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遼州戦記 司法局実働部隊の戦い 別名『特殊な部隊』と魔法少女  作者: 橋本 直
第十四章 『特殊な部隊』の暴走

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第49話 魔法少女に詳しすぎる青年

 画面が撮影スタジオから切り替わり、倉庫の中が映し出された。アメリアが監督気取りでメガホンを握って仁王立ちしている見学席では、かえでとリンが真剣な顔でモニターを覗き込んでいた。撮影の自分たちは、バーチャル側にいる。二人がバーチャルで再現されるだけなら、本来は着る必要もない衣装を着込んでいる事を見て誠は二人は完全にやる気なんだと理解したが、遠目から見ても完全に子供に見せてはいけないような衣装の二人の姿に二人の変態性を改めて誠は理解した。

挿絵(By みてみん)

「なるほど……そうなんですか。さすが先輩は詳しいですね。僕も出たかったなー……今朝もひよこさんとお話しした時になんで僕が出なかったのか聞かれたんですよ。アメリアさんに出るなって言われたからって答えたらひよこさんきっと僕が出たら先輩を僕に取られるとアメリアさんは思ってるからだと言うんですが……見たかったですか?僕の魔法少女姿?」 


 アンはストーリーについていくのがやっとと言う感じで興奮した表情を浮かべながら誠にそう言った。そして付け加えられた何気ない言葉で思わずあまりにも似合いすぎるアンの魔法少女姿を想像している自分に気が付いて激しく首を横に振ってその意識を消し飛ばした。


「詳しいというか……なんと言うか……趣味のフィギュアを作ってるうちに原作にも凝り始めて見るようになっちゃって……それにこの部隊に来てからアメリアさんに僕がこれまで聞いたことが無いような変な魔法少女モノのアニメを山と見せられたから上級者向けのアニメの知識が身に着いちゃったんだ。それとたぶんアメリアさんが案を起用しなかったのは嫌がらせじゃなくってたぶん市の関係者にアンが注目されてアンが『男の()』だということがバレてこれ以上うちが『特殊な部隊』扱いされるのと面倒だって隊長辺りがアメリアさんに言ったからだと思うよ」 

挿絵(By みてみん)

 どう説明すれば魔法少女志願の『男の娘』であるアンを傷つけないで済むか緊張して言葉を選びながら誠はそう返した。そんな誠に向けてアンは本心から魔法少女の衣装が着たかったというように胸の前で手を合わせて上目遣いに誠を見上げてきた。誠はアンの潤んだ瞳に見つめられて脂汗を流しながらそんなアンを一瞥した後、画面が切り替わるのを感じて誠は目を自分の端末のモニターに戻した。


 場面が変わった。画面は漆黒に支配されていた。両手を握り締めて、まじめに画面を見つめるアンに圧倒されながら誠はのんびりと画面を見つめた。

 

 画面に突然明かりがともされた。それは蝋燭の明かりのように見えた。


「機械帝国なのに蝋燭って何時の時代なんですか?確かに甲武は宇宙でシステム管理しなきゃ生きていけないような環境でも電気もガスも無くて水道は村で共同のものを使ってるって西が言ってましたけど……ここは東和ですよ?そんな甲武の事情なんて観客の誰も知らないんですから。いくら演出としては面白いからってアメリアさんやりすぎですよ」 

挿絵(By みてみん)

 さすがに飽きてきた誠だが、背後のアンに押し付けられて椅子から立ち上がることができないでいた。


『メイリーン!機械魔女メイリーン!』 


 その声はかえでの声だった。誠はいかにも何か自分に質問してきそうな雰囲気を漂わせているアンを無視することに決めて画面に目を映した。


『やはりこのキャスティングはこの時点では成功だな。美貌で冷酷な世界の支配者。確かにそんな役が出来るのはうちではかえでさんしかいないもんな。西園寺さんだと迫力は十分だけど観客のお子様とかは本気で泣き出しそうだし、カウラさんだと機械的すぎて『冷酷さ』を観客に訴える力が足りない。アメリアさんは……あの人はそもそも『支配者』と言う言葉が似合わないからな。ただ、かえでさんが変態に走らなければという前提がすべてに優先されるけど』


