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遼州戦記 司法局実働部隊の戦い 別名『特殊な部隊』と魔法少女  作者: 橋本 直
第七章 『特殊な部隊』と選挙戦

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第22話 仕事中は仕事をしましょう

「あのなあ、仕事中はちゃんと仕事してくれ。特にアメリア。オメーは一応佐官だろ?それに『運用艦』って名称だが、『ふさ』は一応巡洋艦級だ。ゲルパルト連邦共和国宇宙軍が戦後再軍備の威信をかけて開発したローレライ級高速重巡洋艦二番艦の艦長様なんだ。多くの部下も抱えている身だ。それなりに自覚をしてくれよ……一々アタシにこんなこと言わせんじゃねーよ」 

挿絵(By みてみん)

 そう言うとランは再び端末の画面に目を移した。そんな言葉に耳を貸すアメリアでは無いことはランも重々承知していたので、アメリアが何の反応も示さないことに特に関心を持っていなかった。


「ランちゃん、これも市民との触れ合いと言う同盟機構の理念に沿った内容の活動の一環なわけ。つまり仕事の内よ。一生懸命になるのも当然でしょ?まあ、いいわ。つまり票が多ければいいんでしょ?それと……このままだと際限なく票が膨らむから範囲を決めましょう。とりあえず範囲は東和国内に限定しましょうよ。島田君を放っておくと技術部の士官達のハッカー集団をたきつけて地球圏まで介入してあそこの各国政府管理下のSNSにまで介入して票数が百億単位の勝負なんていう馬鹿を通り越してもう病気の世界に突入しそうだから」 


 アメリアにランの忠告を聞く気などさらさらないことは明らかだった。そしてサラに馬鹿騒ぎの範囲を限定することを提案した。誠も技術自慢の為にペンタゴンの核のスイッチまで平気で侵入したと自慢している5人の技術部情報部の士官達が面白半分にどんな暴走を繰り広げるかということを考えると国際問題になりかねない他国までの票取り合戦に発展するのは避けてもらいたかった。

挿絵(By みてみん)

「はい。それで行きましょう。東和国内ならどこでも良いのね、任せといて!そっちの方がうちにとっては有利なんだから!整備班が取引しているメーカーや商社の数を舐めないでよ!アメリアの顔が利くのは軍や警察関係とアダルトゲームの製作の時に付き合ってる人達と元落語家時代の芸能関係者くらいでしょ?確かにその時代の若手芸人でメジャーになってる人もいるらしいからその人たちに投票を呼び掛けられると痛いのは確かだけど、うちの付き合いのある重機械メーカーや素材メーカーは従業員の数は何処も万単位。勝負は見えてるわよ!」 


 アメリアとサラを囲むサラを支える島田と、嫌々それに従っている情報将校達は、アメリア側とひとしきりにらみ合ったあと、それぞれの持ち場へ散っていった。


 サラは偉そうにふんぞり返り留守型の背後にはこちらには重機械メーカーや素材メーカーとの付き合いがあるという自信が見て取れた。

 

 芸能界や軍警察に顔が利くアメリア相手でも、企業票の数では負けない。


 従業員数はどこも万単位……勝負は見えていた。サラの背中はそんな数の暴力を物語っていた。


「何やってんだか。アイツ等任務に関係ねーこととなると異常に燃えやがる。まったく困ったもんだぜ。普段の何気ない業務にもこれくらいの情熱を持ってくれるとアタシも楽が出来るんだがな。アメリアが見落としたサラの作った報告書の誤字とか直すの面倒なんだよ……情報士官の連中もアタシが何度言っても暇になると政府関係のデータに不正アクセスした上で、わざと証拠まで残してホワイトハッカー気取りで遊んでいやがる。それはその機関から頼まれたらちゃんとした業務だが、いくら不正アクセスが可能なネットワークの欠陥を指摘してやるのが善意の行為でも、頼まれずにやったら犯罪以外の何物でもねーじゃねーか。その度にアタシは電話でそこの偉いさんからごちゃごちゃ愚痴を言われるんだ。こんな生活まっぴらだ」 


