胃痛の参謀
白亜の門の内側は、思っていたよりも静かだった。
静か、というより、音が抑え込まれている。門の外では霧と亡兵と太陽剣が遠慮なく騒いでいたのに、一歩内側へ入った途端、音の質が変わった。石壁が厚い。門扉が重い。空気が乾いている。外の霧を遮るために、城門そのものが巨大な防壁兼結界として作られているのだろう。
門の内側には、外門詰所らしき施設があった。
白い石造りの広い通路。左右には武器棚と補修用の資材。壁には種族ごとの身長に合わせたのか、位置の違う取っ手や呼び鈴がいくつも並んでいる。人間用、獣人用、ドワーフ用、ハーフリング用。奥の高い位置には、ドラゴニュートや翼人系のためと思われる踊り場まであった。
多種族国家という話は、やはり本当らしい。
だが、綺麗な理想郷とは程遠い。
武器棚の半分は空で、補修材は種類ごとにきっちり分けられているものの、明らかに数が足りない。壁際には応急処置用の布と薬草包みが積まれ、床には乾ききっていない血の跡がある。門番詰所というより、臨時の野戦病院と補給所と取調室を一緒にしたような場所だった。
つまり、忙しい場所だ。
そして忙しい場所には、だいたい忙しさを人型に圧縮したような人間がいる。
俺たちを待っていたのは、まさにそういう男だった。
長身で細面。眉間には深い皺。目の下には隈。鉄灰色の実用的な甲冑を着ているが、装飾はほとんどない。腰には魔導ペン、脇には羊皮紙の束、片手には魔導書。眼鏡の奥の目だけが妙に鋭い。
顔つきは完全に中間管理職だった。
王が狂い、騎士が怒り、民が怯え、門が壊れ、霧が攻めてきて、その全部の尻拭いを一人でやっている顔だ。現実で見たら、まず有給を取れと言いたくなる。取れないことは顔に書いてある。悲しい生き物だ。
表示が浮かぶ。
《アグラヴェイン》
《キャメロット参謀》
やはり、レベルは表示されない。
アグラヴェインは俺たちを見ると、まず俺ではなく、ガウェインを見た。
「門前の損傷は?」
「軽微だ」
「あなたの軽微は信用ならん。石畳の焦げ跡、門扉左蝶番の負荷、日輪防壁の展開回数、白錆の残骸処理、後で全て報告書にしてもらう」
「……分かった」
ガウェインが少しだけ目を逸らした。
強い。
この男、ガウェインに目を逸らさせた。
俺は思わず感心した。太陽を背負った門番より、書類を背負った参謀の方が強い瞬間というものが世の中には存在するらしい。社会は奥深い。
アグラヴェインは次に、こちらを向いた。
「外部者二名。黒鉄の盾役と、白き灯を持つ剣士。王印を所持し、王命を申告し、門番と交戦。その後、門前防衛に参加。ここまでで間違いは?」
「まとめが早いな」
「遅ければ死ぬ。城も、民も、私の胃も」
「最後だけ私情だろ」
「私の胃が止まれば、配給表も止まる。公共問題だ」
嫌になるくらい正論だった。
俺はちょっと黙った。
アグラヴェインは魔導ペンを走らせながら言う。
「名を」
「アイズド」
「ルナです」
ルナが小さく頭を下げる。
アグラヴェインは視線だけで頷き、羊皮紙に記録する。
「アイズド。ルナ。所属不明。外部者。王印所持。危険度、暫定中。監視継続」
「本人の前で危険度を書くな」
「隠しても意味がない」
「まあ、それはそうだが」
「隠す時間もない。紙も足りない。人手も足りない。睡眠も足りない」
「最後はやっぱり私情だろ」
「国家運営において、担当者の睡眠不足は公共問題だと言ったはずだ」
こいつとは話が合う。
合ってしまう。
俺はそれを認めたくなくて、少しだけ視線を逸らした。
ーーーーー
外門詰所の奥にある小さな部屋へ通された。
