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遼州戦記 司法局実働部隊の戦い 別名『特殊な部隊』と魔法少女  作者: 橋本 直
第十四章 『特殊な部隊』の暴走

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第53話 昼休みの感想戦

 画面の中では、リンが十分にかなめの折檻を楽しみ終えていた。


 そしてかなめの方も、責めを苦痛ではなく快楽として受け取り、さらに強い刺激を求め始めたところで画面が消えた。


 かなめのもだえる様子を見て誠はリンだけでなくかなめもこの作品をポルノ方向にもっていってアメリアに恥をかかせようとしているのではないかと疑い始めていた。


「あっちもお休みみたいですね……と言うかこんなの本当に市役所の依頼だからって作って良いんですか?『そっち系』の人が喜びそうな内容になっちゃってますよ。それに西園寺さんも目覚めちゃったみたいですし……良いんですか?こんなの流して……というか、西園寺さんは完全にアメリアさんへの嫌がらせの為に『そっち』の方向にもっていこうとしてますよ?良いんですか?かえでさんとリンさんと西園寺さんに自由に演技させて……というかあれ演技なんですか?半分本気のような気がしてきてるんですけど?」 


 そう言って苦笑いを浮かべながら誠は伸びをした。確かにこれ以上リンがかなめを責めてかなめがそれを求める絶叫を上げ続ければとても子供の見る作品には成りそうにないので当然のことだと誠は思った。


「まあ……なんて言うか……みんな本性が出るもんだな。俺も気を付けよう。それとかなめも結局はかえでと似た者同士なんだな。さすが姉妹だ。市の担当者が『駄目』って言えば、来年はこんな面倒も来ないんじゃない?むしろ好都合なんじゃないかな。『特殊な部隊』は退屈な映画かポルノしか作れない……って認識してくれれば、仕事を押し付ける回数も減るよね。うちには軍が介入することで政治問題になる軍事衝突を防ぐという本来の目的があるの。市民に娯楽を提供するのは基地を提供してもらってる俺達の感謝の表れの一つであって仕事じゃない。そのくらいのことを市の担当者も分かってもらわないと困るんだよ」 


 頭を掻きながら感心したようにそう言うと嵯峨はそのまま立ち上がった。


「隊長……大丈夫ですか?顔色悪いですよ」 


 いつの間にか自分のデスクに戻って仕事を続けていたアンが青い顔の嵯峨を見上げた。


「大丈夫だろ?俺はこう見えても不死人だぜ。医者のお世話になることなんて無いよ。それに食べた数なら、不死人じゃない神前の方が上だ。あーあ、胃がもたれる……これなら1年間絶食させられたアメリカ軍の生体実験施設での生活の方がマシなくらいだ」 

挿絵(By みてみん)

 嵯峨はそう言い残すと、いつもの飄々とした足取りより少しだけ重い足取りで部屋を出て行った。


「アン。悪いが急須の中を代えてくれないか?」 


 誠はアンに対して少しは先輩らしくしようと威厳を込めてそう言ってみた。


「了解です!」 


 誠の言葉に椅子から跳ね上がったアンは、そのまま誠に笑顔を浮かべて急須を持って部屋を出て行った。


「ふう、カウラさん。さすがにあれだけ甘いものを食べ続けると腹が膨れますね。さすがの僕でもお腹いっぱいですよ」 


 これで最後にしようと誠はおはぎを口に運んだ。さすがに口の中も甘ったるくなって嵯峨の気持ちも理解できるような気分だった。


「今、女将さんはあっちの部屋に居るんだろ?だったら食べるのはやめてしばらく休めばいいのに。無理して食べるとまた吐くぞ」 


 カウラもさすがに甘さにやられたようで、明らかにペースを落として一個のおはぎをゆっくりと食べ続けていた。

挿絵(By みてみん)

「まあ、あっちはこの程度では足りないくらいなんじゃないですか?アメリアさんは甘いものには目が無いですからね。まああの人は確かに大柄ですけど『ラスト・バタリオン』だからあまり食べませんが、甘いものは別腹みたいですから」 