 誠はアメリアの見事なキャスティングにさすが魔法少女アニメにも造詣が深いアメリアの趣味性に感心していた。


 黒い人影の前でごてごてした甲冑と赤いマントを翻して頭を下げる凛々しい女性の姿が目に入った。胸のあたりはギリギリふくらみを感じさせる部分まで露出していて、腹の鍛えられて割れた腹筋と引き締まったウェストがかえでが女性であることを見る者に印象付けた。かえでは、この格好は上映段階で市から指導が入りそうだと分かっていながらセクシーすぎる鎧姿すら自分の美しさを表現するにはもっと攻めてみた方が良いと何度も誠に言ってきたのを思い出して苦笑いを浮かべた。


『は!太子。いかがなされました』 


 声の主は明らかにかえでの副官、渡辺リン大尉のものだった。そして画面が切り替わり、青い筋がいくつも描かれた典型的な特撮モノの悪者メイクをしてほくそえむリンの顔がアップで映った。こちらの衣装はいつの間にか誠のデザインしたものに変更が加えられてさらに露出の多いどう見ても嵯峨が喜びそうな風俗雑誌のグラビア人気風俗アイドルのような格好に見えた。ほとんど乳首を隠しているだけのブラジャーとも呼べないような胸当てに、下半身もほぼTバックと言って良いようなパンティーとも呼べない代物を着用していた。そして、刺青の様に刻印された機械をイメージしたタトゥーがリンの裸体感を薄めるようにデザインされていたので、見ようによってはその模様が衣装のように見えないことも無い。誠が推測するに市の担当者には、アメリアはリンの格好は全裸にマイクロビキニなどではなく衣装でタイツを着ていると主張するつもりのようだった。リンの裸を何度かかえでに強制的に見せられたことがある誠には、それがタダのペインティングであることはすぐに分かった。


『余の覇道を妨げるものがまた生まれた。それも貴様が取り逃がした小熊のいる世界でだ……この始末、どうつける?』 


 誠はそんなかえでの声を聞きながら隣で画面を注視しているかえでに目を移した。言葉遣いやしぐさはいつものかえでのような中性的な印象を感じる。その色気のある流し目とキラリと光る口元の白い歯はそんな気のない女性でも十分に惹きつけるだけの魅力があるのだろうと誠は思ってかえでがかつて24人の婿養子を迎えている若く美しい人妻をピンポイントで狙って誘惑して自分のクローンを産ませるという大問題となった『マリア・テレジア計画』が噂だけではなく事実なのだろうと確信した。


『確かにこの人なら女子高とかじゃ王子様扱いされるよな。『マリア・テレジア計画』もたぶん本当の話だぞ。そう言えば時々クバルカ中佐がかえでさんの追っかけの女子高生をホテルに連れ込もうとしたかえでさんが県警のお世話になったことがあったとか愚痴ってたな。しかも警察があまりにいつものことだから今回ばかりはどうしようもないと言い始めたところをいつも持ち歩いている『関の孫六』で黙らせたとか言ってたな。警察を日本刀で脅すって……やってることはかえでさんと大して変わらないな、中佐も。うちはどんどん犯罪者集団になっているな。たぶん豊川署ではもうすでにうちを『非公認指定暴力団』認定してるだろうな』


 誠はかなめから聞いたその事後処理をしたランの語るかえでの完全に『アウト』な行動に誠は言葉を失っていた。そしてそれをもかわいく見えるランの『武勇伝』と言う名のより『アウト』な行動に背筋の凍る思いだった。


