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遼州戦記 司法局実働部隊の戦い 別名『特殊な部隊』と魔法少女  作者: 橋本 直
第十三章 『特殊な部隊』とクランクイン

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第45話 始まってしまった撮影

 機動部隊の『詰め所』と呼ばれる事務作業の机に倒れ伏した。8キロがきついんじゃない。昨日の『件』がきつい。隊に入ってすぐは20キロ走って平気だったのでたった8キロで済むなら体力自慢の誠にとってたいしたことでは無かった。


 実働部隊隊員には特に任務が無い限り毎日8キロのランニングが課せられている。元々高校時代に野球部のエースだった誠からすれば軽いランニング程度のものだったが、今日のそれは明らかにつらすぎた。昨日アメリアとかなめと話し合ってどうなったのか分からないが、カウラがニコニコしながら誠の隣を走った。サイボーグであるためランニングに参加しないかなめは走り終えた誠にスポーツ飲料の缶を差し出してきた。


「誠ちゃん!ちょっと!」 

挿絵(By みてみん)

 そして突っ伏せる誠に笑顔のアメリアがいつの間にか背中に立っていて、彼の頭を軽く叩いた。


「なんですか?アメリアさんまで……今は勤務時間中ですよ……こんな時間までアメリアさんのお遊びに付き合う義務は僕にはありません!どうしてもって言うのならこの訓練メニューを課してるクバルカ中佐に言ってください!今日はクバルカ中佐の機嫌がよかったから8キロで済んだから余裕があるって言いたい顔ですね!その顔は!でもいつもの20キロと今日の8キロ!どっちが辛いか今のアメリアさんには分からないでしょうね!『モテない宇宙人』である遼州人の僕がモテるようになるかもしれない瞬間だったんですよ!それを邪魔した張本人であるアメリアさんの我儘に付き合うために僕を連れ出すなんてことを許すとは思えないですけどね!」 


 面倒くさそうに頭を上げる誠だが、一瞬でアメリアの表情が変わったのを見てびっくりして立ち上がった。カウラはその光景を見ながらただ困ったような笑みを浮かべていた。


「何よその顔。まあ良いわ。ちょっと来てくれない?ランちゃんは意外と単純だからその辺は私の策で何とかしたのよ♪伊達に次期司法局実働部隊隊長の椅子に一番近い女と呼ばれている私を舐めないでよね」 


 ランが説得済みと言われるとこれ以上どんな理屈をこねようが誠にはアメリアに勝てる見込みはない。アメリアの本当かどうか不確かな言葉に促されて誠は連れ出された。廊下を進み、アメリアはいつもは倉庫になっている部屋をノックした。


「神前が来たのか?いいぞ、入っても」 


 中からの声の主は意外にも嵯峨だった。そのままアメリアはドアを開けて中に入った。倉庫扱いだったこの部屋にはカプセルのようなものが並んでいた。倉庫の埃っぽい匂いの中で、カプセルだけが不自然なほど白く光っていた。その中の一つから嵯峨が顔を出している。その頭にはヘルメットのようなものをかぶっていた。


「隊長も覚悟決めてくださいよ。一応この話は隊長が去年のあの時映画の話を断っていれば無かった話なんですから……それに隊長はうちの大黒柱でしょ?確かに見た目は誠ちゃんと大して変わらないように見えるけど映画俳優だってどう見ても二十代の見た目で実は四十過ぎてる人だっていっぱいいるじゃないですか!それが早くとは言え『大黒柱』の役をやる!これは当然の話じゃないんですか?」


 アメリアはそう言って明らかに嫌がっている嵯峨を説得しようとした。 


「分かったよ、やれば良いんだろ?まったく……あん時に市の担当者にもう少し強く言っとくんだった……アメリアの我儘に付き合わされるのは御免だよ。それに俺は確かに結婚したことがあるのは事実だけど自分を『大黒柱』だなんて東和のお父さんたちが自慢しているような立場に立ったことは一度だってないよ?結婚してもカミさんのエリーゼは好き勝手やってたし、復員して6歳の茜はもうすでにしっかりしてて俺のだらしなさを一々指摘してきて最終的には現在のように給料のほとんどを取り上げられて月3万円の生活費と管理費込み2万円のボロアパートに押し込められてるんだよ?そんな俺に『一家の大黒柱』なんて経験もしたこと無い役をやれとアメリアは言うんだ。まったくひどい話だよ」 