取調室というより、臨時の記録室だった。中央に机。壁にはキャメロット外門周辺の地図。赤い札、白い札、青い札が刺さっている。門の損傷箇所、霧の侵入経路、負傷者の搬送先、補修班の配置。細かい。細かすぎる。
俺は一目見て分かった。
これは戦術地図ではない。
兵站地図だ。
戦うための地図ではなく、壊れかけたものをどうにか明日まで保たせるための地図。
嫌な地図だ。
だが、必要な地図でもある。
アグラヴェインは椅子に座らない。立ったまま魔導書を開き、俺たちに向かい合った。ガウェインは扉の横に立つ。大剣は背負っているが、腕は組んでいる。即斬りではない。しかし、逃がす気もない。実に門番らしい配置である。
ルナは俺の隣に立っていた。
椅子はあるが、座れとは言われていない。客人ではなく監視対象。待遇の差が椅子一つに出る。社会は細部に宿る。嫌な宿り方だ。
アグラヴェインが言う。
「まず確認する。あなたたちは、どこで王と接触した」
「北方旧街道の先にある湖畔だ。霧の中で倒れていた」
「状態は」
「重傷。鎧は砕け、王剣は折れていた。意識は一度戻った。自分をキャメロットの王アーサーと名乗った」
「王印は」
「本人から渡された」
「王は、何を命じた」
「モルガンを討て、と」
部屋の空気が少しだけ固くなった。
ガウェインの拳がわずかに握られる。
アグラヴェインは表情を変えない。ただ、ペン先が一瞬だけ止まった。
「続けて」
「モルガンがキャメロットを霧の中に閉ざし、民を惑わせ、騎士を縛り、国を奪おうとしていると説明された。疑似太陽については、偽りの光だと言っていた」
「偽り、か」
アグラヴェインの声が低くなる。
怒りというより、疲労だった。
長い間、同じ嘘とも誤解とも言えない言葉を聞き続けてきた者の声。
「それで、あなたたちは王命を信じたのか」
「信じたなら、門前で『話を聞きに来た』とは言っていない」
「つまり?」
「判断保留だ。アーサーの言葉だけでは決めない。モルガン本人、ガウェイン、あんた、民の状況、それらを見てから判断する」
アグラヴェインは眼鏡の奥から俺を見る。
「記録は?」
「取っている」
俺は記録板を出した。
アグラヴェインの目が、わずかに鋭くなる。
「見せられる範囲で構わない」
「見せられない範囲は?」
「あるのだろう」
「察しがいいな」
「なければ、あなたはただの不用心な外部者だ」
「その評価を避けるために、見せられる範囲だけ見せる」
俺は記録板の一部を共有した。
《湖畔にてアーサーを保護》
《アーサーはモルガン討伐を要求》
《疑似太陽を偽りの光と表現》
《ガウェインはモルガンを様付け》
《ガウェイン証言:モルガンは疑似太陽、結界、避難区画を維持》
《円卓の多くはアーサーに殺害された可能性》
《王命の正当性に重大な疑義》
アグラヴェインは読み終えると、小さく息を吐いた。
「よく記録している」
「記録しないと、自分の都合のいいように解釈するからな」
「賢明だ」
「褒められた気がしない」
「褒めた」
「なら、もう少し嬉しそうに言え」
「嬉しさは業務に不要だ」
「嫌なほど話が合いそうだな」
「同感だ」
「同感するな」
ルナが少しだけ困ったように笑う。
ガウェインは無言だったが、さっきよりは敵意が薄い。俺が王命をそのまま飲み込んでいないことは伝わったのだろう。信用ではない。だが、斬る理由も少し減った。人間関係の進展としては地味だが、この城では地味な進展ほど貴重そうだ。
ーーーーー
アグラヴェインは魔導書を閉じ、壁の地図へ視線を移した。
「あなたたちには、まずキャメロットの現状を理解してもらう必要がある」
「モルガンに会う前にか」
「当然だ。王印を持ち、王命を口にする外部者を、いきなりモルガン殿の前へ出すほど、私は楽観主義ではない」