 その名前を聞くとカウラもアンも納得したように頷いた。


「確かにな、いくら『ラスト・バタリオン』が少食とは言え、アメリアならあれくらいの量は食べるだろう。私もまだまだ行けるぞ」


 そう言って『ラスト・バタリオン』としては例外的な大食漢であるカウラはおはぎを食べ続けた。その様子を見て誠はさらに胃のあたりに違和感を感じるようになっていった。ただ、カウラは戦闘用人造人間『ラスト・バタリオン』としては多少の調整が必要という理由で覚醒が遅れた後期型個体であり、その原因の一つがその人並外れた食欲にあることを誠は知っているだけにカウラの言葉にはただ苦笑いを浮かべるしかなかった。


「おう、元気しとったか?」 

挿絵(By みてみん)

 そう言いながら急須の茶葉を取り替えてきたアンに続いて撮影を終えていつものどう見てもやくざとしか思えない紫のスーツに黒いネクタイに赤いワイシャツ姿の明石清海中佐が部屋に入ってきた。その大柄な割にまるで借りてきた猫のようにおとなしく開いていた丸椅子に腰掛けた。


 部屋の空気が一段うるさく、そして明るくなったように誠には感じられた。


「どうじゃ、神前……だいぶ堂に入ってきたみたいやな。ホンマええこっちゃええこっちゃ」 


 急須のお茶を替えてアンが気を利かせて明石がここに残していった大きな湯飲みに茶を注いでいた。


「そんなこと無いですよ……クバルカ中佐の訓練についていくのがやっとで……最近はかえでさんまで法術格闘の訓練に参加して来るので本当にギリギリの精いっぱいと言うのが現状です」

 

 そう言う誠の言葉には嘘は無かった。ガラの悪い小学生にしか見えないランだが、戦闘訓練においては言うことはすべて理にかなっていて新米の自覚のある誠にはその全てが為になるように感じていた。さらに『甲武の鬼姫』の実の娘であるかえでは法術師としては誠よりもさらに上を行き、それまで訓練に付き合ってくれていた嵯峨の娘の茜とは段違いの展開の早さを持ち味にしていて、パワー重視の技が多い誠にとっては超えなくてはならない壁と言えた。

挿絵(By みてみん)

「まあワシは人を鍛えるとか言うことは苦手やった。そもそも操縦方法さえ覚えれば後は敵陣に突入すればええっちゅう特攻崩れのワシに人を教えるなんて言う立派なことがでけへんことは最初から身にしみてわかっとる。それにワシはどこまで行っても地球人や。法術なんというもんとは全く縁のない人間やからそちらの方の訓練は無理や。その点、ここにはクバルカ先任やかえでや茜がおる。それにアンやいざとなったら隊長まで居るんやで?成長せんでどないすんねん。今がギリギリや?ええやんか。そのギリギリを乗り越えてこそ人は成長するもんやで。明日になってみ、昨日のギリギリが今日の楽勝や。それが訓練ちゅうもんちゃうやろか?ワシも軍に戻ってきてシュツルム・パンツァーのパイロットを始めたころはそうやった。ワシは三十になってからやったから神前よりもっと辛かったで。きばりや」 


 明石は大きな湯飲みを、リンの机の上に置いた。


「それよりも今の仕事の渉外担当本部長なんていううちや公安機動隊や法術特捜ばかりじゃなくて、場合によっては東和警察や各国の軍や警察の責任者と法術犯罪の情報に関して交渉するなんて言う仕事は現場上がりの明石中佐の方が大変ではないんですか?調整担当って同盟軍とか政治部局とかに顔を出さなければいけないわけですから。現場にいるより後方支援の方が気苦労が絶え無くて大変でしょう」 


 久しぶりの上官の姿に笑顔を浮かべながらカウラが訪ねた。


「そうやねん。ワシは元々現場の方が水が合う(たち)やってつくづく思うとる毎日や。本局は戦場の薄汚い雰囲気とは無縁で居住性はええねんけど、なんか居づらいちゅうかー……何をしたらええかわからんちゅうか……まあ今はとりあえず頭を下げるのが仕事みたいなもんやからな。警察も軍も結局は組織や。組織っちゅうもんはその組織の面子(めんつ)を第一に考えてその構成員は動く。その行動理論はやくざも役所も民間企業も同じや。ただ、役所には権限があり、民間企業は法に反しなければ誰も何にも言わん。要するに損しとるのはやくざだけや。そんな薄ら笑いのワシに会いに来た担当者を見るたびに闇市で拳銃片手にチンピラぶちのめしていた時代が懐かしく感じるわ。それにワシはこのなりやさかい皆怖がりよるねん。ワシは坊主の息子やで。大学でも仏教を専攻した仏の道に通じた仏のような人間や。なのにみんなワシを見ると仁王様にでも会うたみたいに震えとるのが嫌でも分かるのが辛いんやわ。もっとまっすぐ顔を見て話をしてくれんとまとまる話もまとまらんで、ホンマに」 


