バイバイ、祥太。第一部終了
じゃあな、と去っていく祥太の後ろ姿を見て宏人は追いかけようとした。
今、手を取らないといけないんじゃないか。
でも、瑞穂との関係がばれて、ごめんと謝ってくれた祥太に、これ以上、何が言えるんだろう。
本当は今すぐ追いかけたい。
でも、もうどうしていいか分からない。
宏人は遠ざかる祥太を見送ると、家の中に入った。
「ただいま……」
「おかえり、すぐにお風呂入っちゃってね」
母が出て来てそう言った。
「うん……」
宏人は頷いて、パジャマを部屋から取ってくるとそのままお風呂に入った。熱いシャワーを浴びるうちに目頭が熱くなってくる。
祥太に嫌われてしまったら、生きていけない。
バカだ。僕はなんてバカなんだ。
いっそのこと、祥太を嫌いになれたらいいのに。
もう、本当に諦めることができたら、ラクなんじゃないか?
ふと、そう思った。
自分は意地になって、無理してしがみついているんじゃないだろうか。
祥太がいなかったら、たぶん女の子を好きになって、普通に彼女ができていたかもしれない。
たまたま家が近くて、祥太がどの女の子よりもかわいく思えただけで、自分は道を踏み外してしまったんじゃないんだろうか。
瑞穂と付き合ってみようか――。
風呂から上がり、パジャマを着て髪を乾かすと、宏人はドキドキしながらスマホを手に取った。
『今日はごめんね。祥太の言う通り、瑞穂と付き合ってみる』
そう入力してメッセージを送ると既読になった。返事はない。
『だから、友だちに戻れるまで祥太と会うのをやめるよ』
そう書いた手が震えていた。勇気を出してメッセージを送る。
送った瞬間、自分の恋が終わった気がした。すると、祥太から返事が来た。
『ああ。分かった。またな』
それだけの返事が返ってきた。
宏人はそれを読んで、泣いた。
「バイバイ……。祥太……」
宏人は自分で言って、小さく笑った。
第一部 了