「それは助かる。いきなり重要人物に会う展開は、だいたいろくなことにならない」
「経験則か」
「嫌な方のな」
「同感だ」
「だから同感するな」
アグラヴェインは地図の中央を指した。
そこには、白い円が描かれている。
「これが疑似太陽の魔力中枢だ。モルガン殿が維持している。光源であり、熱源であり、結界の核でもある。外郭区画の作物、薬草、避難民の精神安定、夜間の防衛。その多くが、この疑似太陽に依存している」
アーサーの声が、頭の奥でよみがえる。
偽りの光。
民を惑わせる魔女の作り物。
だが、アグラヴェインの説明では、それは都市機能の中心だ。
「アーサーは、それを支配術だと言った」
「王から見れば、そうなのだろう」
「否定はしないのか」
「完全にはな」
アグラヴェインは淡々と言った。
「民は疑似太陽を頼っている。モルガン殿が灯す光に、祈りすら捧げている者もいる。それを支配と呼ぶなら、確かに支配だ」
「だが、消せば死ぬ」
「その通りだ」
彼は地図の外郭を指す。
「疑似太陽が消えれば、まず外郭の霧止め結界が落ちる。次に薬草園が枯れる。夜間の亡兵侵入率が跳ね上がる。避難民は三日で半数が移動不能になる。七日で食料計画が破綻する」
「具体的だな」
「具体的でなければ、対策できん」
その通りだ。
嫌になるくらい、その通りだ。
アグラヴェインは続ける。
「だから、モルガン殿を討てばキャメロットが解放される、という王の言葉は、現状に即していない。少なくとも、今モルガン殿を失えば、この城は解放ではなく崩壊へ向かう」
ルナが静かに言う。
「では、アーサーさんは嘘をついているんですか」
「嘘と断じるには、少し違う」
アグラヴェインは苦い顔をした。
「王は、自分の言葉を真実だと思っている。だから厄介なのだ」
俺は思わず頷いた。
「分かる。信念は鈍器だからな」
アグラヴェインがこちらを見る。
「よい表現だ」
「褒めるな。嫌な共感が増える」
「では記録しておく」
「するな」
彼は本当に羊皮紙に何か書いた。
やめろ。
ーーーーー
「円卓は」
俺は聞いた。
「ガウェインは、王に殺されたと言った」
ガウェインの表情が硬くなる。
アグラヴェインも少しだけ沈黙した。
部屋の外で、遠く鐘の音が聞こえる。門前の後処理だろうか。誰かが走る音。金属を運ぶ音。外門詰所はまだ慌ただしい。だが、この部屋だけは重かった。
「かつて、円卓は十二あった」
アグラヴェインは言った。
「今、まともに動ける者は三名。ガウェイン、モードレッド、私」
「他は」
「死んだ」
短い言葉だった。
だが、その短さが重い。
ルナが息を呑む。
俺は聞く。
「全員、アーサーに?」
「直接か、間接かは分かれる。だが、王の命と行動によって死んだ」
ガウェインが低く言う。
「王は、王でなくなった」
その言葉は、前にも聞いた。
だが、詰所の中で聞くと重さが違う。
王でなくなった。
つまり、かつては王だった。
この国を守り、多種族をまとめ、円卓を率いた王だった。だからこそ、彼が狂った時、傷は深い。最初から暴君だったなら、話はまだ簡単だ。だが、かつて正しかった者が壊れた時、人はすぐには見限れない。
モルガン討伐を口にするアーサーにも、時折まともな影があった。
戻ってこい、と言った。
王も誤る、と言った。
その一瞬があるから、余計に厄介なのだろう。
「アーサーは、なぜそこまで変わった」
俺が聞くと、アグラヴェインは答えなかった。
代わりに、地図のさらに奥、城の中心部へ視線を向けた。
「それは、今のあなたたちに話す段階ではない」
「また保留か」
「保留は悪ではない。誤った結論よりはよほどましだ」