「さすがアメリアさんは目ざとい。これでまたネットとかでかえでさんが自分の美貌がネットに入り浸る女子達の話題になるぞ。東和では今度はどんな浮名を流すことになるんだ?僕の『許婚』と言ったり、『僕は君を上回る魅力を持つ男性は今後出会うことはないだろう』とか言いながら、自分の女性との浮気はアリだとかえでさんは真顔で言うからな……実際。リンさんやかえでさんの屋敷のメイドたちとはとても人には言えないような変態行為に浸ってるらしいし。ああ、それと西園寺さんとも関係があるな……性的な意味で』 


 そんな妄想をしている誠に気づかずいつの間にかタバコを吸い終えて戻って来たかなめはただひたすら画面にかじりついていた。


『は!なんとしてもあの小熊を捕らえ、いずれは……』


 機械魔女メイリーンこと渡辺リン大尉は必死に頭を下げた。かえでの声の影だけの王子はうなずいていた。二人が並ぶと、まるで悪の軍団というより、深夜帯にしか流せない宣材写真のようにしか見えなかった。


「それにしてもメイリーンよ、やはり貴様は美しいな」


 かえではそう言うとさわやかなほほえみをリンに向けた。ここで軽く短い金色の髪を軽く手をやり静かにリンの顎に手をやる一連の動作はまるで伝説のナンバーワンホストのそれを想像させるような見事さだった。


「いえ、黒太子様ほどでは……」


 そう言うと二人はゆっくりと近づいて行った。かえではリンの胸に手を乗せた。


「メイリーンよ、やはり美しい。さすがは余の最高傑作……その甘美な唇を味合わせてもらおうか……」


 そう言うとかえではリンを抱き寄せディープキスをしながらリンの股間に手を伸ばすのがあまりに自然だったがその自然さゆえに誠は驚いて立ち上がった。

挿絵(By みてみん)

『ストップ!かえでちゃん!何する気!公衆の面前で!ポルノ禁止!かえでちゃんは意地でもこの作品をポルノにしようとしてるでしょ?そんなにこの作品を上映禁止にしたいの!ストップ!ストップ!』


 アメリアの叫び声が響いたが、かえではその言葉をまるで聞く様子も無く自分の秘部にリンの手を導いた。


 見つめあい、お互いの胸を触り口づけをかわすかえでとリンの世界はまるで百合モノセクシービデオの導入部のような様相を呈していた。


「ああっ」


 かえでが快感から思わず声を漏らした。その表情は次第に赤みを帯びたものに変わる。


『新藤さん!強制終了!これ以上は子供に見せられないわよ!かえでちゃんも!本当にポルノは禁止だって何度言えば分かるの?性的描写は東和ではうるさいの!これは全年齢対応作品にするの!そんな18禁展開は求めてないの!衣装を着ている間もさんざん言いきかせたはずじゃないの!』


 怒りに震えるアメリアの叫び声とともに画面が暗転した。


「予想通りの展開だな。日野少佐と渡辺大尉がキャスティングされた時からこうなることは見えてたんだ。あの二人が絡むと絶対に18禁になる。アン、お前がキャスティングされなかった一番の理由はそこだ。お前が出るとかえでさんとリンさんだけじゃなく意地でも僕との絡みをお前が要求するのは間違いない。そうなるとセクシービデオのニューハーフものになっちゃうことは見えてるんだ。だからお前は出られないんだ。魔法少女は清純じゃなきゃいけないとと僕は常に言っている。日頃の生活を考えればアンが清純な『男の娘』で無いんだから当然だ。『夜間中学のついでにホテル』じゃなくて、『ホテルのついでに夜間中学』って平然と言うだろ?そんな好きモノを市の映画で主要キャストに使えって言うのか?無理だ。アメリアさんも危なくてお前を出せなかったんだ」


 誠はそう言い切って、アンに視線を向けた。しかし、アンは誠の耳に息を吹きかけるタイミングを計っているという全く反省の色が無いところに誠はアンの底知れぬ恐ろしさを感じていた。さっきまで真面目に作品を見ていたはずなのに、そういうことだけは忘れないのだから、やはりアンは油断ならない。


