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遼州戦記 司法局実働部隊の戦い 別名『特殊な部隊』と魔法少女  作者: 橋本 直
第十四章 『特殊な部隊』の暴走

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第52話 凝り過ぎた設定

「明石は相変わらずでかいねえ……それにしても明石とかなめ坊か……すごい組み合わせだな……元やくざと現役SM嬢。なんだかうちが『特殊な部隊』と呼ばれる理由が良く分かってきたよ。まあ、ランはランでやくざの組事務所に住んでるし……俺は……もう3か月もアパートに帰ってない。もうあのアパート引き払うかな?俺の蔵書を置いてあるだけだもんな、あそこは。電気もガスも水道も止まりっぱなしだから、たとえ帰ってそれらの滞納金を払ったとしてもとても住める状態じゃないしね……そんな俺が一番特殊か?まあそれもなんとなくわかる」 

挿絵(By みてみん)

 嵯峨はそう言ってニヤリと笑った。


 画面は銃を取り上げて再びかなめのいた場所に照準を合わせる明石の姿があった。


『あなたは……なぜ機械帝国のことを?あなたは……魔力も無いのになぜ?』 


 小夏の肩に飛び乗ったグリンを明石が見つめた。


「それよりこの奇妙な動物に突っ込むな、俺なら。どう見てもおかしいだろ?こっちの方が。なんで誰も不思議に思わないの?そっちの方が俺は不思議だよ。こんな動物がいるような惑星の話なんて俺は聞いたことが無いよ?見ている人も何でこれを普通に受け入れちゃうの?理解できないな」 


 そう言いながら嵯峨は明らかに無理をして再び挑戦するようにしておはぎを口に運んだ。


「新さん、お嫌いでしたか、甘いものは……もしかして迷惑だったかしら……」 


 明らかに顔色の悪い嵯峨を見て春子はそうつぶやいた。


「いやあ、そんなこと無いですよー。僕は大好物ですから……おはぎ……」 

挿絵(By みてみん)

 明らかに春子に気を使っている様子にカウラと誠は苦笑いを浮かべると再び画面を覗いた。


 答えることもせず明石は小夏に近づいた。明らかに変質者とコスプレ少女と言うシュールな絵柄に突っ込みたいのを我慢しながら誠は画面を見つめていた。


『知っている人は知っているものさ、どこにでも好奇心のある人間はいるものだからね』 


 明らかに関西弁のアクセントで明石は無理やり標準語をしゃべった。誠はとりあえず突っ込まずにそのまま黙っていた。


「やはり明石中佐は無理して標準語をしゃべってらっしゃるんですね。あの人の関西弁はクバルカ中佐が来る前もうちの店が気に入ってくれたのは良いんですけど時々言ってることが分からないくらい関西弁が凄かったですから。あの人も東都の人間が関西弁を話すとすぐわかるとか言ってましたから。抜けにくいんですね、方言って」


 春子はそう言って無理に標準語をしゃべろうとしている明石を笑った。 


「春子さんからもそう見えます?そうですね、アイツは産まれは鏡都なんですが、播州コロニー群暮らしがかなり長かったって聞いてますからね。だから本来は標準語……というかバリバリの江戸弁でべらんめい口調のはずなんですけど、前の戦争で鏡都には相当嫌な思いが有るんでしょうね……今では完全に話せなくなったとか笑ってましたよ。俺の親友にも播州コロニーの荘官をしている武家貴族が居るんですがあそこの出身者の訛りはなかなか抜けませんよ。アイツ……甲武海軍の第三艦隊の提督をしている赤松っていう男なんですけど……本当に凄いからな。特に怒り出すと俺にはアイツの言ってることがまるで分らなくなる。というか明石も鏡都の水には合わずに播州のやくざ稼業が奴には身の程に会ってたってことなのかもしれないね」


 明石と同じ甲武軍からの出向の嵯峨はそう言って苦笑いを浮かべた。誠達が画像を鑑賞していた間も一人作業を続けていたカウラは大きく息をしてそのまま一度立ち上がり、再び椅子に腰掛けた。