 そう言って嵯峨が明らかに自棄になってカプセルに横たわった。それを見て安心したようにカウラはカプセルの縁に立った。


 誠が目を凝らすと他にカウラとなぜか小夏までカプセルの中で顔に奇妙なマスクのようなものをつけて横になっていた。

挿絵(By みてみん)

「なんです?これ。変な形のカプセル……これで撮影をしようって言うんですか?本当にこれに入っても大丈夫なんですか?怪しげな洗脳と化されないでしょうね?」 


 おっかなびっくり誠が自分向けと思われるカプセルを指差した。


「地球から秘密裏に取り寄せた撮影機材よ!地球の映画って要するに見てくれの良い『超富裕層』のセレブの子女たちが自分の人気を確保するために出来もしない演技を上手くごまかすためにこういった機械を使って『市民』向けのテレビ番組でヒロインとか演じてるのよ!そんな演技の知識なんかまるでゼロのどんな大根役者でもAIで調整してまるで往年の名俳優の演技が再現されるようなシステムで映画を撮ってるの!その人気を生かして、後々は議員になり、大臣まで務める。そんな地球圏の支配システムを支えている最終兵器ともいえるのがこれ!これなら誠ちゃんみたいな演技のド素人でも東和の演技は俳優顔負けの絵が取れるの!いっそのことそのまま政界進出でもしてみれば?私は応援しないけど」


 アメリアは得意げにカプセルを叩いて自慢して見せる。誠は地球の映画やドラマにはまるで関心が無かったのでただ呆然と聞き入るばかりだった。

挿絵(By みてみん)

「まあ、登場するのはそのセレブ達だけであとは全部AIの俳優が演じてくれるから地球圏の芸能界と言えば人間は『超富裕層』の人間だけ。あとはまあ……役人や軍人の子女もポルノに出て庶民に人気が出たら端役の濡れ場で出られるって感じよね、地球圏は。あそこのテクノ封建制を支える秘密兵器を目の前にしてるのよ!もっと感動したような顔をしても良いんじゃないの?」


 地球圏は甲武のような身分制度はないが生まれながらにすべての人間の人生がその生まれで決まるという話は何度か聞いていたので少しばかり誠の心もざわついた。『超富裕層』は代々『超富裕層』としてその国の政治と経済を支配し、それに忠誠を誓った役人や軍人が東和では彼らを見下して『騎士階層』と呼んでこちらもほぼ世襲でその地位を維持している。そして大多数のただAIのあるデータセンターの掃除や建設現場などでのフィジカルAIでは採算の合わない分野に臨時で雇われるときと、戦争の時に職業軍人の『弾避け』の臨時兵士として雇われる『市民』は飢えるか飢えないかのギリギリの環境でただ『超富裕層』の権威を確たるする為の選挙の『票』としてのみ生存を許されている。そんな『市民』の不満を紛らわすための装置である『超富裕層』の資本の支配下にあるテレビで活躍するのも結局は『超富裕層』。『国民総中流』が当たり前の東和共和国出身の誠には理解不能な地球圏の支配システムの一部だというアメリアの説明を聞くと目の前のカプセルがなんだか実におぞましいものに誠には見えてきた。


「それに対していまだに手作りにこだわってわざわざセットを作って20世紀末風の映画を作るなんて馬鹿みたいなことをしているのはこの東和ぐらいのものよ。まあ、他の元地球人の国でもセットを作る予算が無いから地球からこれの廉価版を買い付けてるけど。これは地球製のこの東和でもアイドルがデビューなんかで酷い演技を見せたら人気が落ちるからってことで確保している特別製なんだから!私のコネを馬鹿にしないでね!」


 誠はアメリアが元落語家でその時の姉弟子が放送作家という業界人なのでそれくらいのコネは会っても当然だと納得した。ただ、アメリアが島田のような密輸行為に手を染めていなかったことだけが誠の気休めになった。