「僕達もあの二人みたいなキスをしてみませんか?僕達ならもっと素敵なものが出来るような気がするんです……嫌ですか?」


 誠はうんざりしたような目でまったく誠の警告を聞いていなかったらしいアンを見るとそのまま暗転した画面に視線を固定した。そして今後、アンのそんな提案を誠は断固として無視することを決意した。


 しばらく暗転していた画面が再び点灯した。場面は同じ場面。アメリアに説教されたらしく、かえでとリンは大人しく初めの場所に立っていた。


 二人もさんざん説教されたらしくお互いに距離を取っていかにも悪の首領とその腹心と言うべき距離感を保って悪役らしい笑みを浮かべて見つめあっていた。二人とも不満そうではあったが、さすがにさっきほど露骨に触れ合うつもりは無いらしかった。


 このいつもべったりな二人が距離を取っている状態が二人の変態性を理解している誠にはあまりに奇妙に見えると首をひねった瞬間だった。


『へえ、オメーにそんなことが簡単にできるってのか?捕虜に逃げられた上にわざわざすっとんで帰ってきた癖によ!』 


 突然の乱暴に響く少女の声。陰から現れたのは8才くらいの少女。赤いビキニだか鎧だか分からないコスチュームを着て、手には鎌のような長い得物を手にした少女に光が差した。そのどう見ても小学生低学年の背格好。そんな人物は隊には一人しか居なかった。


 光の中から現れたその小柄な影は、幼い体つきのくせに、不思議なくらい場を支配して見えた。

挿絵(By みてみん)

「クバルカ中佐……なんてかわいらしく……」 


 アンは誠がどう頑張っても自分を襲わないことに諦めたようだった。そして画面に大写しになった変わり果てたランの姿を見て感動したようにそうつぶやいた。ただ誠はランの強さをイメージした衣装だったのでアンとはデザインの感覚が理解しあえないことをこの言葉から分かった。


「おい、これがかわいいのか?アン、お前の神経、やっぱりどうかしてるぞ」 


 画面の中ではさっきまでこの部屋で文句をたれていたランが不敵な笑みを浮かべながら現れた。誠は耳には届かないとは思いながらすっかり脇にへばりついて画面をのぞき込んでいるアンにそう言ってみた。


 確かにちっちゃくて鎌を持っているところなどはいわゆる『そっち系』の犯罪者予備軍の男子たちの熱い視線を浴びそうな雰囲気があるのは確かだったが、誠はその手に持っているのが本来作り物の鎌ではなく本当に人が斬れる鎌であった方が自然だというランの日常を知っていたので、その犯罪者予備軍が欲望を満たそうとした瞬間に死を迎えることを想像して苦笑いを浮かべた。


『ほう、亡国の姫君の言葉はずいぶんと遠慮が無いものだな。美しく愛し合う二人の間に入り込むとは空気も読めない無粋な存在だと言うのに……まあ、私は心が広い。今回は許してやろう』 


 そう言ってそれまで悪の首領っぽい影に下げていた頭を上げると、機械魔女メイリーンは皮肉をたっぷり浮かべた笑いでランを迎えた。


「おっ!ここでも見れるのか?」 


 誠は突然後ろから声をかけられてあわてて振り向く。そこには隊長の嵯峨がいつもの眠そうな表情で立っていた。


「ええ、まあ一応……西園寺さんが設定をしてくれましたから」 


 誠は照れながら頭を掻いた。嵯峨はそのままかえでの空いている机に寄りかかると誠達の後ろに陣取ることを決めたように画面を見つめていた。


「なんだかなあ。かえでとリンの格好、なんとかならんかったの?これじゃあ市役所の連中からまた文句言われるよ?文句を言われるのは俺だよ?これを作るのには市の文化部の予算が使われてるの。市の予算でポルノを作る馬鹿がこの世のどこにいるよ。アメリアの奴、少しは俺にも配慮してくれよ」 