 そう言って剃りあげた頭を叩きながら明石はいつもの豪快な笑い声を上げた。


「いつも思うんですが……私達、こんなことしていて良いんですか?例の『厚生局違法法術研究事件』以来仕事らしい仕事なんて何一つしていないじゃないですか?」 


 その質問は誠の口ではなくカウラから発せられた。トレードマークのサングラスを直す明石はそのまま視線をカウラに向けた。


「なんでやねん?ワシ等なにか間違うたことしとるか?司法局本局は何の指示もワレ等には出しとらんで?」 


 不思議そうに明石のサングラスの中の目はカウラを見つめた。その切り替わりに戸惑ったカウラは誠の目を見た。


「日常的に任務と直接関係ない仕事ばかりやってて……東和の各軍や警察からいろいろ言われてるんじゃないかって思うんですけど」 


 誠がそう言うと明石は快活な笑い声を上げた。


「ああ、言うとるぞあのアホ共。田舎で農業や野球やって給料もろうとるとかな。まあそう言うとる奴のどたまぶち割るのがワシの仕事やからな。東和の軍はただ訓練と称して税金で無駄に射撃訓練してるだけやん。警察も東和が平和なのをいいことになんもせんと交番で座っとるだけで給料もらえるんやからいい仕事や。その点『特殊な部隊』は警察も軍も対応できないまさに『特殊な事態』に対応する即応部隊や。そんな事件、そうそう起こるわけないやろって。まあ、本気では殴らんで。仕事をしとらん無駄飯食いなのは半分は事実なんやから」 


「明石中佐。いくら愚連隊時代の血が騒いだと言ってもくれぐれも暴力沙汰は避けてくださいね。」 


 席からカウラが声をかけた。


「分かっとるわい!これはいわゆる言葉のあや言う奴や。ワシは御仏に仕える身じゃ。暴力なんてもんは嫌いやわ」 


 そう言い放って再び明石は笑い出した。だが手を出さなくても見たとおりの巨漢。そして勇猛で知られた甲武第三艦隊、通称『播州党』の元エースの明石ににらまれて黙り込むしかない東和軍や同盟の偉い人達の顔を想像すると誠は申し訳ない気持ちになった。


「お、おはぎ残っとるやないか。ワレ等もはよ食わんと、硬とうなってまうど。さあ、神前。ワレもそのなりやったら食うんやろ?聞いたところやと相当野球が出来るっちゅう話や。なら食って体をでかくして、速い球を投げれるようにせなあかん。食え!食え!」 


 そう言って明石は素早く自分の分のおはぎをくわえると次のおはぎを誠に差し出した。


「えーと……いただきます」 


 こわごわそう言うと誠はおはぎを受け取った。それを満足げに見ながら明石はすぐにもう一つをカウラに差し出した。


「ありがとう……ございます」 


 複雑な表情でカウラはおはぎを受け取った。それを見てそれまでおはぎに手を出さなかったアンが最後のおはぎを手に取った。


「やっぱり女将さんの料理はええのう。月島屋……久しゅう行っとらんからな……あそこのネギま……思い出しただけで食べとうなってきたわ」


 明石はいくらでも食べられると言うようにおはぎを次々と平らげていった。


「でも中佐ももうすぐ結婚でしょ?島田先輩の師匠に当たる人で遼北人民解放軍では『神の手を持つ技術者』とか呼ばれてる女性らしいじゃないですか?確かに遠いですけど遼北じゃ相当エリートでしょっちゅう東和に来てるって島田先輩が言ってましたよ。手料理位奥さんに作ってもらえばいいのに」


 誠は詳しくは聞いていなかったが、明石が婚約したと言うことだけは知っていた。


「なんやねん。そんな、ワレまでその話をするんかい!そんな話をするなんざ、島田のアホは相変わらず口の軽いアホやな。まず隊長がしばらくは司法局には何があるか分からん言うとるさかいそれまで式も何も決まっとらん。しばらくは独り身の孤独な生活やわ。一人暮らしも慣れとるさかいそうは気にならんが……明華さんの料理……食べられる身に早うなりたいのう。中華風の家庭料理というのも楽しみの一つやねん。なんでも明華さんは四川の流れと聞いとるから結構辛めの味付けになるかも知れへんけど、ワシは辛い料理は平気や。楽しみやなあ……」