 呆れたように一言つぶやくとランは再びその小さな手に合わせた特注のキーボードを叩き始めた。


『心配するなよ。オメーの女装はアタシも見たくねーからな。アタシはサラに加勢する。島田が同じ立場で会ってるのは所詮課長クラスまでの営業担当者だ。それ以上のクラスになると必ずアタシが同席して話を聞くのがうちのルールだ。それに対してアタシが装備の発注やなんかでメーカーの本社に出向くと対応に出て来るのはどの会社も最低執行役員クラスになる。役員が音頭を取って全従業員にメールを返信することだけを命じる程度のことなんてどこでもやってくれるわな。特に菱川重工とのつなぎは任せとけ。あそこは社長以下全取締役とは名刺の交換もしてるし、隣の工場の工場長で執行役員の武田さんとは月に一度は飲みに行く関係だ。役員連中も05式導入の際に何度も顔を合わせてるから、ただ名刺を交換しただけの関係じゃねーんだ。そん時のコネを使う。まー見てろ。悪いよーにはしねーから』 

挿絵(By みてみん)

 誠は思わず画面を二度見した。


 この部隊で、自分の女装を本気で止めようとしてくれる人間がいるとは思っていなかった。


 誠の端末のモニターにランからの伝言が表示された。振り向いた誠にランが軽く手をあげていた。


「なんだか面白くなってきたな。とりあえず宇宙全体にうちの『特殊な部隊』ぶりが広まらなくなったのは残念だが……まあ、この国じゃあその別名の方が有名なんだから仕方ねえやな」 


 そう言って始末書の用紙を取り出したかなめがサラに目を向けた。


「おい、神前。賭けしねえか?アメリアが勝つかサラが勝つか。トトカルチョだ」 


 誠の脇を手にしたボールペンでつついてきたかなめが小声で誠に話しかけてきた。


「そんなことして大丈夫ですか?時々職場で高校野球とかを対象にトトカルチョやって摘発されたとかテレビで見ますよ。うちは警察でしょ?名目上は。そんなところがトトカルチョなんかで摘発されたらマスコミの良い餌ですよ」


 誠はギャンブルと言えばカウラなのになぜかノリノリのかなめにそう言い訳して逃げ切ろうとした。 


「大丈夫な訳ないだろうが!トトカルチョはパチンコと違って違法行為だ!そんなこと見逃がせると思ってるのか!それにこんなことを始めたら趣味に相当な金額をつぎ込んでいるアメリアがその金を手に入れるために八百長を仕込むに決まっている!そんな不正が想定されるようなギャンブルなんて認めるわけにはいかない!」 


 当然誠をいつでも監視しているカウラはそう叫んだ。カウラにとっては隊でギャンブルが行われることよりもそれに不正があることの方が問題のようなのが誠には何ともパチンコ依存症のカウラらしいと思えるところだった。


「おい、西園寺。……今のは冗談だよな?冗談じゃなかったらそのまま県警に通報して留置所にブチ込むぞ」


 顔を上げたランはいかにも騒ぎを楽しんでいるかなめを脅迫するようにそう恫喝した。


 だが、それも扉を開いて入ってきた嵯峨の言葉に誠が口を開いて、かなめもカウラも間違っていると言おうとする言葉は打ち消された。


「はい!サラが勝つかアメリアが勝つか。どう読む!一口百円からでやってるよ!」 

挿絵(By みてみん)

 メモ帳を右手に、左手にはビニール袋に入った小銭を持った嵯峨が大声で宣伝を始めた。誠は嵯峨がジャンルを投票で決めると言い出したのはこれがやりたかったわけで、その勝った金で月3万円生活の少しでも足しにしようと考えているのが見え見えなのが情けなくなってきた。誠は、ここまで来るともう怒る気力すら湧かなかった。


 この男は最初からこれをやりたかったのだ、と今さらのように思い知らされた。


「じゃあ、サラに30口行くかな……アメリアの奴はもう弾切れだろ?島田がメーカーに圧力をかけるとなれば勝負は決まったようなもんだ」 


 そう言ってかなめは財布を取り出そうとした。ランは当然厳しい視線でメモ帳に印をつけている嵯峨を見つめていた。


「ちょっと……隊長。話が……」 


 帳面を手にして出て行こうとする嵯峨の肩にランは背伸びをして手を伸ばした。


「ああ、お前もやるんだ。ラン、お前さんはどっちにいくら賭ける?お前さんの尊敬している将棋指しの坂田三吉も賭け将棋で大阪一番になったからあれほどの名棋士として歴史に名を刻んだんだよ。賭け事の一つくらい罰は当たらないどころか……月に一度賭場でサイコロ振ってる人間がこんなちんけな遊びに腹を立てたりなんかしないよね?」 