『でも、あなたは魔法を見ても驚かなかったじゃないですか。この世界の人がそんなに簡単に魔法を受け入れるとは思えないんですが』 


 グリンの言葉に明石はにやりと笑って禿頭を叩いた。


『確かにそうだ。俺はある人物から話を聞いてね』 


 明石の言葉で誠はまもなく自分の出番があるとまたAD扱いのパーラが自分を呼びに来るのではないかと思った。


「そのある人物が神前君……でもどう見ても……プリンスには見えないけど……どっちかというと自分で強くなっていく庶民出身の勇者の方が似合ってるわね。ああ、これ貶してるんじゃなくって誉め言葉よ」 

挿絵(By みてみん)

『マジックプリンス』と言うなんのひねりも無い役名の誠の顔を春子はまじまじと見つめた。その吐息がかかるほどまで接近して見つめられて、誠は鼓動が早くなるのを感じたが、春子はまるで関心が無いというように再び画面に目を移した。


『いずれ君達と一緒に戦う日が来るだろう。それまではお互い深いことは知らない方がいい』 


 そう言うと猟銃を握り締めて明石は立ち去った。


「明石の奴。本当に何度聞いても。あいつ、昔っから本当に訛ってるな。アイツはさっき言った忠さんが播州コロニー軍で拾ったって言ってたけど、播州で相当苦労したんだね」 


 そう言いながら嵯峨がお茶をすすっていた。その時、再び詰め所のドアが開いた。そこに立っていたのはADであることにもう違和感を感じなくなってきたパーラだった。彼女は完全にアメリアのアシスタントに成り下がっていた。それはいつものことなので、誰も気にしなかった。


「ああ、春子さんここでしたか。アメリアが呼んでますよ。例の恥ずかしい格好……止められなくってすいません!」 


 パーラもアメリアのお守りは慣れたもので、自然と口をついて的確な指示が出せるようになっていた。それと同時にアメリアの暴走をいつも止められない自分の無力を感じる心が彼女を支配するようになっていた。


「パーラさんが謝ることじゃないわよ。じゃあ、新さん、ごめんなさい。じゃあ行ってきますわね」 


 そう言って春子は立ち上がった。


「隊長……」 


 視線で春子を追っていた嵯峨は、誠に呼ばれて頭を掻きながら嵯峨は口の中のあんこを飲み込んだ。嵯峨はなんとかあんこを飲み込むと再び出がらし同然の茶が残る急須に手を伸ばした。


「隊長、口を漱ぐのはやめてくださいよ」 


 仕事をしていたカウラの警告が飛んだ。苦笑いを浮かべながら嵯峨はそのまま口に入れたお茶を飲み下した。


「あのー……」 


 春子達と入れ替わりにドアから顔を出したのは西とひよこだった。誠達はその顔を見てそれぞれ時計に目をやった。


「ああ、もう昼か。弁当当番ご苦労さん」 


 十二時を少し回った腕時計の針を確かめながら嵯峨は大きなげっぷをした。乾いた笑いを浮かべながら誠はおはぎに手を伸ばした。


「ああ、西!見ての通りだからな昼の買出しはうちは要らないだろう。少なくとも私には無理だ」 


 先ほどパチンコアプリをしながらも絶え間なくおはぎを口に運んでいたカウラが苦笑いを浮かべながら答えた。西はかえでのデスクに置かれた重箱を見ながら呆れつつそのまま入ってきた。いつもの仕出しの弁当屋が臨時休業した際の昼の買出しは誠が隊に配属になったころから各部の持ち回りで行われるようになっていた。以前はそういう時、隣の菱川重工の食堂を使えたらしい。だが嵯峨が味にぐだぐだ文句をつけたせいで、司法局関係者は出入り禁止を食らっていた。仕出しの弁当屋が先日食中毒を出して営業停止処分を受けていたのがとどめとなっていた。


「僕好きなんですよ、おはぎって」 

挿絵(By みてみん)

