一人の男性が立ち上がり

「それより本当なのか!? 核弾頭とか!! 訓練とかじゃないのか!」

 と怒鳴った。


 全員がざわめき

「どっちなんだ?」

「やっぱり訓練?」

 などと言う声が響き渡った。

 が、周次はチラリと本条燕を見ると彼は厳しい表情で頷いた。


『現実である』と。


 周次は息を吸い込み

「俺は岩国警察署刑事課捜査一係の狭間周次であります。これは訓練ではありません」

 と言い

「先ず、住居と食事について準備を行いますので皆さんはここで落ち着いておいてください。必ず皆さんの生命維持のための準備を行います」

 と強い口調で言い、黙って立っているPOL035こと和久津雪と本条燕を見て

「こっちへ」

 と足を踏み出して少し人々から離れた。


 和久津雪は周次を見ると

「意味が、あるのですか?」

 と聞いた。

「マスターである貴方を助けることが私の最優先事項であります。その為ならば力を貸しますが……あそこにいる人間を存続させるか滅亡させるか……答えが出ていません」


 本条燕はフゥと息を吐き出した。だが、周次の手助けを今はするつもりが無いようで沈黙を守った。

 周次はそれを読み取ると和久津雪に

「俺は彼らを見殺しにはできない」

 と言い

「POL035……お前に人を理解させてやることが出来なくて悪いと思っている。だが、今は彼らを助けるために力を貸してもらいたい」

 と告げた。


 和久津雪は「マスターの命令ならば」と言うと

「奥のB区画に住居用テントと移動用電気自動車が二台、更に救急車両が二台あります。食料も当面の備蓄分が大型冷凍庫の中に保管されております。地下一階に水耕栽培用プランタンと100人収容した場合の5年分の食料があります」

 と告げた。


 本条燕は一安心したよう息を吐き出し

「取り合えずB区画へ行ってモノを確認した方が良い。設置はどうせ各人でしてもらって俺たちが手伝う形だね」

 と告げた。


 周次は頷き足を踏み出した。

 人々は恐らく騒いでもどうにもならないと分かっているのだろう。黙って待っている状態であった。


 周次は奥の大きな扉を開けて確認し人々の元へ戻ると

「住居用テントがあるのでそれを家庭ごとに設置すれば生活空間は保証されるので、それから食料もありますがそれはこちらで等分に配給するようにします」

 と告げた。


 それに先ほど声を上げた男性が

「おいおい! そう言って一人占めするつもりじゃねぇだろうな!」

 と怒鳴った。

「国はどうした!! 県知事はどうしてるんだ!! 俺は着の身着のままなんだぞ!!」


 それに他の男性も

「俺もだ! 会社にだって戻らないといけないし……首になったらどうするんだ!」

 と叫んだ。


 ざわめきが広がりかけた時、周次の兄の周一が立ち上がり

「落ち着いてください。俺たちも、それに警察の人たちも着の身着のままは同じです」

 と告げた。

「ここで騒いでも何もならない、今はこれからのことを落ち着いて考えるべきだと思います」


 周次は兄の周一を見てほッと笑みを浮かべた。

 が、男たちは立ち上がると

「これが落ち着けるか!!」

 と叫んだ。

「どうするんだよ!」


 騒ぎは大きくなり、子供たちが泣き始めると女性たちも抱きしめながら恐怖に身体を震わせた。正にパニック状態である。


 男性の数人は立ち上がると

「「「とにかく出せ!!」」」

 と扉に向かって足を進めて扉を叩いた。


 勿論、びくともするはずがなくドンドンと音が響くだけであった。

 周次は拳を作り

「ったく」

 と足を踏み出して

「とにかく落ち着いてください」

 と男の手を掴んだ。

「これ以上騒ぐなら逮捕する!」


 瞬間にPOL035こと和久津雪は男の手を掴むと身体を入れて投げおろし、戸を叩いていた5人の男を伸すと

「出たければ開けますが外は200度以上の熱風が吹き、放射能に汚染されているので死亡することが目に見えています」

 と告げた。


 それに全員が息を飲み込んだ。

 男たちは拳を床にたたきつけると

「くそぉお!!」

 と叫んだ。


 POL035こと和久津雪はそれをじっと見つめデータを脳内に書き込んでいたのである。

 

 この人間たちを……未来に連れて行くべきかどうか。迷っていたのである。


 周次は息を吐き出すと

「落ち着いて今は寝るところと食事をすることから始めましょう」

 と呼びかけ

「テントを出すので手伝ってください」

 とB区画に足を向けた。


 男たちも女性も動かず兄の周一の家族と本条燕と周次が助けた妊婦の女性と杏が同じ年頃の子供たちに「手伝おう! 家作るんだって」と言うと子供たち数名がつらつらと歩いてくるだけであった。


 兄の周一は周次を見ると

「大変だな、お前も一緒なのにな」

 と笑みを浮かべた。


 周次はそれに

「まあ、気持ちはわかるからな」

 と答え、テントを出すと兄に渡した。


 そして、妊婦の女性には

「俺が作るので貴方は身体を休めておいてください」

 と告げた。


 彼女は笑むと

「ありがとうございます。確かに怖いですし、どうして良いのかわかりませんけど、でもこの子のために頑張らないと思って」

 と告げた。


 それに周次は笑むと

「ありがとうございます」

 と答えた。


 とにかくやるしかないのだ。

 本条燕もテントを扉の外へと出して置いていった。


 それにじっと座っていた数人の女性が現れると

「私も手伝います」

「その、私も」

 と手伝い始めたのである。


 騒いだ男性は黙って座ったままであった。が、この際無視するしかなかった。が、妊婦の女性がお腹を押さえると屈み「う、生まれる、かも……だれか、たすけ、て」と泣きながら蹲った。


