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失業した軍師、産廃ジョブで世界の余白を攻略する 〜古代変形機装は、使い手の頭がおかしいほど強くなる〜  作者: 三元豚


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理外創成は失敗作ではない


 理外創成。


 名前だけなら、いかにも強そうだ。


 理の外で創る。ルールの外側へ手を伸ばす。決められたレシピを踏み越えて、誰も見たことのないものを作る。


 文字面だけ見れば、職人系スキルの最終奥義みたいである。


 だが、実際の扱いはだいぶ違った。


 現代のプレイヤー間での評価は、だいたいこうだ。


 素材を灰にする機能。


 失敗率の高い趣味技。


 ロマンはあるが実用性は低い。


 金持ち職人の遊び。


 配信映えする自爆。


 最後の評価はひどいが、完全に否定もできない。理外創成は失敗すれば素材が灰になる。高価な素材だろうが、希少素材だろうが、村の生活を支える素材だろうが、失敗すれば灰だ。灰は灰である。そこに情状酌量はない。


 だから、普通の職人は使いたがらない。


 まともな依頼主も、使わせたがらない。


 そんなものを平然と実戦投入する職人がいたら、だいたい危険人物扱いされる。


 そして、俺たちの横には、その危険人物がいた。


「何その目」


 きなこもちが言った。


 第三炉の作業台の前で、彼女は腕を組んでこちらを睨んでいる。背は低いが態度は大きい。金槌を腰に下げ、朝から妙に落ち着かない顔をしていた。


「危険物を見る目」


「ひどくない?」


「事実だ」


「便利だね、それ」


「便利だから使っている」


 きなこもちは唇を尖らせた。


 だが、いつものようにすぐ茶化しきれない。


 昨日、古代書庫の石台にはこう表示された。


 《次回閲覧候補:理外創成 断片記録》


 《閲覧条件:素材提供者の同意記録、職人実績記録》


 理外創成の記録を見るには、素材提供者の同意記録が必要。


 それは、古代書庫が理外創成を単なる職人のスキルとして扱っていないことを示していた。


 素材を出す者。


 素材を預かる者。


 失敗すれば灰になることを理解したうえで、それでも試すことに同意した記録。


 つまり、公開査定でリーフェ村の灰鉄鉱と根麻布を使った、あの時の記録が関係する可能性が高い。


 きなこもちの理外創成。


 リリィとロアン村長の同意。


 村の素材を灰にするかもしれない恐怖。


 そして、成功した結果。


 全部が、閲覧条件になり得る。


「本当に見るんですか?」


 ルナが聞いた。


 彼女は《根麻影踏の旅装》をまとい、フードを深く被っている。顔も髪も見えないが、声には慎重さがあった。


「見る」


 俺は答えた。


「ただし、手順を踏む」


「手順?」


「リーフェ村側に確認する。あの時の同意記録を、古代書庫の閲覧条件に使う可能性がある。そこを説明してからだ」


 きなこもちが少し目を伏せた。


「別に、あたし一人のログでいいんじゃないの」


「駄目だ」


 俺は即答した。


「あれはお前一人の実績じゃない。素材を出した側がいる」


「分かってる」


「なら確認する」


「……うん」


 珍しく、素直だった。


 理外創成の話になると、きなこもちの軽口は少しだけ鈍る。


 それはたぶん、彼女がこの技の怖さを知っているからだ。


 彼女は成功した。


 リーフェ村の素材を、意味のある形に変えた。


 だが、その直前まで、灰になる可能性もあった。


 それを忘れていない。


 だから信用できる。


 危険人物ではあるが。


 危険人物であることと、信用できることは両立する。人間関係というものは、たまに面倒な論理演算を要求してくる。


ーーーーーー


 リリィとロアン村長は、第三炉の隣にある小さな記録室にいた。


 他の供給村向けに、リーフェ村の素材記録の整理方法を説明する準備をしているところだった。机の上には、灰鉄鉱の採掘記録、根麻布の乾燥記録、共同炉の使用記録、搬入札の写しが並んでいる。


