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POL 終末のロボット警察官  作者: 如月いさみ


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ゼロ丁目駐在所のお巡りさん 3

『ロボットは何処まで行ってもプログラムで受動的です。だからどんな命令でもプログラムされればやり続けます』

 ……改心も。良心もないからです……


 ロボット警察官であるPOL031こと獅子河豊治が告げた言葉である。


 榊翔也は鳥取砂丘の西側に広がる秋里住宅街のマンション千代川リバーマンションの一室で目を覚ますと身体を起こして千代川側の窓のカーテンを開けた。

 ずっと考えていた。

 何故、突然あれほど高性能なロボット警察官を入れたのだろうか?


『どんな命令もプログラムされればやり続けます。改心も良心も無いからです』


 翔也は息を吐き出すと

「確かに警察官も減っているし……犯罪者に懐柔される心配もないし……もしかして置き換わるってことなのか?」

 と「おおお」と身体を震わせた。


 仕事を奪われるかもしれない。と思ったものの翔也はベッドから降り立つと洗面所で顔を洗って朝食を取ると車に乗って砂丘前駐在所へと向かった。


 秋里は砂丘の西側を流れる千代川の横に広がる住宅街で砂丘前駐在所までは車で10分ほど走れば到着する。翔也は裏手の駐車場に車を止めて降り立つと詰所へと入り、既に前日から勤務している豊治と中島郁夫と津山弘良を見て

「おはようございます」

 と敬礼をして詰所の奥の仮眠室へと向かった。


 制服に着替え中島郁夫と津山弘良と引継ぎを行うと翔也は豊治を見て

「獅子河巡査に俺から教えておくことがある」

 と告げた。


 そして笑みを浮かべると

「警察官の心得だ」

 と告げた。


 豊治は翔也に目を向けて

「警察官の心得でますか?」

 と告げた。


 翔也は大きく頷くと

「ああ、お前が将来警察を背負って立つときの為にだ」

 と言い

「お前はロボットは改心も良心もない。言われた通りにするといっただろ? だったらロボット警察官のお前は警察官の心得をプログラムの根幹として持っておく必要があると持った」

 と告げた。

「俺が用なしになった時に代わりのロボット警察官が警察官の心得を持ってなかったら悔しいだろ?」


 ……どんな形であれ俺は花田巡査部長からお前の全権を任されたんだ……


 豊治は敬礼をすると

「了解しました」

 と答えた。


 翔也は一冊の本を渡して

「これは日本警察の父と言われている人物で獅子河、お前の名前もこの人から取った」

 と告げた。


 豊治はじっと翔也を見つめた。


 翔也は笑むと

「川路利良……初代大警視だ」

 と言い

「人々を大切にすることに尽力していくことが大切だという内容が書かれている。またあらゆることから真実を追求していくことの重要性もな」

 と告げた。

「ゆっくり読んでデータの根幹に入れておいてくれ」


 豊治は本を手に

「ありがとうございます」

 と笑みを浮かべた。


 翔也は豊治の笑みに笑みを深めると

「まあ、俺も凡人だから偉そうなことは言えないけど……これを読んで肝に銘じたいと思ったからお前に託す」

 と告げた。

「なんてな! でも俺は警察官を辞めるつもりはないからな!」


 そう照れ隠しのように笑った。


 POL031がまだ白紙に近い状態ならば行動原理よりは先に『心得』を教えた方が良いと翔也は考えたのである。ロボットは悪にも善にも変わる。心がないだけに改心も良心の呵責もない。

 つまり壊れるまで『自ら変わることが無い』のだ。ロボットを扱うというのはそういうことなのだと翔也は先の事件の時の豊治の言葉から理解したのである。


 翔也は立ち上がると

「じゃあ、今日の巡回はCルートだな。これで一通りのルートを教えたことになるな」

 と告げた。


 豊治は本を制服の内側に入れて

「はい」

 と答えた。


 二人はパトカーに乗り込み山陰道を走った。翔也が運転をして豊治が周囲を見る形で山陰道を少し走ると住宅が密集するところをそれに沿って左折し海沿いの道と山陰道の中間に密集する住宅街の道路と農道が混在する中央の道を進んだ。

