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けなげな王子に愛を  作者: 春野セイ
第二部 やりなおし編
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見ないふり


 朝食兼昼食を食べ終えると鍵を持ってアパートを出た。

 ワンルームにキッチン、ユニットバスのアパートは、男二人が暮らすには狭すぎるかもしれない。

 けれど、祥太にとって描いていた夢の一つだった。

 階段を降りて駅の方へ向かう。

 カーテンを売っている量販店は、三つ隣の駅だ。

 電車に揺られていると、チラチラと斜め前の女の子がこちらを見ている気がした。自分と年が近い。大学生くらいに見えた。

 この間、髪を短く切ったら、19歳なのに中学生のような頭になってしまったと思っていた。

 やっぱりおかしいかな。少し恥ずかしい。

 自分も宏人のように落ち着いた髪型にしたいと思った。少しうつむいて目を逸らし、目的の駅で電車を降りた。

 10分ほど歩くと、目当てのお店が見えた。

 宏人の好きな色は紺色だったと思う。自分は水色が好きなので、混合色でもあったらなと探す。

 カーテンもいろいろあって、遮光カーテンを見つけた。

 二階の端部屋だけど、たぶん外の明かりが少し気になりそうなので、少し高いけど遮光カーテンを選んだ。

 気に入ったカーテンが見つかり、店を出た。宏人が喜んでくれたらと思う。


 ついでに机も見たかったが、実家から持ってきたテーブルで間に合っているし、もし、買うのなら宏人と相談したかった。

 気づけば、もう15時を回っている。

 夕ご飯の用意もしたかったので、材料を買って帰ろうと思った。

 引っ越しをしてから数日たった。

 実家から細々した物を持ってきたので助かった、と改めて思う。

 家を出るって大変だな。


 夕飯の材料を買って家に帰ると、宏人が帰っていた。

 鍵が開いていて、ドキリとして息を大きく吸った。平常心を装う。


「た、ただいまっ」

「おかえり。どこに行ってたの?」


 宏人が小さなテーブルにパソコンと大学ノートを広げていた。


「カーテン、買ってきた。夕べ、外がまぶしいって言ってたろ」

「え。あ、ありがと……」


 トートバックからカーテンを取り出して取り付けようとすると、宏人が立ち上がって手伝ってくれた。

 祥太もずいぶん背が伸びて、175センチはある。宏人とそんなに変わらない身長だ。


「俺はもう、そんなにチビじゃないよ」


 カーテンレールに手が届くのだから、大丈夫だよと言ったが、宏人は無言で手を伸ばした。

 無事にカーテンがつくと、部屋が落ち着いた気がして嬉しい。


「カーテン、一番に買うべきだったな」

「祥太が選んだの?」

「おう」

「一人で?」

「当たり前じゃん」


 何言ってんだ? と思う。


「だって、祥太、専門学校の友だちがたくさんいるから」

「そうか?」


 専門学校の生徒はほとんどが20歳以上なので、18歳から通っている未成年は珍しいらしい。だから、年上にはよく可愛がられた。

 春になったから気分転換に髪を短くしたら、よく似合っていると言われるが、からかわれているだけだと分かる。


「僕、お茶淹れるから、おやつ食べようよ」


 宏人はそう言うと、ケトルに水を足してお湯を沸かし始めた。

 宏人に任せて、祥太はフローリングに座るとテーブルに広げられた本を見た。

 将来どんな仕事をしたいのか分からないけど、パソコン関係の本に見える。自分には難しい。

 宏人は頭がよくて進学校に通っていたし、理系に進んだと聞いた。

 とにかく自分とは頭の出来が違うのだ。

 勉強の邪魔はしたくない。

 すると、本の中にフリーペーパーのバイト情報誌がちらりと見えた。

 バイトするのかなと思ったが、あんまり干渉しないようにと思っていたので、見なかったふりをした。


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