 リリィは俺たちを見ると、すぐに立ち上がった。


「アイズドさん、どうしました?」


「少し確認したいことがある」


 俺はそう言ってから、一拍置いた。


 どう説明するべきか。


 古代書庫。


 理外創成。


 閲覧条件。


 そのまま言えば、話が大きくなりすぎる。


 だが、隠して同意記録だけ使うのは違う。


「公開査定の時、リーフェ村の素材を理外創成に使っただろう」


「はい」


 リリィの表情が少し緊張する。


 ロアン村長も静かに頷いた。


「あの時、失敗すれば灰になる危険を説明した上で、村側が同意した。その記録が残っている」


「はい。覚えています」


 リリィは、両手を胸の前で握った。


「怖かったです。でも、きなこもちさんが、ちゃんと怖がっていたから、預けられました」


 きなこもちが、少しだけ顔を逸らした。


「そういうの、面と向かって言う?」


「言います」


 リリィはまっすぐ言った。


「怖がらない人だったら、預けませんでした」


 記録室が静かになった。


 良い言葉だと思った。


 きなこもちにとっても、たぶん重い言葉だった。


 俺は話を続ける。


「その同意記録が、古い工房記録の閲覧条件に関係する可能性が出た」


「古い工房記録……ですか?」


「ああ。理外創成に関する断片記録だ。詳しい内容はまだ分からない。読むためには、素材提供者の同意記録と、職人の実績記録が必要らしい」


 ロアン村長が眉を寄せる。


「つまり、我々の素材を使ったあの記録を、閲覧の鍵として使うということですか」


「そうなる可能性がある」


「その記録を使うことで、村に不利益は?」


「現時点ではない。ただし、理外創成の記録がリーフェ村素材と繋がる可能性はある。だから、勝手には使わない」


 リリィは少し考えた。


 ロアン村長も、娘を見る。


 リリィはゆっくり顔を上げた。


「私は、使っていいと思います」


「リリィ」


 ロアン村長が静かに呼ぶ。


「だって、あの時の素材は、村のために使いました。灰になるかもしれなかったけど、それでも、みんなの前で価値を証明するために使いました」


 リリィはきなこもちを見る。


「それが、今度は別の記録を開くために必要なら、私は知りたいです。あの時、私たちが何を預けたのか」


 きなこもちが、珍しく何も返さなかった。


 ロアン村長は、しばらく黙った。


 それから、深く頷いた。


「村長としても、同意します。ただし、条件があります」


「聞こう」


「記録を使って分かったことのうち、リーフェ村の素材に関わる部分は、我々にも説明してください。すべてを公開せよとは言いません。しかし、我々の素材が関わるなら、我々が何も知らないまま話が進むのは困ります」


