見せるための嘘
見られることが前提なら、隠すだけでは足りない。
相手がこちらを観測し、学習し、次の手を組み替えてくるなら、こちらがやるべきことは一つだ。何を見せるかを、こちらで選ぶ。
それは、対人戦では基本に近い考え方だった。
本命のスキルを通すために、先に別の癖を見せる。相手が反応したくなる初動をわざと作る。何度も同じ避け方をして、三度目だけ別の場所へ消える。強い手を隠すのではなく、見せてもいい手を餌にして、相手の判断を狭める。
ただし、それを初心者にやらせるとなると話は別だ。
しかも相手は人間ではない。根の淀みから生まれ、アルファの観測残響を拾い、人の反応を材料にして形を変える魔蛇だ。こちらの癖を読み、声を拾い、記憶の断片まで使ってくる。
つまり、ただのフェイントでは足りない。
魔蛇が見たいものを見せて、その見たものを信じさせ、そのうえで外す必要がある。
難易度が高い。
だが、やるしかない。
「というわけで、今からお前にはわざと読まれる練習をしてもらう」
外縁訓練環の中央で、俺はそう告げた。
ルナは剣を握ったまま、目を丸くする。
「わざと読まれるんですか?」
「ああ」
「読まれたら、危なくないですか?」
「普通は危ない。だから、読ませるところまでをこちらで決める」
ルナはしばらく考え込んだ。
その顔には、分かりそうで分からない、という文字がほぼ浮かんでいる。可視化スキルがあれば、たぶん頭上に「?」が三つくらい出ている。初心者向け教材としては大変分かりやすい。
「つまり……相手に、次はこっちに避けるって思わせるんですか」
「そうだ。で、実際には違う場所へ行く」
「それは、普通のフェイントと違うんですか?」
「似ている。ただ、お前の場合は少し厄介だ」
「厄介」
「お前の身体は、勝手に正解を選ぶ。危ない場所を避けて、当たらない位置へ行く。それ自体は才能だ。だが、魔蛇はその“勝手に選ぶ正解”を見てくる」
ルナの表情が少し引き締まった。
根脈浅層で、彼女はそれを体験している。
魔蛇はルナの回避先を先読みした。彼女が本能的に選ぶ場所へ黒い糸を置いた。あれは、攻撃を読まれたというより、身体の答えを盗まれた感覚に近いはずだ。
「だから、次は正解じゃない初動を見せる」
「間違った動きをするんですか?」
「最後まで間違えたらただの被弾だ。最初だけ、間違ったように見せる。相手がそこへ食いついた瞬間、本当の正解へ行く」
「難しいです」
「難しいからやる」
「アイズド、それ好きですよね」
「嫌いではない」
「好きですよね?」
「否定はしない」
ルナが小さく笑った。
緊張はある。だが、笑えるくらいの余裕は残っている。いい状態だ。
訓練環の外では、イリスが制御石の前に立っている。今日は守り手の装備ではなく、訓練監督用の軽装だった。腰には浄砂袋。背には弓。だが、今はどちらも使わない。彼女の役目は、訓練用の影を制御することだ。
白狐は訓練環の端に座っていた。尾を身体の横へ流し、こちらを見ている。昨日の根脈浅層で少し淀みに触れたせいか、今日はいつもより大人しい。いや、大人しいというより、観察に徹していると言ったほうが近い。
たぶん、こいつも学んでいる。
魔蛇が白狐の光を道にしようとしている以上、白狐自身も光り方を変える必要がある。聖獣にもアップデートが必要な時代らしい。リリースノートには「白尾さまの発光挙動を調整しました」と書かれるのだろうか。嫌なパッチノートだ。
「まず一体」
イリスが制御石に触れる。
白い影が、訓練環の中央に立った。