 明石は少し照れながらそう言ってつるつるに剃り上げた頭を掻いた。


「でも、どこで出会ったんですか?相手は地球人ですか?遼北の人で四川系とか言ってたってことは地球の元中国の人ですよね?」


 好奇心から誠は話のしやすい気やすい明石に尋ねてみた。


「遼北は二十一世紀に二度起きた東アジア核戦争でほぼ絶滅した東アジアの中国出身者が起こした国や。地球人に決まっとるやろ。まあ、出会いのきっかけはアイツの弟子の内の一番の問題児がここに居るからやな……ワシと明華さんと話す時はいつも島田の馬鹿が話に出てくる。明華さんもアイツには散々苦労させられたらしいわ。今のクバルカ先任と変わらんな」


 相変わらずおはぎを食べながら明石はそう言った。


「一番の問題児……島田先輩ですか?」


 技官でこの『特殊な部隊』の問題児と言えば、ヤンキー島田以外に思いつく人物はいなかった。


「そうや。アイツの事で色々相談しているうちにな。島田のアホとワシは馬が合うんや。元々アイツは暴走族。ワシは愚連隊。東和と甲武で似たような生き方をしとったわけや。当然考え方も似とる。そこでアイツの扱いに困った明華さんがワシにアイツの事で相談する機会が増えて……その……まあ、流されると言うか、お互い知り合う必要がある言うことで会うことも多くなって……それで……」


 明石はまるで恋を知らない少年の様に顔を赤らめた。


「島田先輩が恋のキューピット役だったんですか。あの人もたまには役に立つことするんですね。お幸せになってくださいね」


 誠は心からの祝福を送るが、明石はただひたすら照れるばかりで、おはぎに伸びていた手も止まった。


「のろけ話はこのくらいにして。まあしばらくはこっちで年度末の査察に向けての段取り考えなあかんからちょくちょく邪魔させてもらうわ」 


 そう言って明石は口の周りのあんこをぬぐうと立ち上がった。


「すまんな、ちとしょんべんに行って来るわ」 


 明石が部屋を出たところで何かを見つけたというように、一瞬、嫌な顔をした後出ていく。その入れ替わりで入ってきたのがアメリアだった。


 アメリアはそのままポットに手を伸ばして、手にしていた美少年キャラが裸で絡み合うと言う誤解を招きかねない絵の描かれた自分の湯飲みに白湯を注いでいた。

挿絵(By みてみん)

「甘い!甘いわよ!いくら私が甘いものに目が無いと言ってもあの量は多過ぎよ!女将さんは整備班の間食禁止令が出てるのを知らないからあんだけ作って来たらしいんだけど……島田君は映画には協力しないと言うし、こんなにおはぎを女将さんに用意させた割に整備班員には食べさせないし。まったくとんでもないヤンキーだわね!」 


 白湯を飲んですぐにそう言うとアメリアは先ほどまで明石が座っていた丸椅子に腰掛けた。


「どうしたんだ?お前は甘いものは好きだろ?それとも宗旨替えでもしたのか?」 


 カウラはそう言いながら急須にお湯を入れた。アメリアはそれを奪い取ると湯飲みに茶を注いだ。


「何でも限度ってものがあるわよ!……ああ、こっちにも女将さんからのがあったのね。でも誠ちゃんは食べるからこのくらいなら楽勝でしょ?」 


 そう言ってアメリアは空の重箱を見つめた。


「そうでもないぞ。さすがの神前でもこの量は無理だ。それに必死になって春子さんに良い顔をしようとしていた隊長がへろへろになったからな。でも明石中佐が残ったおはぎを大半食べていった。一体、あの人の胃袋はどうなっているんだ?」 


 カウラの言葉にアンがうなずいた。


「ああ、あの人は問題外よ。あの巨体。クジラでも丸ごと食べるわよきっと。でも……さすがにねえ私もこれだけあると私でもお手上げだわ」 


 そう言いながらアメリアは手にした湯飲みをすすった。


「それにしても明石中佐はあっちでも半分以上食べていったし、こっちでも相当食べていったみたいだし。明華さんも大変な燃費の悪いものを掴まされたって訳ね。二人の家計のエンゲル係数が気になるところだわ」


