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シンデレラ




 隣では宏人が指示を受けていた。


「宏人くんは指がしなやかで長いね」


 などと褒められている。

 祥太は、なぜか自分の事のように誇らしくなった。

 えへへと笑いながら、シェーカーを振り続けていると、その辺でいいよと茂樹に止められた。


「あんまりボディを握り締めると、手のひらの温度で氷が溶けて水っぽくなるから気をつけてね」

「う、うん」


 祥太は自分の手のひらを広げてみた。

 どう足掻いても大きくはならない。しっかり握らなければするりと外れそうだし、でも、氷が溶けすぎてまずくなるのは嫌だと思った。


「じゃあ、一つソフトドリンクを作ってみようか」


 茂樹は最初から用意してあったのか冷蔵庫から三種類のジュースを取り出した。それを見て祥太が手放しで喜んだ。


「やったあ」


 その嬉しそうな様を見て、宏人がますます口をへの字に曲げた。

 カウンターに並べられたのは、オレンジジュース、レモンジュース、パイナップルジュースである。

 それぞれ計量カップに入っていた。


「これから『シンデレラ』というノンアルコールカクテルを作ってもらうね」

「シンデレラ?」


 宏人が首を傾げた。


「うん。一言で言えばミックスジュースだけど、『シンデレラ』と聞けば君たちもなじみが深いと思うし、これもちゃんとしたカクテルなんだよ」

「そうなんだ」


 祥太は三つのジュースを眺めた。

 それぞれ色も味も違う。混ざり合うとどんなカクテルになるのだろう。考えるとわくわくした。


「僕も一緒に作るからそれを真似てみて。まず氷を入れる。次に材料を全部入れて。それからさっき教えたように順番にストレーナーとトップをはめてね。さ、シェークして」


 茂樹が腕を曲げ下りするのを真似て二人も一生懸命シェークした。

 同じ時間シェークすると、止めていいよと言われて二人は手を下ろす。

 冷やしておいたカクテルグラスにそれぞれ出してみると、微妙に色合いが違って見えた。

 オレンジとパイナップルの量が同じなせいか、濃い黄色に見える。祥太は自分のが一番水っぽく薄まっている気がして不安に駆られた。


「さあ、乾杯しよう」


 茂樹が言って軽くグラスを持ち上げると口に含んだ。


「どう? 自分で作ったカクテルは美味しいでしょう?」


 祥太は味を見て目を見開いた。


「美味しい!」


 ちょっとぬるいけど、見た目よりは意外と美味しい。


「宏人のは?」


 祥太は宏人の方に体を寄せた。


「飲んでみる?」

「うん」


 宏人のを味わってから祥太はいっそう目を見開いた。


「俺のより冷たくて味が濃い」

「どれ?」


 茂樹が続いて味見をした。


「ん。上手に混ざっているね。宏人くんは器用なんだね」

「別に……」


 宏人は少し恥かしそうにして顔を逸らした。





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