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その後①

序 綾羅の後日譚 ①です。

 天馬の曳く馬車の中、長年想い続けてきた愛しい神と肩を寄せ合い、綾羅は浮き浮きとした心持で笑んでいた。

「済まない、綾羅」

 突然の謝罪の言葉に、綾羅は不思議そうに黄龍を見る。

「本当は、私の背に乗りたかったのであろう?」

 そう言われ、綾羅は思い出す。

 つい一昨日の夜、興奮の余り、語ってしまった事を。

「あのっ、あれは、その……私の方こそ、ごめんなさい。二神きりで話せた事が嬉しすぎて、大それた夢を語ってしまいました……」

 〝いつか黄龍様の背に乗って空を飛びたい〟

 神界を統べる主神たる者の上に騎乗しようなどと、不敬極まりない行為である事は、もちろん綾羅にも重々分かっていた。如何に自分が黄龍に憧れているのかを、もう二度と会えないかもしれないからと、大胆にも語ってしまったのだ。

 しゅんとして俯く綾羅の顎を取り、黄龍は己の方を向かせる。

「構わない」

 間近で柔らかく笑む黄龍の顔に、綾羅は見惚れる。

「私の前では、素直な綾羅で居て欲しい」

 ぼんやりと黄金色の瞳を眺め、どうしてそんな事を言うのかしら、と思いながらも、綾羅は、はぁい、と返事をする。

「そうだ。それで良い……」

 顔が更に近くなる。

 綾羅が目を閉じようと睫毛を伏せた時。

「黄龍様、到着いたしましてございまする」

 凛とした女性の声が掛けられ、黄龍はぴくり、肩を揺らして動きを止めた。

 そのまますっと綾羅を放す。

「……御苦労」

 耳が赤くなっている。

 ホントは照れ屋さん、なんだ……可愛いいいぃ!!

 心で絶叫しながら、綾羅は凝と見詰め、観察する。

 黄龍は、すうと一息吸うと、照れた表情をいつもの無表情へと変化させた。

 二神きりなったら……沢山、口づけをもらおうっと。

 〝黄龍妃になる〟事の本当の意味をまだ知らぬ綾羅は、能天気な事を考えながら軽快な足取りで馬車を降りた。

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