 誠はアメリアが明石の婚約相手の名前を言うのを聞き逃さなかった。


「明石中佐の婚約相手って遼北人民共和国の人ですよね?明華って名前なんですか?」


 何気ない風を装って好奇心から誠はアメリアに尋ねてみた。


「そうよ。許明華大佐。なんでも遼北人民解放軍技術学校を十六歳で卒業した天才なんですって。でも、技術一本槍で融通が利かないから本国では煙たがれて東和陸軍に出向してた事が有るのよ。その時の教え子が島田君。島田君があのアホな頭脳で何とかシュツルム・パンツァーの整備を仕切れるようになったのは全部明華さんの指導のおかげ。今でも島田君は明華さんには頭が上がらないわよ。島田君にとっては生活指導はランちゃんで、技術は明華さんが師匠ってわけ。二人も怖い先生が居るんだもの。多少はマシになってもらわないと……でも相変わらずヤンキーだけど。この前もコンビニで万引きして捕まってたし」


 アメリアは苦笑いを浮かべながら島田の師である明華について語った。


「明華さんの人柄についても知りたいんですけど。あの島田先輩が逆らえない人で、明石中佐と結婚する人って……どんな人だか気になるじゃないですか?」


 誠にとってあの巨大な大入道のような明石を好きになる女性の性格が気になった。


「そうね……まずは真面目。あの人がここに居たらこんな映画作れないでしょうね。仕事中は仕事をしていればいい、最小の努力で最大の成果を上げろって言うのがあの人のポリシー。そして奇麗好き。たぶんうちに配属になったら、茜ちゃん以上に隊長室に入り浸って、数時間に一回は掃除をやりかねないほどね。そして、好奇心旺盛……たぶんそこらあたりで完璧主義の自分には理解不能なヤンキーややくざに惹かれたのかも」


 アメリアはそう言って誠に笑いかけた。


「確かに真面目で効率主義で奇麗好きな人にとってヤンキーは理解不能な生き物ですからね。興味を持ったらとことん調べたくなるでしょう」


 まったく正反対の明華と島田を想像して誠は思わず笑ってしまった。


「まあ、島田君と明石中佐を明華さんが許せたのは清潔感はどちらもある方だからかもね……あれで二人とも不潔だったらたぶん近付くことも無かったでしょうに……でも明華さんもあんなどう見てもやくざが旦那で本当にいいのかしら?確かに街を歩いてもあのやくざが怖くて因縁をつけてくる人間は誰も居ないでしょうけど。脳内はやくざで中身は『人外魔法少女』のランちゃんなんか見た目が8歳女児にしか見えないからよくロリコンの人に声を掛けられるから迷惑だってこぼしてたわよ」


 そう言ってアメリアは静かにお茶を飲んだ。


「清潔感ですか……僕も気を付けます」


「気を付ける?誰に嫌われないように?かえでちゃんは……あの人は汚いのが好きな人だから……それともかなめちゃん?あの子も掃除をしない人だし……じゃあ、カウラちゃん?」


 アメリアはニヤニヤしながら誠を上目遣いで見つめてきた。


 誠はその視線をまともに浴びて、思わず湯飲みを持つ手に力を入れた。


「なんだ?私も清潔感は大事だと思うぞ」


 誠が誰に気を付けているかを話していたアメリアにカウラがそう答えた。


「なるほど……誠ちゃんにとって西園寺姉妹は眼中に無いわけね……もしかして私の為に清潔にしてほしいの?それだったらうれしいなあ……私も着るもののセンスとかは私自身がオタクの自覚があってまったくお金をかけてないから別に気にしないけど最低限清潔ではあって欲しいと思うわね。結婚相談所でもオタクって言うと大体清潔感ゼロの人が多いのよね……でもそれはこっちからお断り」


 そう言うアメリアは乙女のような笑顔を浮かべて誠を見つめてきた。誠はその視線をまともに浴びてドギマギして目を逸らした。


「アメリア。妄想は止めておけ。神前は一般論を話しているだけだ。そうだろ?神前」


 カウラが気を利かせて誠に向けてそう言った。


「そう言うことにしておいてください」


 かなめとかえでが眼中に無いなどと言った覚えのないことをアメリアに言いふらされてはたまらないと誠は慌ててそう言い訳した。



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