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けなげな王子に愛を  作者: 春野セイ
第一部 中学生編
40/51

バイバイ、祥太。第一部終了



 じゃあな、と去っていく祥太の後ろ姿を見て宏人は追いかけようとした。

 今、手を取らないといけないんじゃないか。

 でも、瑞穂との関係がばれて、ごめんと謝ってくれた祥太に、これ以上、何が言えるんだろう。


 本当は今すぐ追いかけたい。

 でも、もうどうしていいか分からない。


 宏人は遠ざかる祥太を見送ると、家の中に入った。


「ただいま……」

「おかえり、すぐにお風呂入っちゃってね」


 母が出て来てそう言った。


「うん……」


 宏人は頷いて、パジャマを部屋から取ってくるとそのままお風呂に入った。熱いシャワーを浴びるうちに目頭が熱くなってくる。


 祥太に嫌われてしまったら、生きていけない。

 バカだ。僕はなんてバカなんだ。

 いっそのこと、祥太を嫌いになれたらいいのに。

 もう、本当に諦めることができたら、ラクなんじゃないか?

 ふと、そう思った。


 自分は意地になって、無理してしがみついているんじゃないだろうか。

 祥太がいなかったら、たぶん女の子を好きになって、普通に彼女ができていたかもしれない。

 たまたま家が近くて、祥太がどの女の子よりもかわいく思えただけで、自分は道を踏み外してしまったんじゃないんだろうか。

 瑞穂と付き合ってみようか――。


 風呂から上がり、パジャマを着て髪を乾かすと、宏人はドキドキしながらスマホを手に取った。


『今日はごめんね。祥太の言う通り、瑞穂と付き合ってみる』


 そう入力してメッセージを送ると既読になった。返事はない。


『だから、友だちに戻れるまで祥太と会うのをやめるよ』


 そう書いた手が震えていた。勇気を出してメッセージを送る。

 送った瞬間、自分の恋が終わった気がした。すると、祥太から返事が来た。


『ああ。分かった。またな』


 それだけの返事が返ってきた。

 宏人はそれを読んで、泣いた。


「バイバイ……。祥太……」


 宏人は自分で言って、小さく笑った。


第一部 了

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