剣を持った人型。剣の環で出た白尾の影ほど鋭くはないが、動きの起こりは十分に見える。基礎訓練用としてはちょうどいい。
「ルナ。最初はいつもの回避でいい。二回目も同じ。三回目で初動だけ同じにして、違う場所へ抜けろ」
「はい」
「ただし、出口確認は忘れるな」
「はい。出口は後ろ左、庵へ戻る道。根の間へ行くなら水路沿いです」
「よし」
ルナは剣を構えた。
白い影が踏み込む。右上からの斬撃。ルナの身体が沈む。半歩左へ抜け、剣を相手の手首へ軽く置く。彼女らしい、最小限の回避と接触。白銀の光は出ない。出す必要もない。
二回目も同じ。
影が似た角度で斬り込む。ルナは同じように左へ抜ける。俺が見ても、癖として成立する程度には似ていた。魔蛇なら確実に拾うだろう。
三回目。
影が踏み込む。
ルナの肩が、左へ抜ける初動を見せた。
だが、身体はそのまま右へ消えた。足首だけを滑らせ、左へ沈む重心を途中でほどき、反対側へ流す。影の剣は左の空間を斬り、ルナの剣は影の膝に触れた。
「いい」
俺は短く言った。
ルナはほっとしたように息を吐く。
「今の、できてました?」
「できていた。ただ、最後に少し大きく動きすぎた。魔蛇相手だと、動きの大きさそのものを拾われる。もっと小さく外せ」
「もっと小さく……」
「お前は避けることに関しては大きく動かなくても当たらない。なら、騙す時も大きい嘘はいらない。小さい嘘でいい」
「小さい嘘」
ルナはその言葉を口の中で転がすように繰り返した。
嘘、と言われると少し抵抗があるのかもしれない。彼女は基本的に素直だ。素直すぎて初日に俺の戦闘映像を満面の笑みで見せてきたくらいである。あれは悪意がなさすぎて逆に危険物だった。
「戦闘での嘘は、相手を騙すためだけじゃない」
俺は言った。
「守るための嘘もある。相手にこっちを狙わせる。味方から目を逸らさせる。危ない攻撃を、届かない場所へ誘う。今回のお前の役割はそれだ」
「守るための嘘……」
「嫌なら、誘導と言い換えてもいい」
「そっちの方が少し好きです」
「なら誘導だ」
ルナは頷き、再び構えた。
ーーーーーー
何度も繰り返すうちに、ルナの動きは少しずつ変わっていった。
最初は、わざと読ませることに意識が向きすぎて、動きが硬かった。型を意識しすぎた時のように、一拍遅れる。白い影の剣が服の端を掠めるたび、彼女の表情が悔しそうに歪んだ。
だが、十回、二十回と繰り返すうちに、彼女は自分の身体の癖を少しずつ掴んでいった。
どの初動なら、相手が食いつくのか。
どこまで見せれば、まだ戻れるのか。
どの角度へ抜ければ、避けながら味方の方へ攻撃を流さずに済むのか。
これまで彼女の回避は、ほとんど本能だった。
当たりそうだから避ける。
そこにいると危ないから動く。
その感覚が、彼女の最大の武器だった。
だが、今はその感覚を少しだけ外から見ようとしている。自分の動きを、相手にどう見せるかを考え始めている。
それは、《絶剣》へ向かううえで重要な変化だと思った。
ただ速いだけなら、いつか読まれる。
ただ当たらないだけなら、いつか狩られる。
当たらない身体で、相手に見せる線まで選べるようになれば、彼女の白銀はもう一段先へ進む。
「次、二体」
イリスが言った。
白い影が二体に増える。
剣影と槍影。
剣の環で出た組み合わせに近い。ルナの顔に一瞬だけ緊張が走ったが、すぐに剣を握り直した。
「二体になったら、嘘を増やすな」
俺は言った。
「えっ、増やさないんですか?」
「増やすと自分が混乱する。二体相手では、一体にだけ見せろ。もう一体は環境として見る」
