第76話 本来の依頼は武者行列
駆け出していくかなめとアメリア、そして入れ替わりに嵯峨が顔を出した。
「なんだ、ありゃ?まるで小学生だね。でもああいったことはランがやるんなら……いや、ランその目怖いから。俺お前さんには絶対勝てないこと知ってるんだからそんな目で見るのを止めて」
嵯峨の明らかにランの前では口にしていてはいけない発言を受けてのランのお決まりの睨みに嵯峨は怯んだようにそこに立ち尽くした。それまでアメリアに何かを吹き込まれてニヤニヤしていたサラとパーラが突然の闖入者に驚いたような表情を浮かべた。
「分かりゃあいいんだ。それより隊長、何か用が?もう隊長の出番はねーぞ。あとは全部新藤が引き受けるって話だから」
嵯峨に威嚇するような視線を向けるのを止めて立ち上がったランはそう言って伸びをして深呼吸して仕事が終わった余韻に浸っていた。
それを見ると嵯峨は手を打って思い出したように誠に手招きした。
「神前、来いや。お前さんに用があって来た」
嵯峨はぶっきらぼうにそれだけ言うと部屋を出て行こうとした。
「僕に用ですか?何でしょう?隊長に頼まれることって大体ろくでもないことなんですけど……本屋に行って風俗情報誌を買って来いとか、コンビニで甲種焼酎を買って来いとか……」
不思議に思いながら誠も立ち上がった。それを見てカウラは手を打った。
カウラの表情が普段のカウラらしい機嫌が良い時の無表情なのを確認すると嵯峨の用事が何やら意味があるちゃんとした指示であることは誠も理解した。
「ああ、今回のイベントの本題の方だな」
カウラは嵯峨の真意が分かっていると言うようにはっきりとそう言った。誠を見るカウラの目がいつもより輝いているところから見て珍しく嵯峨が誠に良いことをしてくれるらしいが、嵯峨にとって良いことが誠にとって良いことだったことはあまり無いのでまだ誠は猜疑心に囚われていた。
「本題?今回はこの変な映画を作って終わりじゃないんですか?」
カウラは尋ねてくる誠ににんまりと笑って見せた。
「この映画を上映するのは今度の節分だ。呼び物は隊長の提案で始まった時代行列。そこで着る鎧兜を選ぶんだ。そちらの方で市の町おこしをする。それが市の本命の依頼だ。その時に余った金でこの馬鹿騒ぎが行われたんだ。こちらは添え物で時代行列の方が市としてはうちに依頼したいことなんだ」
そんな笑顔に満ちたカウラの言葉で誠は嵯峨が187cmのスポーツマン体形ゆえに、時代行列の衣装の使いまわしがきかないことからその為に自分を呼んだと察して、また嵯峨に騙されると被害妄想に駆られた自分を恥じて苦笑いを浮かべた。
「ああ、そういうこったな。そっちの方が本当の市への協力行事でうちの宣伝活動。これはただの『旅の恥はかき捨て』みたいなもんだ」
嵯峨の言葉に元々目つきの悪いランの目つきがさらに悪くなった。その視線を受けるとつい身体が勝手に動いて立ち上がった誠はのんびりとした歩調で歩く嵯峨の後ろについていった。
「ああ、聞いたんだ。うちでは士官は大鎧、下士官は胴丸を作るんだ。神前は下士官だから胴丸だな」
誠が嵯峨に追いつくと嵯峨はちらりと振り向いて何でもないようにそう言った。
「え!鎧兜を作る?そんなお金のかかることをするんですか?そんなお金隊長は持って無いでしょ?うちの隊だって予算が無いって高梨部長がいつも言ってるし……そのお金は何処から出るんですか?市が出してくれるんですか?」
嵯峨の言葉に誠は驚いた。彼の肩に誠の後ろを駆けてきたカウラが手を伸ばした。