 嵯峨がそこまで言ったところでランは嵯峨から帳面を取り上げて出て行った。さすがの嵯峨もこれには頭を掻きながら付いていくしかなかった。


「じゃあここに本部を置くわね……技術部の部屋だとサラが邪魔するから。それに運航部の部屋はパーラがかえでちゃんにぞっこんの部員数名と語らってベルばら押しなのよ。もうまったくこんな時に造反なんてパーラもやってくれるわね。いつもあんなに大事な仕事を任せてあげているのにその恩を忘れるだなんて、本当に恩知らずだわ!」


 再びの沈黙だが主のいないおそらくパーラに引き込まれて運航部に選挙事務所を構えているだろうかえでの第二小隊隊長の席を当然のように占拠して、アメリアが端末で何か作業をしているのが誠にも見えた。


 パーラの造反は単にアメリアの面倒ごとに巻き込まれたくない為にかえでのやる気を利用しているだけで要するに自分は今回はアメリアの無茶には付き合わないというポーズに過ぎないこともすぐに理解することが出来た。


「ふっふっふ……。はっはっは!」 


 アメリアが挑発的な高笑いをした。


『昼食の時にミーティングがしたいからカウラちゃんを連れてきてね。ああ、かなめちゃんは要らないわよ』 


「誰が要らないだ!馬鹿野郎!」 


 隣から身を乗り出して誠の端末の画面を覗き込んでいたかなめが突然叫んだ。隣で漢字を覚えるために辞書を引きながら新聞を見ていたアンもかなめの顔をのぞき見ていた。


「もういーや。お前等も好きにしろよ!アタシはもー知らねえ!どうにでもなれってんだ!」 


 嵯峨を引き連れて戻ってきたランは諦めたようにそう言った。そこでピースサインをした嵯峨が帳面を手に次のトトカルチョの売り込み先を探して去っていった。その様子を見ていらだったような表情を浮かべていたかなめの顔色が明るくなった。


「それってさぼっても……」 


「さぼってってはっきり言うんじゃねーよ。どうせ仕事にならねーんだからアメリアと悪巧みでも何でもしてろ!ただ言っとくけど神前の野郎の女装だけは上官命令として絶対認めねーからな!そんな気持ちわりーもん誰が見てーんだ!」 


 そう言ってランは端末の前に陣取ると報告書の整理を再開した。かなめはすぐさま首にあるジャックにコードを挿して何かの情報を送信した後、立ち上がっていかにも悪そうな視線をカウラに送った。思わずカウラは助けを求めるようにランを見つめていた。


「どうしてもランちゃんは私の邪魔をするのね……じゃあ、私はここじゃなくて独自の拠点を定めましょう!誠ちゃん行くわよ!」


 かえでの席を立ったアメリアはランをちらりと気にしながらそのまま誠に歩み寄った。


「アメリア、神前を連れていくのか?ならカウラもついてってくれよ。こいつ等ほっとくとなにすっかわかんねーからな。カウラなら常識が有るから信用できる。アメリアの暴走をなんとか止めろ。アメリアのことだから東和限定というさっき言ったルールの裏を突いて何か企んでるのは間違いねーんだ。それで後始末をさせられるアタシの身にもなってみろ」 


 カウラはランから無駄な仕事を頼まれて大きくため息をついてうなだれた。かなめとカウラは席を立った。かなめの恫喝するような視線に誠も付き合って立ち上がった。表を見た三人の目にドアの脇からサラが中を覗き込んでいるのが見えてきた。かなめが派手にドアを開いてみせるとサラが誠達に詫びを入れるように手を合わせた。


「済まない、神前。アメリアを止めることは出来なかった。何事も車の運転のようにはいかないものだな……」 


 運用艦『ふさ』操艦担当、ルカ・ヘス中尉。いつものように姉貴分のアメリアの暴走を止められなかったことをわびるように頭を下げた。


 アメリアは軽快な足取りでそのまま第一会議室のセキュリティを部長権限で解除して中に入った。一同もその後に続いて大きな会議室に入ってここに入った時点で、自分達がアメリアの『魔法少女』推し陣営に組み込まれたのだという事実に、誠はあらためて愕然とした。