「当然だ」


 俺は答えた。


「公開範囲は分ける。村に関わる用途情報は共有する。世界樹や古代分類の深い部分は、危険がある場合は保留する。ただし、保留理由も記録に残す」


「それなら」


 ロアン村長は頷いた。


「リーフェ村として、同意記録の使用を認めます」


 ログが表示された。


 《素材提供者同意記録を更新》


 《対象:リーフェ村産灰鉄鉱/根麻布》


 《用途:理外創成断片記録の限定閲覧条件》


 《同意者:リーフェ村代表》


 《条件:リーフェ村素材に関わる閲覧結果の説明》


 《公開範囲:限定》


 リリィが小さく息を吐いた。


 きなこもちが、その記録をじっと見ていた。


「重いね」


 彼女は呟いた。


「素材って」


「今さらか」


「今さらだよ」


 きなこもちは、少しだけ笑った。


 いつもの軽い笑いではなかった。


 火の前に立つ職人の笑いだった。


ーーーーーー


 地下第七保管庫の扉は、今日も静かに開いた。


 もう三度目になる。


 だが、慣れない。


 古代書庫へ降りる階段の冷たさ、魔力灯の緑がかった光、古い紙と金属と土の匂い。その全部が、毎回こちらの足取りを少し重くする。


 今回は、石台に近づいた時点で反応が変わった。


 《素材提供者同意記録を確認》


 《職人実績記録を確認》


 《理外創成 断片記録の限定閲覧を許可》


 きなこもちが息を呑んだ。


 ルナも静かに石台を見つめる。


 グラン親方は、両手を組んでいた。職人として、そして査定士として、この記録の重さを理解している顔だった。


 俺は石台へ手を置く。


「読むぞ」


 誰も反対しなかった。


 《理外創成 断片記録》


 空中に、古い文字が浮かぶ。


 最初は読み取れなかった。


 文字が欠けている。変換不能の語が多い。記録そのものも断片的だ。


 だが、暫定管理権限と職人実績記録が重なるにつれ、いくつかの文が現代語へ変換された。


 《理外創成とは、理を破る業にあらず》


 きなこもちの目が細くなる。


 次の文。


 《定められた形に従わぬ素材を、定められた失敗と見なすな》


 グラン親方が小さく息を吐いた。


 さらに。


 《素材は、己の用途を失うことがある》


 《職人は、火と音と裂け目を読み、その用途を再び見出す》


 ルナが、ぽつりと言った。


「失敗を、失敗って決めつけない……?」


 そう聞こえた。


 理外創成は、レシピ外の奇跡ではない。


 少なくとも古代の記録では、そうではなかった。


 定められたレシピに合わない素材を、失敗素材として切り捨てないための技術。


 素材が本来持っていた使い道を、職人が読み直す行為。


 そのために、火を見る。


 音を聞く。


 割れ方を見る。


 匂いを嗅ぐ。


 張りを確かめる。


 今のきなこもちが、感覚でやっていることに近い。


「これ……」


 きなこもちが小さく言った。


「レシピを無視する技じゃないんだ」


「そう読めるな」


 俺は答える。


「むしろ、素材側のルールを読み直す技術らしい」


 きなこもちは黙った。


 彼女が黙ると、書庫は本当に静かになる。


 次の記録が開く。


 《理外創成において、灰化は罰にあらず》


 《読み違えた結果である》


 《素材の声を聞かず、職人の欲を押しつけた時、素材は形を失う》


 灰化は罰ではない。


 読み違えた結果。


 素材の声を聞かず、職人の欲を押しつけた時、素材は形を失う。


 きなこもちの顔から、完全に軽口が消えた。


「……灰になるのは、素材が悪いんじゃないんだ」


 彼女は呟いた。


「職人が、読めなかったから」


 グラン親方が、ゆっくり頷いた。


「厳しい記録だ」


「あたし、ずっと思ってた」


 きなこもちの声は低い。


「灰になった素材って、運が悪かったんだって。相性が悪かったんだって。もちろん、自分が下手だった時もあるけど、それでも、理外創成ってそういうものだって」


 彼女は石台の文字を見る。


「でも、これだと違うね」


「全部が職人の責任とは限らない」


 俺は言った。


「記録も断片だ。これだけで断定するな」


「分かってる」


 きなこもちは短く答えた。


「でも、刺さる」


 その言葉は、たぶん本音だった。


 理外創成で素材を灰にしたことがあるのだろう。


 高価な素材も。