「それは隊長の荘園の収入から出る。すべての鎧兜は嵯峨家の所有物になるわけだから隊長もそう言う金は惜しまないんだそうだ。それに時代行列でうちは源平絵巻の担当だからな。当然甲冑を着て行進することになる」
当たり前のように言うカウラの言葉で嵯峨があの『全自動温泉卵製造器』と呼ばれるシュツルム・パンツァーの出来損ないの『武悪』の鯨のように予算を食う維持費を荘園の収入で賄っていることを思い出して納得した。
「節分の祭りの目玉は隊長の流鏑馬だ。期待してろよ……素人にゃちょっと出来ねー芸だ。アタシもこのことについてはいつも『駄目人間』だの『脳ピンク』だの馬鹿にしているが認めてやる」
自慢げにランはそう言った。誠は貴族で時代趣味の国である甲武育ちの嵯峨なら乗馬くらいはできるだろうとは思っていたが、弓まで使えることは初めて知った。
「ちょっと会議しようや。お前等も見るか?」
嵯峨にそう言われて一同がぞろぞろとついてきた。
「源平絵巻ですか……うちは剣道場ですのでそう言った資料は母が沢山持っていて子供のころからよく見ていましたけど……写真の資料しか見たことありませんよ、僕」
そう言いながら嵯峨に続いてコンピュータルームに入った。嵯峨は素早く端末の前に腰掛けると画面を開いて甲武のネットに接続した。
「やっぱり甲武ですか製作は」
基本アナログシステムの東和と違いネットワークがデジタルシステムのため変換に時間のかかる間に誠は嵯峨にそう尋ねた。
「そりゃあな。甲武の時代趣味はすげえからな。東和だと何時代の鎧……と言うかそもそもこれ日本の甲冑と違うじゃんと言う奴ができちまうからな。東和の京にある金閣寺を見てみろ。あの本物は木製の建物に金箔を貼ったものを建物として建てたからちゃんと建物として耐えられた。それなのにいくら金が沢山あるからって東和の遼州人は全部純金で作っちゃうなんて言う珍妙な行動をとるんだ。そんなもんこの地震の多い東和じゃあっという間に金の重さとその柔らかさで潰れるに決まってるのに……作っちゃうんだもんなあこの国は。それで今の巨大な金塊の山が出来上がったわけ。この国の日本文化は仏作って魂入れずの典型だってのが良く分かる事例だ。まったくこの国の金満ぶりは地球圏のほとんどの国が勢力圏に置きたがるのも当然だな」
嵯峨がそう言いながら甲武国立文化研究所のセキュリティーコードを打ち込んでいるのを眺めていた。
「まあ、風景が昭和のこの国でも本物の昭和の日本で作った映画とか『モテない宇宙人』である自覚のある遼州人の国である東和では全く受けないというか見るとみんな嫌な顔をして出ていくって話を聞いたことがありますからね。それにしても甲武のどこでそんな源平合戦の鎧なんて作ってるんです?あの国は『大正ロマンの国』ですよ。大正時代には鎧兜で戦争やってたわけじゃないでしょ?」
誠の実家のある下町の工場でも5月人形の鎧兜を作っているところが有るので、時代行列の鎧兜もそう言ったところで作るものだとばかり思っていた。
「平安末期仕様の鎧兜って限定して作らせるとなると、俺の領地のコロニーしか無くてな。まあこのこだわりがどれだけ客に受けるかは別なんだけどっと!」
そう言いながら嵯峨は歴史物品複製製作のサイトにたどり着いた。
「とりあえず胴丸で……サイズからか……神前!身長は?」
嵯峨が突然振り返った。誠が興味深げに覗きこむ端末には徒侍の姿が映っている。明らかに雑兵と言う姿に少し誠はがっかりした。
「一応187センチですけど……この画像。どう見ても雑兵役……武将じゃないんですね?」
誠は心底落ち込んだようにそう言った。本来であれば士官候補生と言うことは士官扱いで武将の役が出来たところである。それを嵯峨の一言で曹長に降格されて一気に雑兵扱いとはあまりの事だと唇を噛んだ。
