味見
連絡先を交換し終えると、瑞穂が嬉しそうに笑った。
「よろしくね、祥太って呼んでもいい?」
「いいよ」
瑞穂はぐいぐいと近寄るタイプだ。宏人と似てるな、と思った。
「茂樹さんもかっこいいねえ」
「瑞穂って、宏人の彼女だろ?」
祥太の言葉に瑞穂が一瞬、キョトンとする。
「ああ、うん。そう。そうだよ」
「他の男なんて見たら、宏人が焼くんじゃないのか?」
「別に見るだけならいいっしょ」
ちらりと宏人を見るが、相変わらず宏人は無言だ。茂樹と裕一は、顔を寄せて話しをしている。兄が何か言うと、茂樹は頷いてふわりとほほ笑んだ。
瑞穂がじっと見ながら、
「いいなあ、何の話しているのかなあ。ちょっと話してこよっと」
と、あっという間にそちらへ行ってしまった。取り残された宏人をちらりと見る。
「宏人」
「……何?」
宏人は目だけ動かして祥太を見た。不機嫌そうに見える。きっと、瑞穂が他の男の人にそばにいるから、虫の居所が悪いのだろう。
「いいのか?」
こそっと耳打ちすると宏人が眉をひそめた。
「いいって何が?」
「だって……、瑞穂が他の人としゃべってるけど、嫌じゃないの?」
「別に」
興味なさそうな言い方に祥太は唖然とした。
「瑞穂が勝手について来たんだし、僕には関係ない」
「関係ないって……。彼女なんだろ?」
不思議でたまらなかった。好きならきっと嫌なはずなのに。
「そうだけど。僕が干渉する事なんか何一つないんだ」
淡々と語る宏人を見て、そんなものだろうかと首を傾げた。その時、
「祥太くん」
と茂樹に呼ばれた。
「あ、はい」
祥太はすかさず立ち上がると茂樹のそばに寄った。
「ストロベリー・ミルク。これ、飲んでみてよ」
差し出された筒型のグラスにはストローが差し込まれている。顔を近づけると、苺の匂いがした。牛乳で割っているらしく、薄いピンク色をしている。ストローで吸い上げると、シャーベット状に苺の味がする。
「おいしい! けど、甘い……」
「どれ?」
突然横からグラスを奪われて、ハッとすると隣に宏人が立っていた。
びっくりしていると宏人はストローに口をつけて一気に全部吸い上げた。
「冷た……」
頭を押さえて顔をしかめた。
そして、空になったグラスをぐいっと押し付けると、祥太の腕をつかんでソファに座らせた。
「宏人っ」
祥太は腹が立って宏人のシャツをつかんだ。
「いきなり何すんだよ。瑞穂を取られたからって、こんなことしちゃダメじゃん」
「はあ?」
宏人は気が抜けた顔をした。
「瑞穂の事は放っておいて大丈夫だよ。それより、祥太はここに座ってて、絶対に動かないで」
「何でだよ」
「いいから動かないでっ」
クッションを押し付けられて祥太は宏人を見上げた。
「僕が、できたの持って来る」
スタスタと茂樹たちの所に行くと、トレーに様々なグラスを載せて、こぼさないようにしてヨロヨロ戻って来た。テーブルにそっと置く。
「はい、これ飲んで大人しくしてよ」
「あのなあっ」
目を剥くと宏人がまた悲しそうな顔をする。
何でそんな顔すんだよ、とひるんだ祥太は、仕方なく宏人が持って来てくれたグラスを持つとちびちびと飲み始めた。
それを見た宏人がほっとする。




