何と考えてるの?
翌日、祥太は家を出て驚いた。
宏人が迎えに来ている。
「何で……?」
祥太の呟く声は宏人には届いていない。
宏人が何を考えているのか、全然分からなかった。
「おはよ。祥太」
「おう、おはよ……」
無意識によそよそしい態度をとってしまった。自分は友達に戻れたのだから嬉しいはずなのに、宏人の顔を見るのがつらい。
今日から宏人の家に行くのをやめるつもりだったが、向こうから来られるとは予想外だった。
「祥太、途中まで一緒に行こうよ」
「ああ……」
宏人と歩き始める。何だか気まずくて、逆の立場になった気がした。
隣にいるのにあまり話をしなかった。
「じゃあね、また」
「うん」
宏人と別れて、祥太は同じ制服の生徒たちが向かう方向へ歩き始める。数分で学校に到着すると、下駄箱でシューズに履き替えてそのまま教室へ入る。カバンをロッカーに押し込み、椅子に座ってほっと息をついた。
その時、目の前に春希が現れて、満面の笑みであいさつした。
「おはよっ」
「お、おはよう」
「土曜日はありがとう。僕、すごく楽しかった」
「ああ、俺も」
そういや、春希の家にお泊りさせてもらったんだ。
「今日のお昼一緒に食べようよ」
「ああ、いいぜ。竜之介もいるけどいい?」
「竜之介って、隣のクラスの森くんだね。いいよ。もちろん」
昼休み、三人で机をくっつけて、お弁当を食べ始めた。
竜之介は、春希が友だちになったことが嬉しいと言って、いろいろ話かけている。
二人の会話を聞いている方が気が楽で、祥太はあまり話さなかった。
「そうや、祥太。いいかげん宏人とは仲直りしたんか?」
「え?」
いきなり宏人の名前が出て、祥太は心臓がドキンとした。春希が首を傾げた。
「宏人って誰? あ、もしかして、祥太が言ってた無理やりキスされたって人?」
春希の言葉に竜之介がぶっとご飯を吹き出しそうになった。
「きったね、竜之介、何やってるんだよ」
祥太がサッと弁当を避けたが、竜之介から唸るような声がした。見ると、険しい顔でこちらを見ている。その横で春希がキョトンとしていた。
「その話、詳しく聞かせてもらおうか」
「えっと、その……」
祥太はもそもそと残りのお弁当を食べながら、二人に説明する羽目になった。春希は目を丸くしているし、竜之介は言葉を失っていた。
「森くん、大丈夫?」
逆に春希が心配そうにしている。
竜之介は肘をついて額を押さえると苦し気に言った。
「俺が甘かった。まさか、あの日そこまでひどいことがあったなんて、想像もしてなかった」
「もういいよ。仲直りしたから」
「仲直り?」
「う、うん……」
「宏人が謝ったんか?」
「え? うん」
「はあ、祥太。もう隠さんでええで。でも、宏人のことを思って言わんだけなんやろうけど……」
春希は口を挟まずに静かに見ている。
以前の春希だったら、たぶんつまらなさそうにしているように見えたが、今日は少し違っていた。
祥太は、宏人が謝ってくれて、そして彼女ができた話をすると、竜之介の顔がますます歪んだ。
「マジなのか?」
「うん。本当だよ」
「信じられんけど……。はあ、そうか。だったらもう、祥太を傷つけるようなことはせんのやな」




