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けなげな王子に愛を  作者: 春野セイ
第一部 中学生編
28/51

何と考えてるの?



 翌日、祥太は家を出て驚いた。

 宏人が迎えに来ている。


「何で……?」


 祥太の呟く声は宏人には届いていない。

 宏人が何を考えているのか、全然分からなかった。


「おはよ。祥太」

「おう、おはよ……」


 無意識によそよそしい態度をとってしまった。自分は友達に戻れたのだから嬉しいはずなのに、宏人の顔を見るのがつらい。

 今日から宏人の家に行くのをやめるつもりだったが、向こうから来られるとは予想外だった。


「祥太、途中まで一緒に行こうよ」

「ああ……」


 宏人と歩き始める。何だか気まずくて、逆の立場になった気がした。

 隣にいるのにあまり話をしなかった。


「じゃあね、また」

「うん」


 宏人と別れて、祥太は同じ制服の生徒たちが向かう方向へ歩き始める。数分で学校に到着すると、下駄箱でシューズに履き替えてそのまま教室へ入る。カバンをロッカーに押し込み、椅子に座ってほっと息をついた。

 その時、目の前に春希が現れて、満面の笑みであいさつした。


「おはよっ」

「お、おはよう」

「土曜日はありがとう。僕、すごく楽しかった」

「ああ、俺も」


 そういや、春希の家にお泊りさせてもらったんだ。


「今日のお昼一緒に食べようよ」

「ああ、いいぜ。竜之介もいるけどいい?」

「竜之介って、隣のクラスの森くんだね。いいよ。もちろん」


 昼休み、三人で机をくっつけて、お弁当を食べ始めた。

 竜之介は、春希が友だちになったことが嬉しいと言って、いろいろ話かけている。

 二人の会話を聞いている方が気が楽で、祥太はあまり話さなかった。


「そうや、祥太。いいかげん宏人とは仲直りしたんか?」

「え?」


 いきなり宏人の名前が出て、祥太は心臓がドキンとした。春希が首を傾げた。


「宏人って誰? あ、もしかして、祥太が言ってた無理やりキスされたって人?」


 春希の言葉に竜之介がぶっとご飯を吹き出しそうになった。


「きったね、竜之介、何やってるんだよ」


 祥太がサッと弁当を避けたが、竜之介から唸るような声がした。見ると、険しい顔でこちらを見ている。その横で春希がキョトンとしていた。


「その話、詳しく聞かせてもらおうか」

「えっと、その……」


 祥太はもそもそと残りのお弁当を食べながら、二人に説明する羽目になった。春希は目を丸くしているし、竜之介は言葉を失っていた。


「森くん、大丈夫?」


 逆に春希が心配そうにしている。

 竜之介は肘をついて額を押さえると苦し気に言った。


「俺が甘かった。まさか、あの日そこまでひどいことがあったなんて、想像もしてなかった」

「もういいよ。仲直りしたから」

「仲直り?」

「う、うん……」

「宏人が謝ったんか?」

「え? うん」

「はあ、祥太。もう隠さんでええで。でも、宏人のことを思って言わんだけなんやろうけど……」


 春希は口を挟まずに静かに見ている。

 以前の春希だったら、たぶんつまらなさそうにしているように見えたが、今日は少し違っていた。

 祥太は、宏人が謝ってくれて、そして彼女ができた話をすると、竜之介の顔がますます歪んだ。


「マジなのか?」

「うん。本当だよ」

「信じられんけど……。はあ、そうか。だったらもう、祥太を傷つけるようなことはせんのやな」



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