「環境」
「攻撃してくる足場だと思え」
「すごく嫌な足場ですね」
「EHOにはそういう足場がたまにある」
「あるんですか?」
「ある。性格が悪いからな、このゲームは」
ルナは少しだけ笑い、二体の影へ向き直った。
剣影が前へ出る。槍影が右後ろへ回る。ルナは剣影にだけ左へ抜ける初動を見せた。剣影の斬撃がその左を狙う。その瞬間、ルナは右へ戻るのではなく、剣影の懐へ半歩だけ詰めた。槍影の突きは剣影の身体に遮られ、ルナの剣が剣影の胸元へ触れる。
いい判断だ。
見せる相手を一体に絞ったことで、動きが散らばらなかった。
だが、槍影の尾に似た払いが足元へ入る。訓練用なので致命ではないが、魔蛇なら黒糸で絡めてくる場面だ。ルナは咄嗟に跳びかけた。
「跳ぶな」
俺の声に、彼女は空中へ逃げる寸前で膝を抜いた。足払いの上を跳ぶのではなく、軌道の内側へ沈む。槍が頭上を通り、彼女は片手を床につきながら体勢を戻した。
「今のは危なかったです」
「跳んだら空中で狩られる。魔蛇はお前が跳ぶのを待つ」
「はい」
「でも、途中で止めたのはいい。自分の正解を疑えた」
「自分の正解を疑う……難しいです」
「だろうな」
俺は頷いた。
それが難しいから、多くのプレイヤーは自分の得意パターンを狩られる。強い癖は武器だが、敵に読まれれば弱点になる。
ルナの場合、その癖は天性の回避だ。
だからこそ、今のうちに「自分の正解を疑う」ことを覚えさせる必要がある。
たぶん、それは俺にも必要なことだった。
俺の正解。
支えること。
土台になること。
誰かの穴を先に塞ぐこと。
それは昔の俺の武器であり、同時に呪いでもあった。
魔蛇はそこを突いてきた。
なら、俺も自分の正解を疑う必要がある。
誰かを助けることが、いつも正しいとは限らない。
戻らないことが、見捨てることとも限らない。
言葉にすると簡単だ。
実際には、まあ、面倒だ。
俺は左腕の機装を起動した。
「次は俺の番だ」
ーーーーーー
護域の切り替えは、思った以上に難しかった。
通常の盾装は、自分の前に盾を出す。それだけなら単純だ。敵の攻撃線を読み、角度を合わせ、受けるか逸らすかを決めればいい。
だが、護域は違う。
何を守るかを機装に認識させる必要がある。
白尾灯。
白狐。
根系流路。
対象が明確なら、まだいい。
問題は、その対象を途中で切り替える場合だ。
たとえば、最初は流路を守る。魔蛇が迂回してルナを狙った瞬間、ルナの足元へ護域を伸ばす。さらに、浄砂の投擲線を守るために一瞬だけ前方へ狭める。
言葉にするとそれだけだが、実際にやると機装が混乱する。
俺の思考が迷えば、護域も揺らぐ。
守る対象を欲張れば、過負荷になる。
対象を絞りすぎれば、黒糸が抜ける。
しかも、魔蛇は前回こちらの護域を見ている。次は俺が広げる瞬間、切り替える瞬間、過負荷の癖を狙ってくるだろう。
「汝は守りたがりすぎる」
訓練を見ていたイリスが言った。
なかなか刺さる言葉だった。
「どういう意味だ」
「護域を広げる時、対象が多い。流路、白尾さま、白銀の娘、浄砂の線。すべてを同時に守ろうとする」
「必要だからな」
「必要でも、同時には守れぬ。守り手は、守る順番を決める」
「順番」
「そうだ。守ることは、選ぶことだ。すべてを抱えれば、腕が裂ける」
フェネキア族は、たまにやたら本質的なことを言う。
やめてほしい。訓練中に心の防具を貫通してくるな。
だが、イリスの指摘は正しい。
俺は護域を広げすぎている。
