気まずい空気
気まずい空気が流れ、祥太はどうしていいか分からなくなった。
すると、宏人のポケットからスマホが鳴り始めて二人は同時にびくっとした。
「ス、スマホ鳴ってるよ……」
祥太が言うと、宏人は一瞬ためらってからスマホを取り出した。メッセージでも入っていたのか、しばらくそれを見ていたが息を吐きだす。
「か、彼女?」
「え? あ、ああ……。うん……」
「なんて入ってたんだよ」
「あ、えっと、昨日、僕がちょっと電話しちゃったから、どっか行かないかって誘って来たんだけど……」
上目づかいに祥太を見てくる。祥太は何だかむかむかしながら、宏人を睨んだ。
「行けばいいじゃん」
「でも……せっかく祥太と仲直りしたのに」
「そっちの方が大事だろ」
思わず突き放すように言うと、宏人が傷ついた顔をした。
「そんな言い方しなくてもいいじゃないか」
「じゃあ、どんな言い方したらいいんだよ」
また、気まずい空気が流れ出す。祥太は、こんな言い方をする自分が嫌だと思った。
「ごめん……。俺が悪かった。宏人に彼女ができたから、ちょっとショックだったんだよ」
「えっ? どうしてっ?」
「う、うらやましいから……」
思ってもいないことを言ってしまう。
「とにかく、行けよっ」
「や、やだよっ。瑞穂なんかより、祥太の方が大事だっ」
彼女の名前、ミズホって言うんだ。
いちいち宏人の言葉に気持ちが揺らぐ。
「それと俺、今日、出かけるから……」
「え? ど、どこ行くの?」
「兄ちゃんの……友だちのところ」
咄嗟に嘘をついてしまった。
「だ、誰? 僕の知っている人?」
「宏人は知らないと思う……」
「僕も一緒に行くっ」
「ええっ? だっ、ダメっ」
「どして?」
「だ、だって……」
言い訳が見つからない。茂樹に連絡など取っていない。でも、スマホで連絡先の交換はしてもらっていた。だからと言って図々しく連絡する勇気もない。
どうしたらいいのか。今さら嘘だとは言えない。
「宏人は関係ないから……」
「そんなひどい事言わないでよ。裕一兄ちゃんの友だちなら、僕だって知り合いになる権利はあるはずだよ」
めちゃくちゃなこと言っている。
祥太は泣きたくなった。
「もう、宏人、頼むから出てってよ」
「そんな……」
がっくりと肩を落とす。見ていると、こちらがまるでいじめているような気持ちになってしまった。
宏人の悲しそうな顔を見るのは辛い。
祥太はスマホを取ると、チラと宏人の方を見た。
「し、茂樹さんに、宏人も一緒に行っていいか、確認してみる」
「い、いいの?」
「仕方ないだろ。行きたいって言うんだからさ」
茂樹さんは優しい人だから、きっといきなり連絡をしても怒らないはずだ。
祥太は、ドキドキしながらスマホでメッセージを送った。
どうか、繋がりませんように、と祈る。すると、すぐに既読になった。
あ、と思って文章を書いて送ると、おいでよ、と返事が来て拍子抜けする。
「来ていいって……」
呆然と言うと、宏人が嬉しそうに笑った。
「やった。いい人だね」
「そだな……」
ごめんなさい、茂樹さん。
祥太はこっそりと謝った。