「それ、俺の台詞のはずなんだが」
「先に使わせてもらった」
この男、本当に嫌なほど話が合う。
アグラヴェインは続ける。
「ただ、一つだけ言っておく。王命という言葉ほど、今のキャメロットで信用ならぬものはない」
俺は記録板に入力する。
《アグラヴェイン証言》
《疑似太陽は光源、熱源、結界核、農業・医療維持に関与》
《モルガン喪失時、キャメロットは短期間で機能不全に陥る》
《円卓十二名中、現存主要三名》
《ガウェイン、モードレッド、アグラヴェイン》
《他の円卓はアーサーの命または行動で死亡》
《アーサー変質理由:未開示》
《王命の信頼性:極めて低い》
記録を書いた瞬間、クエスト表示が揺れた。
《特殊クエスト:白亜の王命》
《派生記録を取得》
《疑似太陽の守護者》
《円卓の粛清》
《王命の正当性に重大な疑義》
《目標:モルガンを討伐せよ》
《注意:目標の再確認が強く推奨されます》
「強く推奨、か」
俺は呟いた。
「遅いな。ここまで来たら、目標欄もそろそろ自分を疑え」
「システムに文句を言っているのか」
アグラヴェインが聞く。
「日課だ」
「便利な日課だな」
「精神安定にいい」
「私も導入するべきか」
「お前はもう十分文句を言ってそうだ」
「足りん」
きっぱり言われた。
やはり相当溜まっているらしい。
ーーーーー
事情聴取は、さらに続いた。
アーサーの傷の状態。湖畔に現れた亡兵の種類。白亜の王印を使った時の反応。門前でのガウェインとの交戦ログ。レベル差補正による無効化。白銀と黒鉄の反応。ルナが霧の縫い目を切ったこと。
アグラヴェインは一つ一つ聞き、羊皮紙に書き込み、必要に応じて魔導書へ転写していく。
処理が速い。
こちらが話した内容を、その場で分類している。事実、推測、未確認、危険、保留、即時対応。それらが頭の中で棚に入っていくのが見えるようだった。
白騎士団時代の俺は、たぶん似たような顔でログを処理していた。
嫌な鏡だ。
「黒鉄の外部者」
「アイズドでいい」
「では、アイズド。あなたは、王をどう見た」
アグラヴェインが聞く。
俺は少し考えた。
「完全な嘘つきではない」
ガウェインの目が鋭くなる。
俺は続ける。
「だが、正しいとも思わない。本人の認識が歪んでいる。モルガンを敵と見ているのは本気だ。疑似太陽を支配装置と見ているのも本気だろう。だから厄介だ」
「続けて」
「一瞬だけ、まともに戻るような発言があった。王も誤る、と言った。戻ってこい、とも言った。だがすぐに王命へ戻った。あと、目の奥に赤い濁りのような反応があった」
アグラヴェインのペンが止まった。
ガウェインも、はっきりと反応する。
「赤い濁り?」
「ああ。傷や霧の影響かもしれない。状態異常かもしれない。俺たちには分からない」
アグラヴェインはしばらく黙った。
それから、低く言う。
「その情報は、重要だ」
「心当たりがあるのか」
「ある」
「教えられるか」
「まだ無理だ」
「便利だな、まだ無理」
「便利な言葉だ。あなたの解釈保留と同じくらいには」
「そこを突くな」
アグラヴェインは羊皮紙に赤い印をつけた。
初めて見せる、明確な警戒の色だった。
「王の保護地点は、湖畔の廃屋だったな」
「ああ。簡易警戒札を置いてある」
「こちらから回収班を出す」
「アーサーを城内へ戻すのか」
「戻すかどうかは、状態を見て判断する。王がそのまま歩ける状態になれば、危険が増す」
王が戻ることが危険。
普通なら反逆の言葉だ。
だが、ここでは現実だった。
アグラヴェインは扉の外へ控えていた衛兵に指示を出す。
「北方湖畔廃屋へ小隊を出せ。構成はドラゴニュート一、獣人斥候二、エルフ治療師一。戦闘は避けろ。王を発見しても独断で護送するな。状態確認と封鎖を優先」
