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POL 終末のロボット警察官  作者: 如月いさみ


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大社広域交番 5

 兄である神ノ宮命に成り代わっていた尊が全てを告白して、神ノ宮尊として署長の任についてから更に1年が経ち、シェルターの中で人々が暮らし始めて2年が経とうとしていた。


 POL032こと速水隆二は相変わらずシェルター内の管理と時報を担っていたが尊が富健吾と多田安男と共に宿直していた真夜中に急に立ち上がると

「外気温22度。大気中の放射線レベル0.001mSvに三か月間近似して推移いる」

 と告げた。


 ……シェルターの外で呼吸しても人体に影響が及ばないレベルまで三か月間下がっていることを報告する……


 それに尊も富健吾と多田安男も顔を向けて目を見開いた。つまり、シェルターから出ても大丈夫だということである。


 隆二は更に

「ただな、地表の放射線濃度に問題がある。居住地域の表土を除去して人の近付かない場所での集積を行わないと空気じゃなくて土の方で影響が出る」

 と告げた。


 通常生活において一年間で安全レベルと思われる放射線量は大体2mSvと考えられている。

 空気の関してはそれを下回ったということである。


 尊は富健吾と多田安男に

「明日の朝に表土の洗浄と廃棄場所を調べるために外へ」

 と言いかけた。

 が、多田安男が冷静に

「この状況を報告するのは良いとしてもすぐさま全員が外に出るというは危険だと思われます」

 と告げた。


 確かにそうである。隆二の性能は信じていても絶対に大丈夫かどうかは不明なのだ。

 尊は頷くと

「では、先発隊として二人先に一か月ほど生活しその後に放射線の内部被ばくの検査と検診を行う」

 と告げた。

「一人は俺が出る」


 富健吾は笑うと

「いやいやいや、署長は唯一の医師だ。検査と検診をしてもらわないといけないからな」

 と言い

「一人は俺が行こう。一番年配だ。ここは活躍させてくれ」

 と告げた。


 翌日、警察の面々に先に報告をして、その後にシェルターの人々に報告を行った。


 誰が身の危険を冒して最初の一歩を踏み出すか。という話になった。もしかしたらまだ人が住める状態でないかも知れない。

 出た瞬間に死ぬかもしれない。


 実際に外の状況が見れるわけではないのだ。


 加賀信二が太田幸村を見ると

「太田さん、あんた村長になるんだったらそれくらい命を張ったらどうだ?」

 と告げた。

 太田幸村はそれに

「だったら、農会の妹尾さんはどうだ?」

 と告げた。


 妹尾牧夫は加賀信二を見ると

「お前は余計なことを言わなくていい」

 と小声で告げた。


 それに尊は

「最初については一か月のあいだ富さんと多田さんにお願いする予定なので」

 と言いかけた。

 が、山田竜一が立ち上がり

「俺がシェルターの一般人代表で行きます」

 と告げた。

「あの時、妻ともども署長さんに助けてもらった命だ。警察の方々だけに身を挺してもらうわけにはいかないし一般人の代表もいた方が良いと思う」


 山田竜一の妻の山田葵は小さく頷いた。

「頑張って、貴方」


 翌日、住むための場所を作るために簡易テントと地表を洗うための噴射洗浄機を担いで富健吾と山田竜一は防護マスクと防護服を着てシェルターの扉から外へと出て行った。


 食料は一日分を出入り口で受け渡しをするという形で一か月生活してもらうようにしたのである。

 そこで安全が確認できたら警察の全員で生活空間を決めて表土洗浄を行うことにしたのである。


 無線機を富健吾が持って行き、シェルターの出口から長いトンネルを潜って外へ出ると夜明けの赤い鮮明な色に彼と山田竜一は息を飲み込んだ。


 木々は薙ぎ倒され家々は半壊していたが土台のコンクリートは残っていた。ただ、土やら灰などが降り積もっており、富健吾は噴射洗浄機でそれらを綺麗に払いのけてテントを張り漸く防護マスクと防護服を取った。


 空気は以前と変わらず苦しくも何もなかった。ただ酷く空が鮮明で二人はテントから出て洗浄を行った範囲内で立ち尽くした。


 富健吾は零れていく涙に気付かず

「綺麗な空だ……俺たちがこれを拝めるのは署長や他の多くの人たちが俺たちを生かしてくれたからだ」

 と告げた。

 山田竜一も頷き

「そうですね、本当に……あれほどの犠牲を出さずに俺たちはどうしてこの風景を目にし続けようと思わなかったのか」

 と泣きながら告げた。


 大切な人を多くの人が沢山失った。

 失わなくていいはずの命を無為に失ってしまったのだ。


 戦争がどれほど愚かで、どれほど大義名分を掲げても馬鹿らしいことか……人は多大な被害を出してからでしか気付かないのだ。


 尊は無線からその言葉を聞き視線を下げた。大社広域交番に集う警察官の誰もが大切な人を失っている。そして、いま尊の帰りを待っている川坂仙花も両親を10歳で一気に失ってしまったのだ。


 どれほど誰もが悲しく、どれほど誰もが無念だったか。


 尊は全員を見ると

「誰一人もう犠牲にはしない……そんな生活を作っていこう」

 と告げた。


 全員が敬礼し答えた。


 一か月して富健吾と山田竜一が戻り、尊は救急車の中で二人の血液検査と尿検査、問診や触診を行い

「本当はレントゲンとかも取りたいけれど……状況が状況なのでそれは半年後にしようと思う」

 と告げた。

「今のところマーカー検査にも他の血液検査の数値も正常値なので問題がないとみて良いと思う」


 富健吾はフヒーと息を吐き出し

「そりゃ助かった」

 と言い

「そうそう、防護服とマスクをして近隣を調べたら交番は半壊してましたが残ってましたぜ」

 と告げた。

「それで……紙を」

 

 地図を書き、居住に使えそうな場所と状況を書いた。

 それを見て尊は汚染された表土の廃棄場所を決めると

「二日後に取り掛かる」

 と告げた。


 そして一つ気になっていたシンチレーション式放射線量測定器を二日後の洗浄時に持って行ったのである。


 大地は表土を払い洗浄したら放射線は人体に影響が及ばない範囲まで落ちたのである。


 だが。

 だが。


 尊は流れる川の放射線量を測定し目を細めた。

「これは」


 まだ人が飲み水などに使えるレベルまで落ちていなかったのである。

 シェルターで生き残った人々は元々農耕を主として働いていた人間である。シェルターから出たら野菜を育てて元の生活に戻ろうと考えているはずである。


 尊はそう考えながらも唇を噛み締めると

「俺は恨まれても良い」

 人々を守るためなら、と呟き拳を握りしめた。


 表土を払い住めるようにすると尊はシェルターから出る日に

「居住区の大地の洗浄は終わりました。テントを利用して外で生活してもらうことは可能です」

 と言い

「但し、農耕作業は禁止します。備蓄の食料はまだ3年分あるので水と食料は配給制とします」

 と告げた。


 騒めく人々を見て

「これは大社広域交番大使署長からの厳命ですので従っていただきたい。種などもお渡しすることは今は出来ません」

 と告げた。


 人々は戸惑い、農会の妹尾牧夫や加賀信二を始めとしてデモが大社広域交番の前で行われるようになった。


 不穏な幕開けとなったのである。


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