二人暮らし
宏人がお茶を淹れてくれたので、祥太はテーブルを片付けた。
よもぎ餅は宏人が買ってきてくれた。
「いただきます」
手を合わせてよもぎ餅を取った。
よもぎってこんな色なのか。
優しい草の香りと甘すぎないあんこがたくさん詰まって、手作り感がすごい。
「うま。こんなのどこに売ってたんだ?」
「学食に手作りってあったんだ。食堂の人が作ってるのかも」
「フーン。あ、今度、宏人の大学行ってみたいな」
「え? あ、うん。いいよ」
「一緒に授業とか受けられるかな」
「どうだろ。生徒がめちゃめちゃ多ければいけるかもしんない」
宏人と同じクラスだったのは、中学1年の時だけだ。あれからずいぶん経ったと思う。
よもぎ餅を二個食べてしまうと、熱い緑茶が美味しかった。
「ごちそうさま」
テーブルが小さいのか、大柄の男が二人も座っていたらそりゃあ狭いかもしれない。
宏人の膝が自分の膝に触れそうで、ドキドキしているのをばれないようにした。
「そういや、瑞穂は元気かな」
祥太が聞くと、宏人は一瞬きょとんとした。
「へ? 瑞穂? なんでいきなり。ずっと前に別れてから連絡を取っていないよ」
「あ、そうなのか。ごめん」
意外だった。
二人が別れたのは知っているが、瑞穂とは時々会うし、バーにも来てくれる。
ここのところ、自分の引っ越しでバタバタしていたので、瑞穂とは連絡を取っていなかった。
宏人たちは別れても、友だちとして連絡しあっていると思い込んでいた。
「瑞穂にはまだ、ここに引っ越したこと教えていなかったんだけど。言わない方がいいかな」
「瑞穂と会ってるの?」
宏人が驚いている。
「う、うん」
「どうして?」
「あ、友だちだから。たまに会うし、俺の店にも友だち呼んで来てくれるんだ」
「未成年なのに?」
「瑞穂はもう20歳だよ。前に自分の誕生日を祝ってくれって来たから」
「あいつ……」
宏人がふうっと息をつく。
ごめん、と謝るのもおかしいので、話題を逸らすことにした。
「宏人、テレビどうする?」
「え?」
祥太はテレビをほとんど見ない。
スマホのサブスクリプションで充分なので、宏人が欲しいならテレビを購入するけど。
宏人は、うーんと考えて、今はいらないかな、と言った。
「映画とか見たくなったらほしいかもしれないけど、パソコンで見られるしね」
「そうだな。じゃあ、テレビはいっか」
まだ何もない部屋だけど、暮らすうちに増えていくだろう。
祥太は夕飯の準備をしようと立ち上がった。
「手伝おうか?」
「いいよ。宏人は大学の宿題とかしたら」
「……うん」
祥太はできるだけ仕事のことは持ち込まないようにしようと思っていた。
茂樹たちは、マンションでカクテルを作ることもあるって言っていたけど、宏人にはバーテンダーのことを話すのは控えていた。
ただでさえ、茂樹さんをあまり好きじゃないみたいだし。
それから、夕食を食べて二人でゴロゴロしてから、先に宏人に風呂に入ってもらい、祥太がバスルームから出ると、宏人はベッドで横になっていた。
目を閉じている。
髪を乾かしていると、宏人がむくっと起き上がり、祥太の短い髪にドライアーを当てながら笑った。
「自然に乾きそうだね」
それくらい短い髪だった。