「それに今回の映画もセットなんて作る予算なんて市からはもらって無いからバーチャルで全部やろうと言うわけ。すべてはこの設備から脳を通してバーチャルの世界で演技をする。セットも演技力もいらない便利な機械。最近の地球は進んでるわね、感心しちゃうわ。まあ、あの人達はそのままその脳に嫌でも張り付いてるこんな機械が無いと見てくれが良いだけの有名人に投票して自分が支配される環境に満足しているんだから飢えて死のうがまさに『自己責任』で何も言うことはないわね。私は御免だけど」


 アメリアは地球圏と東和を褒めているのか貶しているのかよくわからないいつもの感情の読めない笑顔を浮かべたまま話を続けた。


「地球圏じゃあ、メインのいずれは政治家にでもなろうってことで有権者に顔を売るために自慢の見てくれを晒したい『超富裕層』のセレブの美男美女のキャラ以外は全部AI。台本も下手くそな『超富裕層』の落ちこぼれの文学かぶれが描いたのをAIが加工してちゃんとした作品に仕上げちゃう。だから『超富裕層』の絶対的支配が永続する……地球圏の民主主義なんて要するにお金と知名度がすべてでしょ?」 


 得意げに目の前の誠には怪し気にしか見えない機械をアメリアは得意げにそう説明する。


「まあ、東和でも売れなくなったアイドルとか俳優が政治家に転身するなんてよくある話ですからね。まあ、その点は遼州人も地球人も同じなんですね。選挙は知名度がすべてですから」


 誠もアメリアの言うことに自分なりの社会知識で納得して見せた。


「そこまで分かってるならさっさと協力する!誠ちゃんは今回一のかっこいい王子様きゃらなんだから……」


 そう言ってアメリアは誠にそのどう見ても棺桶にしか見えないカプセルに横たわることを強制しようとした。昨日かなめに聞かされた撮影方法を思い出して納得するがいま一つぴんとこなかった。


「バーチャルでやるんですか……脳に電極刺したりしないんでしょうね?それに地球のデジタル技術でしょ?東和共和国自慢の『アナログ式量子コンピュータ』を使った方がいいものが作れるようなって……この国は意地でもありとあらゆる分野で二十世紀末日本を再現しようとしていますからね。まあ、いいですよ。それとバーチャル酔いとか変な効果は無いんでしょうね?」


 誠は自分の乗り物酔い体質に慣れているのでバーチャル酔いが最初の恐怖と感じられた。

  

「おい、神前。プロの技術に文句をつける気か?今時バーチャル酔いなんて時代遅れだぞ。何百年前の話をしてるつもりだ?地球じゃこれが常識だ。東和が遅れてるだけなんだ。これさえあればあんな大道具やメイクなんかの人員が削減出来て安く映画が作れるんだ。この国でも大根で知られる見てくれだけの俳優以外にもこれを導入すればよっぽど俺達裏方の手間が省けるってもんだ」 


 そう言うのは奥にモニターをにらみつけながら座っているおそらく『釣り部』の隊員の見慣れない男が座っていた。さすがに誠は悟って小夏達の様子を観察した。アイマスクのようなものをつける彼女達の口元が笑っているように見えたので誠は覚悟を決めるとアメリアが指し示すカプセルに寝転んだ。


「この人は新藤中尉……艦船管理部の警備担当よ……元傭兵で平時には映像作家をしてたのよ。傭兵と言うことで地球関連の企業からの依頼も受ける事があって地球の最新鋭の映像関連技術にも精通しているのよ。さすが、釣り部には『その道のプロ』が集まっているのね……義体のメンテだけじゃなくて釣りの道具まで揃えられるなんて隊長も良い人材を集めたものね。私としては大歓迎だわ!」


 アメリアは得意げにひげ面の新藤を紹介した。


「元傭兵……戦闘用義体のサイボーグ……よろしくお願いします」


 静かにうなずく新藤を見て誠は正直恐怖を感じた。元傭兵と言うだけあって迫力のあるひげ面にはそれ相応のすごみが感じられた。見た感じだけでは東和で一般的な健康保険が利く一般的な量産型義体のどこか作り物めいた見た目よりかなめの特注義体に近いレベルの出来の義体はどう見ても人間にしか見えない。