根脈でルナを守った時もそうだ。流路を守っていた護域を無理に彼女の足元まで伸ばし、過負荷を起こした。結果的に助かったが、魔蛇はそれを見ている。次はそこを狙う。
なら、広げない。
守る順番を決める。
まず流路。
次に浄砂。
その次に白狐。
ルナは、守る対象ではなく、共に守る側へ置く。
言葉にすると冷たい。
だが、彼女を常に守る対象に置けば、ルナ自身の白銀を殺す。彼女はもう、ただ後ろに置いておく初心者ではない。
危険な囮をやると、自分で言った。
なら、それを信じる必要がある。
「ルナ」
俺は呼んだ。
「はい」
「次の魔蛇戦で、俺はお前を最優先では守らない」
ルナは一瞬だけ目を丸くした。
イリスもこちらを見る。
白狐の尾も少し止まった。
言い方が悪かったかもしれない。いや、悪いと分かって言った。曖昧にすると、自分がまた無意識に守りに行く。
「流路を守る。浄砂の線を守る。白狐を守る。お前は、その内側で自分の役割を果たせ。危険な時は下がれ。だが、俺が全部拾う前提で動くな」
ルナは黙って聞いていた。
怒るかと思った。
不安になるかと思った。
だが、彼女は少しだけ考え、ゆっくり頷いた。
「分かりました」
「怖くないのか」
「怖いです。でも、ずっと守られてたら、私の白銀は脆いままなんですよね」
その答えに、俺は少しだけ黙った。
脆くない白銀。
彼女が何気なく言い始めた言葉が、いつの間にか本人の中で芯になっている。
「そうだな」
「なら、やります。自分の避ける場所は、自分で選びます。誘導もします。出口も見ます」
「最後が一番信用できないが、期待してる」
「そこは信用してください」
「努力目標だ」
「またそれです」
ルナは笑った。
さっきより少し緊張が抜けている。守らないと言われて安心する人間も珍しい気がするが、正確には「役割を任された」ことが効いたのだろう。
俺は再び護域を展開した。
今度は、範囲を広げない。
制御石の上に置かれた白い小石を流路に見立てる。最初は小石だけを守る。次に、イリスが投げる浄砂の線へ護域を切り替える。ルナが囮として前へ出ても、そちらへ広げない。彼女が自分で黒糸を逸らす前提で、俺は本命の線を守る。
一回目は失敗した。
ルナの足元に白い影が迫った瞬間、反射的に護域を広げてしまった。
イリスが即座に言う。
「広げた」
「分かってる」
「守りたがりだ」
「二回言うな」
二回目。
今度は我慢した。
ルナの横を白い影の剣が掠める。彼女は自分で避け、剣で進路を逸らす。俺は護域を浄砂の線へ切り替える。成功。だが、切り替えが遅い。
三回目。
小石、浄砂、流路。
対象を順番に切り替える。
護域は揺れるが、過負荷にはならない。
四回目。
ルナがわざと左へ抜ける初動を見せ、影を誘導する。俺はその誘導に釣られず、浄砂の線だけを見る。
五回目。
ようやく、形になった。
ログが流れる。
《守護対象の連続再定義を確認》
《護域展開精度:微上昇》
《守護系統適合率:上昇》
まだ正式解放ではない。
だが、前進だ。
イリスがわずかに頷いた。
「ましになった」
「褒め言葉か?」
「事実だ」
「フェネキア族の標準表現だな」
イリスは真面目な顔で首を傾げた。
自覚はないらしい。
ーーーーーー
訓練が一段落した頃、セレンが戻ってきた。
手には、小さな白い容器を持っている。容器の中には、通常の浄砂よりも粒の細かい、淡く金色がかった砂が入っていた。
「白澄砂だ」
セレンは言った。
「通常の浄砂より深く届く。だが、量は多くない。一度、核に届けば淀みを大きく削れる。外せば、次はない」
イリスが容器を受け取る。
その表情が引き締まった。