「ああ、将校クラスは大鎧だが下士官はすべて雑兵の格好になるんだ。頑張れよ、雑兵」
カウラの言葉にサラがいかにも楽しそうに誠に笑いかけた。
カウラは大尉、サラは中尉。二人とも女武将として大鎧を着て時代行列に参加することになる。
それに対して自分は雑兵。サラの笑い声を聞くとさすがに穏やかな誠も腹が立ってきた。
「神前、でかすぎだ。特別注文になるな。早めにサイズを聞いといて良かったわ。こりゃあ作りかけの奴に手を加えるんじゃなくて一から作らないとならないからな。そもそも鎧はサイズが合わないと本当に調整のしようが無い。島田くらいの大きさならギリギリで何とかなるがお前さんのは特注だ。こりゃあえらい出費だよ」
そう言いながら嵯峨は端末に入力を続けた。キーボードを打つ嵯峨を初めて見る誠だが、それは驚異的なスピードだった。すぐさま鎧の各部分の設定などを入力して完成予想画面が映し出された。
雑兵姿とはいえ、胴丸を着込み薙刀を持った誠の姿は、それなりに『サムライ』らしく画面に再現されていた。なんでも観光客向けに分かりやすい武器を持たせるらしい。
「へえ、様になるわね」
「良かったなカウラ」
パーラがカウラに声をかけた。それまで画面を見つめていたカウラは突然の言葉に頬を赤らめて下を向いた。
嵯峨が体を引いてランからも画面が見えるようにした。ランはしばらく頭を掻いた後、仕方が無いというように画面を見つめた。そこには様々な文様の胴や袖、佩楯などが映っていた。
「兜は……下士官は雑兵だから烏帽子ですよね?」
「まあな、女武者は鉢巻とかが普通だぞ」
「ああ、アタシは赤糸縅の大鎧に鉢巻だ。ちなみにアタシのだけはちゃんとした西園寺家の自前の奴だぞ。かえでやリンも自分のは自分で用意すると言ってた。ああ、アンの分が必要になるな……まあ、アイツは軍曹だから雑兵だから男とか女とか関係ねえからその辺は考慮しなくて大丈夫か」
誠達が神妙にコンピュータルームに入るのを見つけてアメリアをせっかんするのを止めて入って来たかなめの言葉で、凛々しく騎馬で疾走する姿を想像して誠は納得した。カウラやかなめ、アメリアも将校であるところから考えれば、彼女達も恐らく源平の女豪傑の巴御前のような姿になるだろうと思って心が躍るのを感じた。
「やっぱり兜がねーと格好がつかねーよ!アタシは今年は兜を被るぞ!隊長!正式配属のお祝いだ!ケチるんじゃねーぞ!」
ランはそう言って端末のキーボードを叩く嵯峨に注文を入れた。
「贅沢言いやがって。お前さんのサイズならどこかの5月人形の店で自分で買えよ」
ごねるランに苦笑いを浮かべると嵯峨は再び端末のキーボードを叩いた。
「大鎧はそう簡単には作れないんだよあ……納期を考えると……緋縅の子供用の甲冑の部品が余ってるみたいだからこれで行くか?」
嵯峨はランに向けてなだめすかすようにそうつぶやいた。
「仕方ねーな。子供用ってのが気に食わねーけど仕方がねーや」
ランが一言言ってでようやく話がまとまった。
「ああ、そうだ。島田も今回は将校扱いだな……大鎧を作り足さなきゃな。誰か島田の野郎を呼んできてくれ。たぶんアイツでギリギリ標準サイズでなんとかなるだろ?ただ、アイツは動き回るから神前と同じように特注した方が賢明かな?」
嵯峨はそう言って『近藤事件』で誠の活躍で将校に出世できた割に誠を虐めまくる先輩であるヤンキー島田の名を出した。
「私が連れてきます!」
嵯峨の言葉にサラが飛び出していった。誠は嵯峨の横から手を出して自分の鎧の完成予想図を見た。
「やっぱり雑兵だな。どこから見ても雑兵Aだ」