 住宅が両側に並び二車線と車がギリギリ二台抜けられるかどうかの道が入り混じる一般道を走り時折住宅の庭で水やりなどをしている住人に敬礼をして挨拶を交わした。

 観光地である鳥取砂丘からは少し離れているので人通りも少なく見かけるのは殆ど住人だけである。


 豊治も会釈する老女に敬礼をして応え

「一番人通りが多いのは319の海沿いの道ですね」

 と告げた。


 翔也は運転しながら

「そうだな。国内や海外からの客も多いし美術館や土産物……商業施設が軒並み海沿いに並んであるからな」

 と答えた。


 そして、途中で再び山陰道側に向かい海士の交差点から細川西へと進むと細川の住宅街をクルリと回って海沿いのUターンルートへと入っていった。


 鳥取砂丘は観光バスなども訪れる有名な観光地で観光列車と連携してバスで訪れるということも多い。勿論、海外からの観光ツアーにも組み込まれているほどである。

 

 海岸沿いの道を駐在所へ向かいながら助手席に座って周囲の様子を見ていた豊治が

「……観光客が……殆どいません」

 と呟いた。


 翔也も運転していたがそれには気付いていた。天候は悪くない。病気などのパンデミックも発表されていないし季節的にも観光客が多いシーズンである。


 違和感があった。


 翔也は暫く海岸沿いを走り砂丘の入口となるビジターセンターの駐車場にパトカーを止めて

「砂丘の見回りもCルートには入っている」

 と言い豊治と共に爽やかな風と陽光が振りし注ぐ中を進んだ。


 砂地は歩きにくい。足が取られるからである。だが、風が織りなす砂丘に描かれる風紋は綺麗であった。そう、観光客が殆どおらず足跡がついていないからである。

 ざっと見ただけでも10名くらいしかおらずそれも全て日本人であった。こんな日が全くないかと言えばNOであるが、珍しいと言えば珍しい日である。


 翔也は豊治を連れて歩きながら砂丘展望台まで着くとクルリと回って再びビジターセンターの方へと戻った。トラブルらしいトラブルもなかった。観光客が増えればそれなりに砂丘を見に来た客同士でのいざこざが起きるモノでそれを制止するための巡回でもあった。


 二人はパトカーに乗り込み砂丘前駐在所へ着く寸前に鳴り響く警報に目を向けた。駐在所の真裏にある美術館からの警報音である。正に足元での事件である。


 翔也はパトカーを駐車場に突っ込むと飛び出して駆け出してきた女性職員に目を向けた。

「何かありましたか!?」


 彼女は泣きながら

「強盗です!! 美術品を! い、いま……館長たちが」

 と告げた。


 豊治は無線で鳥取警察署へ連絡を入れて警棒を手に

「行きましょう」

 と告げた。


 翔也も頷いて女性を安全と思われる駐在所の前で鳥取警察署の警備部の人間が来たら説明するように告げて中へと足を踏み入れた。中は照明が付いておりそれなりに視界が利いていた。が、入口直ぐの場所に銃を持った強盗犯が二人立っており手前で男性が三人倒れていた。


 翔也は警棒を手に足を踏み出しかけて豊治に止められた。

「アレはロボットです。サーモグラフィーに体温表示がされていません」

 

 見るからに人間である。だが、今なら翔也にも理解できた。豊治もパッと見れば人以外には感じられないからである。今やそれだけ高性能なロボットが製造されているということである。


 だが。だが。


 翔也はジリと足を進めかけた。

「だが、早く彼らを救助しなければ」


 豊治はそれに

「三人の温度呼吸パルスメーターは正常です。恐らく気絶しているだけでしょう。外傷もなさそうです」

 と答え

「私が動きます。警棒を反対側に」

 と告げて警棒をそっと渡した。


 翔也は意味を理解すると豊治のいる方と反対側に警棒を投げた。ロボット二体が顔を向けて銃を振り上げた瞬間に豊治は素早く二体の間に滑り込むと両手でそれぞれ首筋の電気系統を破壊した。