 そう言いながら西はすぐにおはぎに手を伸ばして食べ始めた。嵯峨は見るのも苦手なおはぎが減っていくのがうれしいようで、西のおいしそうな顔を笑顔で見守っていた。


「ああ、神前さん何を見ているんですか?」 


 西は不思議そうに誠の端末が黒く染まっているのに目をつけた。


「あれだよ、例の映画」 


 誠は多忙を理由に映画製作に協力的で無い整備班の一員として、あまりこの映画の製作状況に詳しくない西にそう説明した。


「ああ、クラウゼ中佐の奴でしたっけ?でもまあ撮影機材も見ましたけど、あれは……アメリアさんも大変ですよね。しかし、班長も少しは協力してあげればいいのに。だって彼女のサラさんが出てるんでしょ?いくらこんど面倒な機体が搬入される準備が有るって言ってもその面倒さゆえにすぐに出撃なんてことは無いんだから。そんなにムキになって協力拒否なんてしなきゃいいのに」 


 そう言いながら今度は西が春子が居た場所に陣取った。アメリアが二人を出さなかった理由がサラが書き上げた西をモデルにした作品にあることを誠は知っていた。


 再び画面に目を戻すと、そこには鎖に縛られたかなめの姿があった。誠とカウラは目を見合わせた。間違いなくかえで達が動き出した。


『うわ!ふっ!』 


 鞭打たれるかなめの声が端末から響くのを見てひよこが誠の端末に視線を向けた。


「西!貴様には買出しの任務があるんだろ?」 


 カウラは思い出したようにそう言った。仕方なく西は追い立てられるように立ち上がった。


「すみません」 


 頭を下げながらひよこは誠の端末の画面に目をやった。


 その画面の中でかなめは拷問を受けていた。リンの鞭が容赦なくかなめの露出した肌に次々と打ち込まれる。


『よくもまあ恥ずかしげも無く生きて帰ってこられたものだな!所詮貴様は不良品と言うことだな!それなら不良品らしい扱いをしてやる!破壊される前にそのことを思い知るがいい!』 


 メイリーン将軍ことリンがまさにそれを証明するかのようにかなめから取り上げた鞭を振り下ろしていた。かなめの悲鳴とにんまりと笑うリンの表情が交互に映し出された。見た感じはほぼ全裸と言っていい姿のリンが胸をはだけたかなめを鞭打つ姿は魔法少女物と言うよりもSMセクシービデオのようにも見えた。


「これは……ちょっとやりすぎじゃあ……これじゃあこの映画の趣旨を誤解する人が沢山出そうな気がするんですけど……というかこれを子供の前で見せるんですか?それ以前に本当に市の担当者の許可が出るんですか?」 


 誠は苦笑いを浮かべた。これでは一部の父親たちがどう反応していいのか分からなくなるのではないか、と危惧した。


「これはちょっと地上波じゃ放送できない内容ですね……アメリアさんならレーザーディスクで買いそうですけど。それじゃあ、失礼します!」 


 画面のあまりに壮絶な様に引き時を悟った西とひよこはそのまま部屋を出て行った。


「賢明な判断だな。これ以上異常な画面を純粋なひよこの目に晒すのは良くないことだ。西はさすがに気が回る」 


 西が消えたのを見てそう言うとカウラは再びおはぎに手を伸ばした。


 画面の中ではリンによるかなめへの折檻が続いていた。


 最初は苦痛に身もだえていたかなめだが、次第に的確に秘部を襲うリンの鞭のせいで性的に興奮してきたのかいやらしい喘ぎ声をあげるようになっていた。

挿絵(By みてみん)

「サディストの人ってマゾの気が有るって言うけど……西園寺さんにもマゾの気が有るのかな。西園寺さん、だんだん気持ちよくなってきてるみたいですよ……」


 誠はかなめに聞かれたら一撃で射殺されそうなことを平気で言いながらいつまでも続くおはぎの山を処理するため口に放り込む作業を続けていた。



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