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けなげな王子に愛を  作者: 春野セイ
第一部 中学生編
4/51

ショック


 校舎を挟んで渡り廊下の向かいにあるのは体育館だ。

 宏人は体育館裏へと歩いていく。

 ひと気のないところに来ると、宏人はキョロキョロと見渡した。


「何やってんだ?」


 祥太が不思議そうな顔をしていると、いきなり宏人が祥太の背中に腕を回した。

 ひとまわりも大きい体にのしかかられて面食らった。


「な、何? どうした? 気分が悪くなったのか?」


 宏人は顔を伏せたまま首をぶるぶると振った。

 何だか様子が変だ。抱きつかれるのはいつもと一緒だが、その抱きつき方がちょっと違っていた。

 異常に力がこもっている。ちょっと苦しい。


「祥太、僕ね、合格したらどうしても伝えたい事があったんだ」

「え? あ、うん。何?」


 顔を上げると、潤んだ瞳の宏人が見つめていた。


「あのさ、祥太、好きな女の子いる?」

「女子? いや、いないけど」


 祥太はこの体勢は話にくいなと思いながら顔を上げた。

 宏人の顔は真っ赤だ。その顔を見てハッとした。


「もしかして、俺のクラスに気になる奴いんの? 誰? どんな子?」

「違うよ」

「じゃあ、宏人のクラスメート? 俺さ女子にからかわれてばっかりだから、あんまり興味ないんだよな。女子の話ならさ、竜之介の方が詳しいんじゃないのか?」


 頼りになれなくてごめんな、と言うと宏人が首を振った。


「祥太」

「あ、うん」


 呼ばれて顔を上げると、宏人が顔を寄せてきた。


「んっ?」


 このままでは顔面衝突するぞというところまできて、祥太はゴンと頭を体育館の壁にぶつけた。

 顔をしかめてぶつけた部分を両手で庇うと、宏人の顔が近づいて来たかと思うとそのままキスをされた。

 祥太は目を見開いた。

 え? 嘘だろ。宏人にキスされてるのか俺。

 あまりに驚きすぎて息もせず、呆然として目を見開いた。

 それから唇が離れて宏人が言った。


「祥太が好きだ」

「え? な、何……」


 宏人がもう一度顔を寄せて来てキスをしてくる。

 祥太は、怖くなって宏人を押し返そうとした。


「宏人……。やめ……」


 怖い。

 今までの宏人じゃない気がして、祥太は必死で手で押し返した。


「や、やめろっ。やめろ宏人っ」


 無我夢中で叫んだ。

 抵抗した祥太の手が、宏人の顔をしたたかに打ちつけた。衝撃で宏人がハッと目を覚ました。


「祥太……」

「いきなり何するんだよっ」


 睨みつけると、頬を押さえていた宏人の目からほろりと涙が零れた。

 祥太はそれを見てアッと思ったが、何も考えられずその場から逃げ出した。


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