 珍しい素材も。


 誰かから預かった素材も。


 もしかすると、彼女自身が笑って誤魔化してきたものが、そこにあるのかもしれない。


ーーーーーー


 記録はさらに続いた。


 《理外創成は、独断の業にあらず》


 《素材を出す者、火を預かる者、形を受け取る者》


 《三者の了承なくして、深き創成に入るべからず》


 リリィとロアン村長の同意記録が必要だった理由が、少し見えた。


 古代工房では、理外創成を職人の勝手な挑戦とは見なしていなかった。


 素材を出す者。


 火を預かる者。


 完成品を使う者。


 その三者の了承があって、初めて深い創成に入る。


 それは、今のプレイヤーがやる「素材を突っ込んで成功率に祈る」行為とはまったく違う。


 ガチャではない。


 賭けでもない。


 いや、失敗の危険がある以上、賭けの面はある。


 だが、少なくとも古代の記録は、それを無責任な賭けにするなと言っている。


「重いな」


 俺は呟いた。


 ルナが頷く。


「でも、正しい気がします」


「どうしてだ」


「リリィちゃんたちの素材を使う時、きなこもちさん、ちゃんと怖がってました。それで、リリィちゃんたちは預けられたって言っていました」


「ああ」


「それと同じことが、ここに書いてある気がします」


 確かに。


 きなこもちが公開査定でやったことは、古代記録の理想に近かったのかもしれない。


 素材を出す者へ危険を説明し、同意を得て、職人が火を預かり、完成品を場に示す。


 もちろん、彼女がその理論を知っていたわけではない。


 感覚でやっていた。


 それが、古代工房の考え方と重なった。


 天才、という言葉で片づけるのは簡単だ。


 だが、たぶんそれだけではない。


 彼女は素材を怖がれる。


 そこが大きい。


「きなこもち」


 俺は声をかけた。


「何」


「お前は、これを見て何をする」


「……今聞く?」


「今聞く」


 彼女は少しだけ俺を睨んだ。


 だが、すぐに視線を石台へ戻す。


「作りたい」


 短い答えだった。


「でも、怖い」


「そうか」


「怖いよ。これ、今までのあたしの成功も失敗も、全部別の見え方になる。灰にした素材も、もしかしたら、あたしが読めなかっただけだったのかもしれない」


「断定するなと言った」


「分かってる。でも、そう思っちゃうんだよ」


 きなこもちは笑った。


 少し無理のある笑いだった。


「職人って面倒だね」


「今さらだな」


「うん。今さら」


 彼女は石台の文字を見つめたまま、言った。


「でも、失敗作じゃなかったんだ」


「理外創成がか」


「うん。死に機能とか、素材灰化装置とか、そういう扱いされてたけどさ。本当は、分からない素材を分かろうとする技だったんだね」


「そう書かれている」


「それだけで、ちょっと救われる」


 救われる。


 その言葉が、意外だった。


 きなこもちに似合わないという意味ではない。


 むしろ、似合いすぎていて意外だった。


 いつも軽口を叩き、危ない素材に目を輝かせ、炉の前で笑っている彼女が、理外創成をどう扱ってきたのか。その一端が見えた気がした。


 失敗すれば灰。


 成功すれば称賛。


 その間で、彼女は何度も火の前に立ってきたのだろう。


 笑いながら。


 怖がりながら。


ーーーーーー


 記録の末尾に、別の断片が出た。


 《深き創成は、職を越える》


 《五つの火を知る者、五つの材を読む者》


 《火と材と形を結び、上なる炉へ至る》


 そこで、記録は途切れていた。


 《閲覧制限》


 《上位職記録への接続条件を満たしていません》


 きなこもちの目が止まる。


 五つの火。


 五つの材。


 職を越える。


 上なる炉。


 生産職の上限解放を連想させる言葉だった。


 ただし、まだ触れない。


 ここで深入りすれば、第64話の領域になる。


 俺は即座に記録を閉じた。


 きなこもちがこちらを見る。


「今、閉じたね」


「閉じた」


「めちゃくちゃ大事そうだったよ」


「だから閉じた」


「ひどい」


「上位職記録への接続条件を満たしていない。今読もうとしても読めないか、誤読する。今日は理外創成の再定義までだ」


「堅い」


「堅くて結構」


 グラン親方も頷いた。


「黒鉄殿の判断が正しい。今の断片は、軽く扱うものではない」