 ただ、その誰が見ても『怪しい人物』の雰囲気に誠はあの地球製のカプセルと同時に新藤の存在にも嫌な予感しか感じなかった。


「はいこれ」 


 そう言ってアメリアがヘルメットを差し出した。徹夜明けと言うことでいつもより明らかに疲れているようで、笑顔がどこと無くぎこちない。


「分かりましたよ。やればいいんでしょやれば。クバルカ中佐の許可が出てるということなら部下としては従うしかないですからね」 


 誠はそのまま体をカプセルの中で安定させるとヘルメットをかぶった。蓋が閉まると、狭い内部に自分の呼吸だけがやけに近く響いた。それに付属した視界を確保するためのバイザーをおろすとそこはどこかで見たような部屋だった。


『これ僕の部屋じゃないか!いつの間にこんなものを……アメリアさんクバルカ中佐の御供とか言って何度かうちに来てるってはなしだったよな?今度いつ来たか母さんに確かめてみよう』 

挿絵(By みてみん)

 確かにこれは実家の誠の部屋だった。きっちり本棚には誠が作った美少女キャラのフィギュアと大量の漫画が並んでいた。


「ああ、誠ちゃんの実家の部屋を完全再現してるのが不思議なの?この前ランちゃんに頼んで撮影のために自宅スキャン済みなのよ。それより始動するわよ!」 


 アメリアの声が響くとカプセルのふたが閉まった。そして誠の意識はバイザー越しの見慣れた部屋に吸い込まれていった。


 誠の着ている服が寝巻きに変わった。


『このまま開始5分で着替えて食堂に下りる』 


 目の前に指示が入った。昨日の渡された台本を思い出し、カウラの幼馴染で大学に通うために下宿していると言う後付設定が加筆されたのを思い出しながら頭を掻いて見せた。


「凝りすぎでしょ、アメリアさん。確かにゲームの動画の多い作品でタイミングとかはうまいなあとデバッグの途中で思ってたんですけど……これは例の姉弟子の放送作家の人に助言されましたね?その人について僕もネットで調べましたけどかなり放送事故連発のバラエティーの企画とかしてた人ですよ……当然アメリアさんも……いや、アメリアさんが関わっている以上、よりひどくなって当然だな、うん」 


 誠はそう言いながら東都の実家と同じ間取りの部屋のベッドから起き上がり、かつてのように箪笥から服を取り出した。


『誠ちゃん。ちゃんと着替えるのよ』 


 天の声のように響くのはアメリアの声だった。誠は急かされるようにジーンズをはいてTシャツを着込んだ。そしてそのまま誠の実家と同じ間取りの階段を下りて出番に向けて食堂の入り口で待機した。


 視界に入る台本にはすでに小夏、そして嵯峨が食堂で食事をしていると言う設定が見えた。カウラは炊飯器からご飯を盛っているということで誠の視界の外にいた。誠はそのままカウントが0になったのを確認して食堂に入った。


「お兄ちゃん遅いよ!」 


 そう小夏が叫んだ。白を基調としたいつもの簡素な中学生の制服姿とは違い、高級感のある刺繍があちこちに施された学費の高そうな私立中学を思わせる制服を着こんでいた。


「ごめんな、ちょっと……うわっ!」 


 誠は台詞を読むのをやめて叫んだ。小夏、嵯峨、そしてカウラ。そして自分の席にも明らかに不穏などんぶりが置かれていた。


 嵯峨がその中身を摘み上げた。芋虫である。どんぶりの中にはうごめく芋虫がいっぱいに盛られていた。丼の表面で、白く太った幼虫がぬらぬらと身をくねらせていた。


 誠が知っているは二で言うと一番近い生き物は『カブトムシの幼虫』である。その動き、のたうち回る感じ、そして色艶。誠は子供の頃それがかっこいいカブトムシになるのを楽しみにしたことは合ったがそれを口に入れようと思ったことは一度も無かった。


 そんな誠の思いを無視するように小夏は恐れおののく誠から関心をどんぶりに移すとそのまま一匹の芋虫を手にしてそのまま口に入れた。

挿絵(By みてみん)