 そのどさくさに紛れて、いつの間にか管理部で年末調整の事務仕事をしているはずの菰田まで混じっていた。


 一同はうんざりした顔で、その嫌われ者に視線を向けた。

 

「それより……菰田。オメエが何でこっちの陣営なんだ?どうせ島田への意趣返しがしたいだけだろ?それともパーラの所もかえでに美的センスがどうたらとか言われて追い出されたのか?行くところがねえんなら仕事でもしてろ。迷惑だ、帰れ!」 


 かなめはカウラの後ろにいる菰田に声をかけた。


「いやあ、あちらは居心地が悪くて。それにこちらの陣営にはベルガー大尉と言う立派なお方が居ます!その美しい姿はきっと映画になっても映えるでしょう!ですので、何とかお仲間に加えていただければなあ……と……何でもやります!お茶くみでも!肩を揉むのでも!なんでも命じてください!ですから……仲間に入れてくださいよ……」 


 そう言い訳する菰田だが、アメリアとつるむとカウラに会えるという下心が誠達には一目で分かった。いつもなら嫌な菰田がそばにいるだけで不快感をあらわにするアメリアも選挙戦がかなりの接戦となっているだけあってそんな事は言ってられない状況だった。アメリアは早速率先して部屋の隅に片付けられている端末の置かれたテーブルを並べ始めた。誠も仕方なくそれを手伝う。菰田もまたそれを手伝うが、一緒に来たかなめとカウラはただ腕組みをしてその様子を見守るだけだった。


「アメリア、貴様はこういう時は率先して動くんだな。いつもこうしてくれるとありがたいのだが……」 


 カウラは憂鬱そうにそう言った。


「失礼しまーす……」


 そう言って3名の運航部の女子士官がセキュリティを開けて会議室に入ってきた。この会議室のセキュリティ権限は部長にしかないので彼女達を呼びよせたのはおそらく今大スクリーンの調整をしているアメリア本人だろう。3人は確かアメリアから直接落語の稽古をつけてもらったりアメリアのコネでアメリアの師匠のテレビのバラエティー番組でもよく見かける女流落語家と食事をさせてもらったりなどアメリアに近しい人物でパーラを裏切ってベルばら選対本部と化した運航部の部屋を抜け出してきたのだろう。


「はい、誠ちゃん。そこに端末を置いて!菰田君のはもう少し奥……ってこれで少しは格好がついたわね」


 アメリアは誠、菰田と3名の運航部女子の手伝いで会議室を数分で選挙対策委員会のような雰囲気の場所に変えてしまった。


 端末に運航部のアメリアお気に入りの女性オペレーターが張り付いた。


「菰田君、今から菰田君に私のコネのある連絡先のデータを転送するからそこに片っ端から電話して!選挙戦の基本は電話攻勢!まずはそこからしっかりしたいのよ!」


 アメリアはそう言うと端末を取り出し菰田を見つめた。菰田は端末を取り出すとそのまま電話機の子機が置かれた席に座ってさっそく電話をかけ始める。


「なんだ、選挙事務所みたいで面白そうじゃねえか。各地の警察署や東和海軍の港に電話攻勢か?人海戦術は選挙の基本だからな……でも人数が足りなくね?菰田一人じゃ……つうか菰田の電話なんて普通の人は声を聞いた時点で切るぞ」 

挿絵(By みてみん)

 そう言ってかなめは、ホワイトボードに描かれた東和の地図を見ているアメリアに歩み寄った。

 

「やはり向こうの情報将校さんは手が早いわね。東部軍管区はほぼ掌握されたわね。中央でがんばってみるけど……ああ、かなめちゃんも手伝ってくれるの?かなめちゃんの電脳でコールセンターにハッキングしてAIのオペレータで一斉にかけてみれば効率的だと思うんだけど……」 