 周次も本条燕も顔を見合わせた。そういう知識は全くないのだ。が、それに周一の妻の静子が駆け寄るとお腹を押さえて

「そうね、産気づいているわ」

 と言い、泣き始めた彼女に微笑むと

「私は産婦人科担当だから安心して、頑張って生みましょう」

 と告げた。

「テントを一つ早く作って!」


 それに女性は慌てて男たちのところへ走ると

「子供が生まれるのよ! 手伝いなさいよ!!」

 と怒鳴った。

「子供が生まれるのに何座り込んでんのよ!!」


 それに男性たちは慌てて駆け寄ると周一が病院用に立てようとしているテントを手伝い始めた。

 周次は義姉の静子に

「他に何が必要か」

 と告げた。


 彼女は冷静に

「先ず温かい毛布とそれから産湯ね、針と糸もとにかく妊婦さんを寝かさないとだめだから布団を用意して頂戴。あと子供を包むための綺麗なタオルね」

 と告げた。

「妊婦さんをテント内の運ぶのを手伝って」


 それに最後まで座っていた男性たちも走って手伝い始めた。

 周次はその様子を驚いて見ているPOL035こと和久津雪に

「和久津、お前はお産に立ち会え」

 と告げた。

「命の誕生を見ろ」


 残った周次は兄の周一に彼女を託して残った人々と協力して他のテントの設置を開始した。

本条燕も手伝いながら

「多くの命が失われても……めぐるように命が生まれる」

 と呟き

「本当に世界は妙と言うしかない」

 と目を細めた。


 シェルターに逃げ込めた人々は58名であった。テントの設置を終えて食事を配給し、それから十数時間後に59名となった。


 静子はギャン泣きする元気な男の赤ん坊を抱き上げてじっと見ているPOL035こと和久津雪にそっと抱かせた。

「どう? かわいいでしょ?」

 

 彼女はじっと赤子を見つめた。小さいのに重さを感じたのである。

「何故?」


 同じ時、燕は周次を見ると

「狭間警部」

 と言うと

「貴方に一つだけ伝えようと思います」

 と告げた。


 周次は燕に顔を向けた。

 彼は笑むと

「ロボットは……永遠に人にはなれません。どれほど人に似通っても。それこそ人の思考をコピーしても人にはなれない。けれど……俺はPOL035は人が分からなくても人を守ることは出来ると思いますよ」

 と告げた。

「忠実なる女神となるか、忠実なる死神となるかはマスターである貴方の導き次第です。貴方が彼女に人を望む限り彼女は死神になります」

 周次は目を見開くと静かに笑んだ。

「そうか……本条……そのために俺に本部長が託してくれたのか」


 燕は微笑んだ。


 周次はそっと入り和久津雪が赤子を抱いているのを見て微笑み、静子に赤子を返して彼女を連れ出すと外で懸命に作業をする人々を見せた。

「和久津、確かに人は過ちを犯す。欲に溺れて他を傷つけ罪を犯す。人はその愚かな部分も確かに持っている。お前はそれを見て人類を存続させるか、させないかを迷っていると思う。だが、人はそれだけじゃない。こうやって誰かのために動き、誰かを愛したり、無償で誰かのために尽くしたり助けようとしたりもする。それも人だ」


 そう告げて顔を向けると

「お前が抱いた赤ん坊は小さいけど重かっただろ?」

と告げた。


POL035こと和久津雪は頷いた。


周次は笑むと

「それが命の重みだ。そして、赤ん坊は何にも染まっていない。だが、正しく導かないと過ちを犯し欲に塗れて人を傷つけたりするようになる。そうならないように俺たちが、先を行く俺たちが導く必要がある」

 と言い

「警察官と言うのは罪人を捕まえるよりも罪人を作らないようにすることが第一だ。その為に巡回をして見守ることをする。だからお前を巡回にずっと連れて行っていた」

 と告げた。

「和久津、お前には人の心が分からないだろう。俺はお前に人の心を分かるようになってほしいと思っていた。人になってほしいと思っていたと思うが、もう分からなくていいんだ。ただ、お前のその目で見て罪を犯しそうなやつがいたら止めろ。それが警察官の一番大切な仕事だからだ」


 ……人が道を誤りそうになった時に食い止める……

「俺はお前にその仕事をやる続けることを命令する」


 ……巡回には終わりはないぞ……


 それを横で本条燕は聞きながらメガネを軽く押し上げて笑みを浮かべた。

「良い答えが与えられたみたいですよ……お父さん……」

 ……いや、俺の、POL000である俺の唯一のマスター……


 POL035こと和久津雪は敬礼すると

「その命令を承りました」

 と答えた。


 そして

「マスター、私の役割はシェルターの管理だけではありません」

 と告げた。


 ……マスターに未来を決めてもらう……

「それが私たちPOL系の本来の役割なのです」


 周次は目を見開くと彼女を見つめた。


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