「なんですか?これは!こんなの朝食に食べるんですか?ここはどこの国ですか?遼帝国ですか?ベルルカン大陸のどこかですか?」 


 思わず誠は絶叫した。だが、小夏も嵯峨もカウラも何も言わずにどんぶりの中の芋虫を手に取ると口に運んだ。


 三人の顎の動きからしてそれほど固くなく、味も悪くなさそうだが、そもそも口の中で生きたまま『カブトムシの幼虫』がうごめいてそれを噛みしめてその内臓が口の中で広がることを想像すると誠には寒気しか感じられなかった。


「なにって……リョウナンヘラクレスオオゾウムシの幼虫だろ?遼帝国の山間部ではよく珍味として食べられてるぞ。食べ慣れると癖になる。いいもんだな……遼帝国ではこれを生で食べるのが貴重なたんぱく源なんだぞ?遼帝国生まれ育ちの茜の助手のラーナも好きだって言ってたからお前さんも一口どうだ?」 


 嵯峨は何事も無いように一匹の芋虫を取り出すと口に運んだ。


「これってグロテスクだけど癖になるんだよね……あの茜警部の助手のラーナさんがこれが好きなんですか?あの人あんまりうちに飲みに来ないのは鶏肉よりこっちの方が好きなのかもしれないっすね……でも意外と癖になるかも」 


 同じように小夏は口に二匹の芋虫を入れて頬張った。カウラもおいしそうに食べ続けた。


「待った!タンマ!」 


 叫ぶ誠に目の前の下宿先の家族達が冷たい視線を投げてきた。


『どうしたの?誠ちゃん。何か不都合が……』 


 アメリアの明らかに笑いをこらえている声がさらに誠を絶望のどん底に突き落とした。


「これ……マジっすか!勘弁してくださいよ!あんなの食べるくらいならリンさんみたいに人体から出るカレーによく似たものを食べた方がマシですよ!虫を食う家族?そんなの東和じゃ普通じゃないですよ?ここは遼帝国じゃなくって東和です!観客も全員東和の市民です!こんなものを朝から旨そうに食べたりなんかしません!そんなにアメリアさんは出だしで受けを狙って何が楽しいんですか?」 


 ほとんど半泣きで誠は叫んだ。誠は乗り物酔いは克服できたがゲテモノ食いはやはりハードルが高かった。


「仕方ないわね。でもこれをクリアーできないと出番が少なくなるわよ……ちょっとしたお茶目で観客を惹きつける狙いだったのに……」 


 アメリアは誠の反応が予想通りだったので最高の笑顔を誠に向けてそう言った。


「出番はどうでもいいから!これ何とかしてください!こんなもの食べたくありません!ここは東和です!遼帝国じゃないんです!」 


 どんぶりを指差す誠にテーブルに付く人々が冷たい視線を送った。


「予定通り誠ちゃんは寝坊と言うことで……カウラちゃん。B案で行きましょう。じゃあ誠ちゃんはしばらく休みね……まあ、誠ちゃんの慌てふためく様を見られたのはそれでそれということで」 


 アメリアは誠の反応は全て予定通り問うように淡々と指示を出した。


「アメリアさん、わざとやってるでしょ?僕がこんな反応するのも全部わかっててやってるでしょ?この台本書いたのはアメリアさんですものね!」


 アメリアの言葉とともに視界が黒く染められた。誠はバイザーをはずしてそのまま生暖かい視線をにやけるアメリアに向けた。


「ああ、そういえば誠ちゃんは遼南レンジャーの資格は持ってないわよね?まあ大体の遼州圏の国ではレンジャー資格試験の時にはあれを食べるのは通過儀礼みたいなものだから……私もその資格は持っててその際に食べたけど……でも結構おいしいのよ?」 


 そう言ってアメリアは自慢の紺色の長い髪を掻き分けた。そのまま誠は仕方がないというように立ち上がろうとした。そしてすぐに先ほどのうごめく芋虫を頬張る嵯峨達を思い出して口を押さえた。


「ああ、誠ちゃんも見たいんじゃないの?そのバイザーでうちの新藤さんのカメラと同じ視線でストーリーが見えるはずよ。それを見ながら話の流れに付いてきて頂戴。メインのイケメンキャラがかっこよく登場しないと物語が盛り上がらないから」 


 気が進まないものの誠は嬉しそうでありながら押し付けがましいアメリアの言葉に渋々バイザーを顔につけた。



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