カウラの一言。誠は大きく落ち込んだ。
『カウラさんは言うことに配慮が無いなせめて『侍大将』ぐらいの扱いにならないかな……一応下士官だし』
遠慮会釈の無いカウラの言葉に誠はそう心の中で思っていた。
「良いじゃないか。乗馬の練習とかしなくて良いし、それに大鎧は結構動きにくいからな」
カウラのフォローだが、所詮は祭りのコスプレである。格好が良い方を選びたくなるのが人情だった。
「まあ、がんばれ」
肩を叩く嵯峨。そこで再びドアのロックが解除された。
「私だけ仲間外れ?それって酷いんじゃない?」
そう言ってアメリアがちゃっかりと部屋に乱入していた。だが、その視線が誠の目の前の画面に落ち着くとにんまりと笑って誠の頭をぽかぽか叩き始めた。
「まあ、立派な雑兵じゃないよ!ちゃんと私の盾になって矢襖になって立ち往生するのよ!」
アメリアは調子に乗ってそのまま誠の頭をぺたぺた叩き続けた。誠は苦々しい笑顔を浮かべながら見つめてくるアメリアの糸目に答えた。
「武将は将校だけなんですよね。じゃあアメリアさんや西園寺さんやカウラさんも馬に乗るんですか?」
逆襲のつもりで誠が話をそちらに向けるがかなめとアメリアは平然としていた。
「アタシは一応甲武の公家の出なんだよ。当然乗馬なんざ必須科目だね。そして……」
「私もこういうことにはこだわる質なの。去年、何にもすることが無かったから休暇の度に乗馬クラブに通ってそれなりの腕になったんだけど……」
にやけたかなめとアメリアの視線がカウラに向かった。カウラは思い出したように顔を赤らめるとうつむいてしまった。
「馬と相性の悪い将校さんもいるからさ、ちゃんと二人で歩いてついて来いよ」
嫌味たっぷりにかなめが言うとカウラはそのままじっと話題が変わるのを待つことにしたように黙り込んだ。
「なんだ、馬?簡単だよあんなの」
そう言うと目をきらきらさせてランがカウラの手を握った。
「そうは行かないんだな。カウラの場合本当に不思議なくらい馬に嫌われてるからな。俺もあそこまで馬に嫌われる人間を見たことが無い。俺が出た甲武の貴族の為の軍学校である高等予科学校は乗馬は必須科目だったが、あんな光景は俺も見たことが無い。世の中いろんな人がいるもんだね」
嵯峨にそう言われてカウラが困ったような顔をしていた。そう言われてランは腕組みをして考え込んだ。
「普通なら馬なんて轡を取る人さえいればじっとしていれば済むんだけどな」
かなめも笑いをこらえながらちらちら恥ずかしがるカウラを覗き見ては悦に入っている。
「同じギャンブルだから競馬で活躍する馬はパチンコ依存症患者は本能で拒否するようになっているのか?俺はオートレース党だけど馬が暴れたことなんて一度も無いぞ」
嵯峨の言葉が止めを刺したようにカウラは深刻な顔をした。
「おい、追い詰めてどーすんだよ!」
自分の言葉で部下が落ち込むのを見て慌ててランが全員に顔を向けた。
「確か去年はアメリアが乗馬クラブに通ってたわよね。その間の雑務は全部私の仕事。まったく仕事に関係の無いことに関してはアメリアは徹底的に情熱を注ぐんだから」
パーラが首をひねりながら答えた。こういうイベントには異常な情熱を注ぐアメリアが乗馬の特訓くらいならやりかねないと思って誠は笑みを浮かべた。
「おい、アメリア。オメーの顔でその乗馬クラブにカウラを通わせるってのはどうだ?」
かなめの質問にアメリアは苦笑いを浮かべると顎に指を当てて首をひねって考え始めた。
「三つあるけど……節分の時代行列で乗るためでしょ?そうするとここかしらね?確かに去年もカウラちゃんは馬に乗れずに歩いてたものね」