 嵯峨はかえでとリンの際どい衣装を見て思わずそう愚痴をこぼした。誠はそのまま画面の中でお互いににらみ合うリンとランの姿を見ていた。かえでの机にもたれた嵯峨は、まるで映画館の後方席にふらりと座った常連のように気の抜けた顔をしていた。


「いや、さっき完全にポルノな展開をアメリアさんが止めたばかりです。あの二人をキャスティングした時点でこの程度で済めば十分満足できるレベルなんじゃないですか?」


 そんな言い訳がましい誠の言葉に嵯峨は大きくため息をついた。


「じゃあ、市の担当者に呼び出された時はかえでとリンをキャスティングしたアメリアも連れていくことにしよう。そして、あの担当者がアメリアに説教をしている間は俺はタバコでも吸ってればいいわけだ。うん、これは良いアイディアだ」


 常に『逃げること』を考えて戦う指揮官である嵯峨は完全に全責任をアメリアに押し付ける気満々でそうつぶやいた。


『亡国?忘れたな。アタシは血の魔導師。機械帝国の世継ぎである黒太子カヌーバ様に忠誠を誓う者。テメーのような小物とはスケールが違うんだよ!』 


 そう言ってランは余裕の笑みを浮かべた。その手に握られた鎌を掲げて機械魔女メイリーンににらみを利かせた。


『ふっ、ほざけ!カヌーバ様のご寵愛はこのメイリーンが独占している。好みも心も体もすべてカヌーバ様のものだ!カヌーバ様に心も体も隅々に至るまで愛し愛されたことのない貴様に何を言う権利が有ると言うんだ!』 


 機械魔女メイリーン将軍はわざとランから視線を外してつぶやいた。誠はリンの台詞が完全に台本の意図から外れたアドリブであることをすぐに理解した。言っていることはかえでとリンとの私生活であってそんなところまで暴露することを要求するような台本を要領が良くて多少は隊長である嵯峨を立てることができるアメリアが書くわけが無かった。


『黒太子、カヌーバ様!アタシにグリンと言う小熊とその眷属の討伐の命令をくれ!あの程度の雑魚なら瞬殺してやる!さあ!命令しろ!』 


 一瞬、リンの暴走アドリブに苦い顔をした後、ランはいつもの、かえでに対する上官口調で黒太子役のかえでに向けて偉そうにそう言った。


「あいつ本当にぶっきらぼうなしゃべり方しかできないんだな。それにこれじゃあどっちが偉いか分かんないじゃないの。子供が見たら混乱するよ……コイツは所詮は捕虜として捕まってたのが戦うことを強制されてる設定なんでしょ?なんでこんなに好戦的で偉そうなの?まあ、俺も遼南内戦でアイツを捕虜にした時もアイツは常に偉そうだったからな。でも頭が鳥頭だから色々揶揄(からか)って遊ぶのにはちょうど良かったけど」 


 そう言いながら嵯峨はポケットからスルメの足を一本取り出し口にくわえた。


「あの、隊長。それはなんですか?」 


 思わず誠はくちゃくちゃとスルメの足を噛んでいる嵯峨に声をかけた。


「ああ、これか。茜がね、タバコは一日一箱って言ってきたもんだから……まあ交換条件だ。その分食費が浮く。つまみも浮く。羨ましいだろ?映画は何かを食いながら見るものだろ?」 


 そのまま嵯峨はくちゃくちゃとスルメを噛み続けた。誠はその視線の先、ドアのところの窓から中を覗いている和服を着た女性を見つけて嵯峨の肩を叩いた。


 嵯峨の顔にその人物は分かっているという明らかにいつものだらしない笑顔ではない妙に気取った雰囲気が漂っているのを見て誠は中年のいやらしさにうんざりする思いだった。



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