『あ』と言う間の出来事である。


 翔也は走って三人を抱き起して呼びかけると壮年男性が

「う、うう」

 と身体を起こして

「ご、強盗が!! 美術品を!!」

 と告げた。


 それに翔也は頷いて

「わかっております。それで他の人は?」

 と聞いた。


 他の二人も目を覚ますと

「女性のスタッフが外へ……後は我々だけで」

 と告げた。


 翔也は安堵の息を吐き出すと

「いま所轄に連絡を入れてます。もうすぐ機動隊が到着すると思いますので外の安全な場所で説明をお願いします。女性の方も外にいます」

 と告げた。


 豊治は倒れた二体を見て

「恐らく殺人の命令は入れていないと思います」

 と告げた。


 翔也は頷くと投げた警棒を拾い豊治に渡すと

「そうかもしれないな」

 と答えた。


 投げた警棒を撃たなかった。それに三人も気絶させただけで殺さなかったのだ。殺人と言う禁忌は犯さないように作っていることは理解できた。

 しかし、正面の絵画は既になくこのままでは美術館の美術品が全て盗難にあってしまうのだ。それを見過ごすことは出来なかった。


 翔也は豊治を見て

「行くぞ」

 と足を進めた。


 二人は広々とした館内を左右と前に意識を集中しながら足を進めた。出来るだけ足音が響かないように翔也は気を配りながら呼吸を短く浅く繰り返した。


 警報音がワンワンと響いている。

 それすらも凌駕する音が出口近くから聞こえ翔也は足を踏み出すと真っ直ぐ進んだ先に出口へ続く角の壁に一旦姿を隠してそっと出口を見ると既に美術品を4つの人影が外へと運び出そうとしていた。


「間に合わない」


 翔也はそう理解すると飛び出して

「そこまでだ!!」

 と銃を向けた。

 それに豊治は足を踏み出すと二つの銃声が響く中で翔也を抱いて飛び退いた。


 豊治は倒れた翔也から離れた銃を拾い運び込んで立ち去ろうとした一体の足を正確に狙い発砲した。だがそれに目を向けることなく二台の車が同時に走り出したのである。


 そのすぐ後に外でパトカーのサイレンが響き、その車を追いかけるのが見えた。同時に盾を手にした機動隊が二人に駈け寄った。鳥取警察署の機動隊が到着し破壊された二体のロボットを回収してこちらまで来たのである。


 第一機動隊長の阿久根よしのりが倒れている翔也に駆け寄ると

「しっかりしろ! 救急を呼ぶ」

 と呼びかけた。


 翔也は目を開けると

「……今二台……」

 と言うとそのまま意識を手放した。


 結局、ロボット3体が回収されただけで美術品は持ち去られたままとなった。

 ロボットはかなり高性能な作りをしており解析から銃を向けた相手には銃で応戦することがプログラムされていたことが分かった。

 豊治は翔也が撃とうとした瞬間に正確に狙って銃を向けた二体のロボットを見てそれを瞬時に判断したのである。飛び掛かったことで翔也は左肩の被弾で済んだのだが、もしそのままだったら確実に翔也は死んでいたのである。


 美術館職員については全員軽い打撲で入院も一応念のためで直ぐに退院できた。翔也は手術を受けて一週間の入院の後に漸く退院したのである。ただ当分の間は運転ではなく監視側になるということであった。


 美術館の当分の休館が決定し翔也はやはり観光客が激減していることに一抹の嫌な予感を覚えつつも

「じゃあ、今日はAルートの巡回をするぞ」

 と豊治に呼びかけて海沿いの道をパトカーで回るのであった。


 空は何時になく青く晴れ渡り太陽は輝いているが、地上には不思議なほどの静寂が広がっていた。


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