カクテルづくり
先ほどの部屋に三人は移動する。
部屋の中は遮光カーテンで少し薄暗く、茂樹に案内されて、二人はカウンターの前のスツールに腰かけた。
「せっかくだから、自分で作ったカクテルを飲んでみる?」
「いいのっ?」
ずっと触って見たいと思っていたのだ。
「もちろんだよ」
「宏人くんもやるでしょ?」
「やります……」
「よかった」
にっこりと笑うと、茂樹はシェーカーを三つ取り出した。
「じゃあ、まずは振り方の練習をしてみようか。材料は水を用意するから、ちょっと待っていてね」
茂樹がいなくなると、祥太はシェーカーのトップを外したり真ん中にある蓋を弄ったり、見よう見まねでシェークしてみた。
「上手いだろ」
カシャカシャと上に下に振り回していると、宏人が口をへの字にしたまま言った。
「……知らない」
「宏人ってば、さっきから何怒ってんの? 茂樹さんの料理上手かっただろ?」
「美味しいからむかつく」
「はあ?」
理解できずに顔をしかめると、茂樹が戻って来た。
「まず初めにシェーカーの名称から説明するね。このフタの部分を『トップ』。真ん中が『ストレーナー』。胴体を『ボティ』って言うんだ」
二人は頷いたが、祥太はたぶん、あまり理解できていない。
「じゃあ、ボディに氷を四つほど入れてみて。それから、材料は水を使うからね。そして、ストレーナーをはめる。中身が零れないようにしっかりとはめてね」
まごまごした手つきで、祥太はストレーナーをはめた。
満足して顔を上げると、茂樹が笑った。
「最後にトップをはめて。そして、右手は、親指でトップを押さえて、小指と人差し指で挟んで」
言われた通りにボディを持とうとしたが、祥太の手は少し小さい。
「あれ……?」
言いながら首を傾げると、茂樹が背後にまわって手を添えてくれた。
「左手の中指と薬指は底を押さえて、親指はストレーナーが外れないようにしっかり押さえてね。他の指はボディを押さえるんだよ」
「う……ん」
「ほら、肩の力抜いてね」
にっこりと笑いかけられて、祥太は赤くなる。
「は、はい」
「それから上向きに肘を前に出して戻す」
「あ、あれ?」
「肘を伸縮させて上下に振るんだよ。見ていて」
茂樹が祥太の手にそっと触れるとするりとシェーカーを取った。
目にも止まらぬ速さでシェーカーをリズミカルに振った。
「かっこいい……」
「中の氷と材料を混ぜるように十五回から二十回ほど振るんだ」
シェーカーの中身を開けると氷は粉々になっていた。要領は得たとばかりに、祥太はシェーカーを振り始めた。その隣では宏人が指示を受けていた。
「宏人くんは指がしなやかで長いね」
などと褒められている。
祥太は、なぜか自分の事のように誇らしくなった。えへへと笑いながら、シェーカーを振り続けていると、その辺でいいよと茂樹に止められた。
「あんまりボディを握り締めると、手のひらの温度で氷が溶けて水っぽくなるから気をつけてね」
「う、うん」
祥太は自分の手のひらを広げてみた。どう足掻いても自分の手のひらは大きくはならない。しっかり握らなければするりと外れそうだし、でも、氷が溶けすぎてまずくなるのは嫌だと思った。
「じゃあ、一つソフトドリンクを作ってみようか」
「やったあ」
祥太の嬉しそうな様を見て、宏人がますます口をへの字に曲げた。