 きなこもちは不満そうだったが、さすがに引いた。


 彼女自身も分かっているのだろう。


 今の断片は危険だ。


 上へ行けるかもしれない。


 そう匂わせる情報は、人を狂わせる。


 戦闘職でも、生産職でも、それは同じだ。


 俺は、そんな人間を何人も見てきた。


 届くかもしれない場所が見えた時、人は無茶をする。


 届かないかもしれないのに、届くと思い込み、素材も時間も仲間も削る。


 だから、今は閉じる。


 準備ができてから読む。


「限定複写はどうしますか?」


 ルナが聞いた。


「理外創成の基礎断片だけ取る。上位職に関わる末尾は保留。炉会議へ出す範囲はさらに絞る」


 俺は石台に設定する。


 《限定複写:理外創成基礎断片》


 《公開範囲:非公開保留》


 《炉会議共有候補:素材提供者同意、灰化リスク、用途再発見に関する記述のみ》


 《上位職関連断片:閲覧保留》


 《保留理由:接続条件不足、誤読防止、職人の過剰挑戦防止》


 きなこもちがぼそっと言う。


「過剰挑戦防止って、あたしのこと?」


「自覚があるなら助かる」


「あるよ」


 彼女は肩をすくめた。


「あるから困ってる」


 その声には、また少しだけ怖さが混じっていた。


ーーーーーー


 書庫を出る前、ルナが石台の文字をもう一度見た。


「理外創成は、失敗作じゃなかったんですね」


「理外創成そのものはな」


 俺は答える。


「ただし、失敗すれば素材は灰になる。それは変わらない」


「はい」


「便利な技でも、奇跡でもない。素材を読み違えれば終わる。素材提供者の同意もいる。職人の実績もいる。使う側の覚悟もいる」


「でも、意味はあった」


 ルナは言った。


「灰になるだけの技じゃなかった」


「ああ」


 それは認めていいだろう。


 理外創成は失敗作ではない。


 ただ、扱う者が少なく、理解されず、失敗が派手すぎた。


 灰になるという結果だけが目立ち、本来の意味が失われた。


 素材と同じだ。


 灰鉄鉱も、根麻布も、使い道を見失ったせいで低く見られていた。


 理外創成もまた、使い道を見失った技術だったのかもしれない。


 このゲームは、本当に同じ構造を何度も見せてくる。


 しつこい。


 だが、少し分かってきた。


 低評価。


 死に機能。


 外れ素材。


 そう呼ばれたものの中に、使い道を失っただけのものがある。


 なら、それを見つけることは、たぶん攻略になる。


 数字を上げるだけではない、別の意味での攻略だ。


 俺たちは地上へ戻った。


 第三炉の煙が、遠くに見える。


 きなこもちはしばらく黙っていた。


 珍しいので、放っておくことにした。


 第三炉へ戻る道の途中、彼女がぽつりと言った。


「黒鉄さん」


「何だ」


「あたし、また理外創成をやると思う」


「だろうな」


「止めないの?」


「無責任に止める気はない」


「じゃあ、押す?」


「それもしない」


 俺は前を見たまま言った。


「試すなら、素材を出す側にも、使う側にも、灰になる危険を説明しろ。記録を残せ。失敗しても笑って誤魔化すな。成功しても一人の手柄にするな」


 きなこもちは黙った。


「それができるなら、やればいい」


「……重いね」


「理外創成がそういう技だったらしいからな」


「そっか」


 彼女は小さく笑った。


 今度は、少しだけいつもの軽さが戻っていた。


「じゃあ、ちゃんと重いままやるよ」


「軽く言うな」


「重く言うと怖いから」


 それは本音だろう。


 職人は、火の前でしか強がれないのかもしれない。


 俺は第三炉の煙を見た。


 次は、おそらく生産職の上限。


 五つの火。


 五つの材。


 上なる炉。


 きなこもちがその先へ届くかどうかは、まだ分からない。


 だが、道の入口は見えてしまった。


 最高のクソゲーは、死に機能と呼ばれた技にまで、面倒な意味を仕込んでいる。


 だが、その意味を知った以上、もう前と同じ扱いはできない。


 理外創成は失敗作ではない。


 ただ、怖いだけだ。


 そして怖いものほど、正しく扱わなければならない。


 俺たちは第三炉へ戻った。


 火はまだ、静かに燃えていた。

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