「はっ」
衛兵が走っていく。
アグラヴェインはまた羊皮紙に記録する。
その動きに迷いがない。
この男は、王を救うよりも、まず状況を管理しようとしている。
冷たいようで、正しい。
たぶん、それを何度も選んできたのだろう。
ーーーーー
事情聴取が一段落した頃、外門詰所の小窓から街の空が見えた。
白亜の壁の内側に、疑似太陽が浮かんでいる。
白銀と黒金が混ざった、静かな光。
アーサーが偽りと呼んだもの。
ガウェインが命綱と呼び、アグラヴェインが都市機能の中核だと説明したもの。
その光の下で、遠くから子どもの声が聞こえた。泣き声ではない。誰かを呼ぶ声。続いて、車輪の音。金属を打つ音。薬草を刻む音。キャメロットは壊れかけている。だが、まだ生きている。
俺は記録板を閉じた。
「アグラヴェイン」
「何だ」
「モルガンに会わせろ」
ガウェインが少しだけ身構える。
アグラヴェインは俺を見る。
「理由は」
「討伐目標本人の話を聞くためだ」
「それだけか」
「それだけで十分だろ。討伐しろと言われた相手が、国の生命線かもしれない。なら、本人に確認する」
「会って、何をする」
「まだ何もしない。話を聞く。見て、記録する。判断はその後だ」
ルナも頷いた。
「私も、モルガン様に会いたいです。アーサーさんの言葉だけでは、何も決められません」
アグラヴェインはしばらく黙った。
眼鏡の奥で、疲れた目がこちらを測る。
「すぐには無理だ」
「だろうな」
「モルガン殿は疑似太陽の維持で手を離せない。さらに、王印を持つ外部者との接触は慎重に行う必要がある」
「条件は?」
「城内外郭区画を見てもらう。民の状況、疑似太陽の供給線、負傷者区画、補修班。あなたたちが何を見るか、こちらも見る」
「つまり監視付き社会科見学か」
「事情確認だ」
「言い方だけ変えても、中身はだいたい同じだぞ」
「なら、監視付き事情確認だ」
「混ぜるな」
アグラヴェインは淡々とクエスト表示を操作するように魔導書へ触れた。
視界に新しい表示が浮かぶ。
《特殊クエスト:白亜の王命》
《派生目標が発生しました》
《キャメロット外郭区画を確認せよ》
《モルガンとの接触:保留》
《監視者:ガウェイン》
《記録担当:アグラヴェイン》
俺は表示を見て、ため息をついた。
「討伐クエストが、監視付き行政ツアーに変わったな」
「不満か」
「むしろ安心した。いきなり殺せよりはだいぶ文明的だ」
「文明的な国は、門前で外部者と斬り合わん」
アグラヴェインの声には疲労があった。
「それもそうだ」
俺は頷く。
ガウェインが扉を開いた。
「行くぞ。外郭区画を案内する」
「お前が監視者か」
「不満か」
「いや、さっき殺されかけた相手に案内される観光は初めてだから、新鮮だと思ってな」
「観光ではない」
「分かってる。行政ツアーだったな」
ガウェインは黙って歩き出した。
俺たちも続く。
外門詰所の扉を抜けると、白亜の街の光が差し込んだ。
その光は偽りなのかもしれない。
作られた太陽。
魔術で灯された光。
だが、その下で人は生きている。傷を治し、門を直し、食料を数え、子どもを抱きしめ、参謀が胃を痛めている。
なら、今の俺には、それをただの偽りとは呼べなかった。
俺は記録板に最後の一行を追加した。
《モルガン討伐判断:保留継続》
《優先事項:キャメロットの現状確認》
《王命より、現地情報を優先》
最高のクソゲーは、王命を渡したあと、今度は国の生活を見せてくる。
殺す前に見ろ。
そう言われているようで、俺は少しだけ嫌な気分になった。
なぜなら、それはたぶん、正しいからだ。




