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けなげな王子に愛を  作者: 春野セイ
第一部 中学生編
34/51

拒否



「いや、まだいるよ」

「よかった」


 茂樹がいると聞いただけで泣きそうになってしまった。

 すぐにでも会いたかった。急いでキッチンに向かうと足がもつれた。


「あっ」


 ひやりとする。心配で後ろを追いかけていた宏人が祥太の手をつかんだ。


「祥太っ。大丈夫?」

「うん」


 祥太はそっと手をどけながら体を引いた。


「大丈夫だから」

「うん……」


 宏人が手を離した。

 リビングに入ると、瑞穂と茂樹がグラスを洗っているのが見えた。二人の後ろに近づくと、瑞穂が気づいた。


「あっ。祥太、大丈夫?」

「うん」

「祥太くん、結局飲ませてしまったね。気が付くのが遅くてごめんね」


 茂樹の優しい言葉に首を振ると、瑞穂がからかった。


「顔が真っ赤だよ。吐いたんじゃないの?」


 図星をさされてバツが悪い。


「水、飲んだ方がいいね」


 茂樹がコップに水を酌んで手渡してくれた。


「はい。ゆっくり飲んで」


 ごくごくと飲むと少し楽になった。


「祥太くん、部屋に戻って休んでいた方がいいんじゃないかな。顔色悪いよ」

「うん……」


 茂樹の言葉に、後ろに立っていた宏人がここぞとばかりに手を伸ばした。


「僕が連れて行く」

「平気だよ」


 祥太がさりげなく腕を払った。宏人が少しだけ眉をひそめた。


「宏人って過保護ね」


 瑞穂が呆れたように言った。


「うるさいな」


 宏人はもう一度、祥太の腕を支えると抱きかかえるように背中をぎゅっと抱きしめた。祥太はびくりと震えたが、今度は逃げなかった。しかし、うな垂れたまま小さく言った。


「ごめん……」

「え?」


 宏人は祥太の言葉に驚いた。すると、そばで見ていた茂樹が、


「やっぱり僕が連れて行く」


 さらうように祥太を抱き寄せる。


「え?」


 祥太はびっくりした。声を上げる間もなく、宏人から奪った茂樹に手を引っ張られてキッチンを出て行った。二階へ上がり、ベッドにもう一度寝かされる。


「はい。もう、今日は寝なさい」


 祥太は込み上げてきた涙を隠して、枕に顔をうずめた。

 肩を震わせながら嗚咽を洩らすと、茂樹は何も言わずにずっと背中を撫でてくれた。


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