「一投分ですか」
「確実に届かせよ」
「承知しました」
一投分。
つまり、魔蛇戦の本命は一度だけ。
囮の浄砂で魔蛇を動かし、ルナの誘導で黒糸を出させ、俺の護域で本命の線を守る。イリスが白澄砂を投げ、核へ届かせる。
失敗すれば、白澄砂は失われる。
次は魔蛇がさらに学習する。
なかなか楽しい条件だ。
いや、楽しいと言うとまたルナに顔を指摘されるので黙っておく。
「アイズド」
案の定、ルナがこちらを見ていた。
「顔、少し楽しそうです」
「黙っていたのに」
「顔が言ってました」
「顔の情報漏洩がひどい」
白狐が尾を揺らす。
笑われた気がした。
セレンは水盤に第二流路の図を映した。
黒い核の位置は、先ほどよりわずかに外縁側へ近づいている。
「魔蛇は動いている」
「侵食率は?」
「二八%」
「上がったか」
核へ干渉して二五%まで下げたが、こちらが戻って訓練している間に三%進んだ。思ったより早い。
「猶予は?」
「今日中に再度干渉できれば、浅層内で止められる。明日まで待てば、第三流路へ届く可能性がある」
「なら、今日行くしかない」
誰も反論しなかった。
ルナは剣を握る。
怖さはある。
だが、逃げる目ではない。
イリスは白澄砂の容器を腰の袋へ収める。
白狐は立ち上がり、尾を一度だけ強く振った。
セレンは俺たちを見渡した。
「淀みは、汝らを見ている。次は、より深く刺してくるだろう。過去の声、見知った影、未熟な願い。何を見せられても、返すな。追うな。選ぶべき流れだけを見よ」
「了解」
「はい」
「承知」
俺たちはそれぞれ答えた。
セレンの視線が、最後に俺へ向く。
「アイズド。汝の守る形は、強い。だが、強すぎる守りは己を縛る。守る順番を誤るな」
「分かってる」
「ならよい」
分かっている。
少なくとも、今は。
過去の影に手を伸ばさない。
ルナを信じる。
白狐の光を無闇に使わせない。
イリスの白澄砂を通す。
流路を守る。
核を削る。
戻る。
作戦は単純だ。
単純な作戦ほど、実行は難しい。
俺は左腕の機装を握った。
護域の感覚はまだ残っている。
ルナは隣で小さく深呼吸した。
「アイズド」
「何だ」
「誘導、ちゃんとやります」
「ああ」
「でも、もし変な声が聞こえたら」
「白狐を見ろ」
「はい」
「俺の声でも、すぐには信じるな」
ルナは少しだけ目を見開いた。
「アイズドの声でも?」
「ああ。淀みが真似るかもしれない」
「じゃあ、本物かどうか、どう判断すればいいですか」
「俺がまともなことを言っていたら疑え」
「えっ」
「冗談だ」
「今のタイミングで冗談を入れます?」
「緊張を抜くためだ」
「ちょっと抜けました」
「なら成功だ」
ルナは少し笑った。
それでいい。
怖さは消えない。
だが、怖さだけで固まらなければ動ける。
根の間の外では、フェネキアの空が夕方へ傾き始めていた。人工の雲が赤みを帯び、白い都市の水路がその光を反射している。
この空を守るために、地下の根脈へ潜る。
昨日の俺なら、少し大げさだと思ったかもしれない。
だが、今は分かる。
守るものは、派手な勝利だけではない。
空。
水。
生活。
白狐の道。
ルナの白銀。
そういうもののために盤面を組むのも、悪くない。
「行くぞ」
俺は言った。
白狐が先に歩き出す。
ルナがその横へ並び、イリスが白澄砂を守るように後ろへ続く。
俺は最後に根の間を振り返った。
セレンが静かに頷く。
見られるなら、見せる。
見返されるなら、見せ返す。
淀みの魔蛇との二度目の接触が、始まろうとしていた。