そう言うとアメリアはすぐに端末を操作して豊川市の企業情報のサイトを検索した。そこには小さな牧場の写真が映っていた。
「おい、これは誰だ?」
左端に鎧兜の女武者の写真が見て取れた。
誠は首をかしげた。写真に写っているアメリアだがどうも不自然に見えた。
身に着けているのが先ほどまで見ていた源平絵巻に登場する甲冑とは明らかに違った。赤い漆のようなもので塗られて輝く兜の額には六つの銭の飾りがあり、胴は丸く金属でできているように見えた。アメリアの顔には仮面のようなものがついて、そこから髭のようなものまで生えていた。
「当世具足って言うんですって!六文銭に赤備えで真田信繁をやろってわけ!観光客は源平より真田なのよ!源平時代の武将を観光客が何人知ってると思うの?たぶん平家の武将の名前なんて一人も知らないわよ!その点、真田信繁……通称幸村だったら小学生だってゲームとかアニメで見慣れてるからみんな知ってる!甲武の伝統やら『サムライ』ではなく公家が時代の主役だったとか言う理由で源平合戦の格好にこだわる方がどうかしてるのよ!」
色々理屈はつけてはいるがアメリアはみんな知っている武将を演じて悦に入りたいらしいということがその有名な真田幸村すら知らない歴史知識が小学生以下の誠は納得した。
「時代が全然違うじゃないか。我々は源平絵巻をやろうとしてるんだ時代で言えば12世紀だ。真田信繁、世に言う真田幸村が活躍したのは17世紀だ。500年も時代がずれてる」
カウラの一言にアメリアは気に障ったかのようにうつむいた。確かにこのような甲冑を飾っている剣術道場もあることは知っていた。
「でも大丈夫か?カウラは動物と相性最悪だぞ。馬なんて……」
そう言ってかなめはタレ目でカウラを見上げた。アメリアもそこまで言われるとただ首をひねるしかなかった。
「それに怪我をされたらな……一応仕事に支障があるのは勘弁して欲しいな。だからカウラは今年も徒歩で」
嵯峨は淡々と皆にそう言い渡した。
「隊長!私のときは何も言わないで!私が怪我をしても隊長は何も思わないんですか?」
アメリアが目を向けたので嵯峨が首をすくめた。
「お前は止めても行くだろ?俺は無駄なことはしない主義なの。しかも去年とはうちをめぐる状況がかなり違うんだ」
そう言い訳するとなんとかアメリアは納得した。
「つまり歩けば良いんだよ。いっそのことアタシの馬の轡でも取るか?神前と一緒に」
ニヤニヤ笑うかなめだが、先ほどの嵯峨の言葉にカウラは少しばかり落胆していた。
「そうですね。今年も歩きますよ。甲冑はこの前ので良いです」
残念そうな口ぶりでそう言い切ったあと、カウラはかなめをにらみ返した。
「喧嘩はよしなさいって。じゃあ、俺は島田が来たらアイツのサイズを確認して好きな色とか選ばせるから」
そう言うと嵯峨は立ち上がった。
「定時だぜ、どうする?飲みに行くか?どうせ島田の大鎧なんてどうでもいいんだから。すぐ終わるから待っててね」
嵯峨の言葉にランが当然というようにうなずいた。
「叔父貴のおごりってわけじゃ……ねえよな」
それだけはあり得ないと誠は月5万円で生活する男である嵯峨を見つめつつかなめの無茶振りに苦笑いを浮かべた。
「俺を誰だと思ってんの?俺は今月はおとといオートレースで負けてやばいんだから……いっそのこと金貸してくれるの?」
そう言って嵯峨は端末を閉じた。
「じゃあ、クバルカ中佐とかなめちゃんとカウラちゃん、私と誠ちゃん……」
アメリアが視線をパーラに向けた。パーラはそのままサラを見つめた。
「じゃあパーラの車は……あと島田でも呼ぶか?」
そんなかなめの方を見ながら決して潰れるまいと誠は心に誓った。