 アメリアはさらりとかなめ好みの違法行為を口にした。


「おい、連中の制圧の進行スピードから考えて完全にそれは違法なハッキングだな……ただ、こういうのは電子戦が苦手なアタシには良い訓練になる。付き合ってやるよ」 


 あっさりとしているアメリアにかなめはニヤリと笑った後そのままその近くの椅子に座り目をつぶった。たぶんどこかのコールセンターのAIに違法なハッキング行為を行っているのだろうと思うと誠はとんでもない事態になってきたことを理解し始めた。


 カウラは二人の前にあるボードを見ていた。


「相手は技術部のそれを特技としてうちに来た電子戦のプロだけあって情報管理はお手の物……かなり劣勢だな。何か策はあるのか?」 


 そう言うカウラを無視してアメリアは誠の両肩に手をのせて見つめた。そんなアメリアに頬を染める誠だった。そんな中アメリアはいかにも悔しそうな顔でつぶやいた。


「残念だけどやっぱり誠ちゃんはヒロインにはなれないわね……私の野望は一歩後退だわ」 


 アメリアは心底残念そうに誠を見ながらそう言った。アメリアが諦めてくれたことに誠は心の底から安堵した。


「あのー、そもそもなりたくないんですけど。僕がいつ魔法少女になりたいって言いました?僕は魔法少女アニメが好きなだけで魔法少女になりたいわけでは無いんです。魔法少女になりたいのはクバルカ中佐ですよ。あの人は仕事が終わった後あの魔法少女コスチュームに変身する法術を本気で会得できないか1時間くらい隊舎裏で練習してるって噂ですから」 


 誠はそう言うと頭を掻いた。そしてすぐにアメリアは女子隊員が手にしているラフを誠に手渡した。そこにはどう見ても小夏らしい少女の絵が描かれていた。だが、その魔法少女らしい杖やマントは誠にはあまりにシンプルに見えた。


「これは誰ですか?ちょっと地味ですね……これじゃあ視聴者は惹きつけられないと思うんですけど……」


 誠はアメリアの同人エロゲームの原画を担当している同人エロゲ業界では少しはその筋では知られた絵師でもあった。その絵師の勘が明らかに雑に描かれたキャラクターに自分ならもっと魅力的なキャラクターに仕上げられると言う自信を沸き起こしていた。


「私が描いた小夏ちゃんよ……彼女がヒロインと言う線で行こうと思うの。でも私の絵だと魅力が……もっと選挙民にアピールできるような絵が欲しいのよね……誠ちゃんにお願いしたいのはそちらの方なんだけど……」


 誠の問いにアメリアはあっさりと答えた。シンプルな線で描かれたラフは中学生とみるにはあまりに幼いように誠には見えた。だが次の瞬間、その雑な線と、魅力を出しきれていないデザインに、絵描きとしての誠の神経が反応してしまった。


 そこだけは絵師としての誠のプライドが見過ごせなかった。


「うちの行事にあのガキを巻き込むのか?後でどんな交換条件を出されるか分かったもんじゃねえぞ」


 かなめは小夏とは犬猿の仲なのであまり関わりたくないと言うようにそう言った。


「良いじゃないの……これもすべて町おこしの為よ。それにお店の宣伝にもなるじゃない?きっと本人も出演オーケーしてもらえるわよ」


 平然とそう言ってのけるアメリアにかなめは呆れたような表情を浮かべていた。


「小夏ちゃんを描いたんですか……アメリアさんの絵はそれなりに見られるけどエロが出過ぎててどぎついんで一般受けしませんからね。それに……ちょっと衣装が地味すぎやしませんかね?魔法少女でしょ?エロゲみたいに脱いでからが本番と言うわけじゃないんだから衣装が可愛くないと意味が無いですよ」 


 そう言った誠に目を光らせるのはアメリアだった。


「そうですね……清純派の魔法少女でしょ?主人公なんだから白をベースにもっとさわやかなフリルとかを付けてかわいらしくした方が良いと思うんですけど」


 絵が得意な誠だけあってあっさりとそう言ってのけたのをアメリアは見逃さなかった。


「でしょ?私が描いてみたんだけど誠ちゃんが来る前のエロゲの癖が抜けなくてちょっと上手くいかないのよ。そこで先生のお力をお借りしたいと……」


 誠の魂に火がついた瞬間だった。どうでもいい誇りが、誠の絵師魂に火をつけた。



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