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けなげな王子に愛を  作者: 春野セイ
第一部 中学生編
23/51

カクテルづくり


 先ほどの部屋に三人は移動する。

 部屋の中は遮光カーテンで少し薄暗く、茂樹に案内されて、二人はカウンターの前のスツールに腰かけた。


「せっかくだから、自分で作ったカクテルを飲んでみる?」

「いいのっ?」


 ずっと触って見たいと思っていたのだ。


「もちろんだよ」

「宏人くんもやるでしょ?」

「やります……」

「よかった」


 にっこりと笑うと、茂樹はシェーカーを三つ取り出した。


「じゃあ、まずは振り方の練習をしてみようか。材料は水を用意するから、ちょっと待っていてね」


 茂樹がいなくなると、祥太はシェーカーのトップを外したり真ん中にある蓋を弄ったり、見よう見まねでシェークしてみた。


「上手いだろ」


 カシャカシャと上に下に振り回していると、宏人が口をへの字にしたまま言った。


「……知らない」

「宏人ってば、さっきから何怒ってんの? 茂樹さんの料理上手かっただろ?」

「美味しいからむかつく」

「はあ?」


 理解できずに顔をしかめると、茂樹が戻って来た。


「まず初めにシェーカーの名称から説明するね。このフタの部分を『トップ』。真ん中が『ストレーナー』。胴体を『ボティ』って言うんだ」


 二人は頷いたが、祥太はたぶん、あまり理解できていない。


「じゃあ、ボディに氷を四つほど入れてみて。それから、材料は水を使うからね。そして、ストレーナーをはめる。中身が零れないようにしっかりとはめてね」


 まごまごした手つきで、祥太はストレーナーをはめた。

 満足して顔を上げると、茂樹が笑った。


「最後にトップをはめて。そして、右手は、親指でトップを押さえて、小指と人差し指で挟んで」


 言われた通りにボディを持とうとしたが、祥太の手は少し小さい。


「あれ……?」


 言いながら首を傾げると、茂樹が背後にまわって手を添えてくれた。


「左手の中指と薬指は底を押さえて、親指はストレーナーが外れないようにしっかり押さえてね。他の指はボディを押さえるんだよ」

「う……ん」

「ほら、肩の力抜いてね」


 にっこりと笑いかけられて、祥太は赤くなる。


「は、はい」

「それから上向きに肘を前に出して戻す」

「あ、あれ?」

「肘を伸縮させて上下に振るんだよ。見ていて」


 茂樹が祥太の手にそっと触れるとするりとシェーカーを取った。

 目にも止まらぬ速さでシェーカーをリズミカルに振った。


「かっこいい……」

「中の氷と材料を混ぜるように十五回から二十回ほど振るんだ」


 シェーカーの中身を開けると氷は粉々になっていた。要領は得たとばかりに、祥太はシェーカーを振り始めた。その隣では宏人が指示を受けていた。


「宏人くんは指がしなやかで長いね」


 などと褒められている。

 祥太は、なぜか自分の事のように誇らしくなった。えへへと笑いながら、シェーカーを振り続けていると、その辺でいいよと茂樹に止められた。


「あんまりボディを握り締めると、手のひらの温度で氷が溶けて水っぽくなるから気をつけてね」

「う、うん」


 祥太は自分の手のひらを広げてみた。どう足掻いても自分の手のひらは大きくはならない。しっかり握らなければするりと外れそうだし、でも、氷が溶けすぎてまずくなるのは嫌だと思った。


「じゃあ、一つソフトドリンクを作ってみようか」

「やったあ」


 祥太の嬉しそうな様を見て、宏人がますます口をへの字に曲げた。


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