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けなげな王子に愛を  作者: 春野セイ
第一部 中学生編
13/51

部活


 放課後にあるとすぐに部活へ行く。

 ユニフォームに着替えると運動場へ走った。

 サッカー部が練習する時間帯は決められているので、遅れるとみんなに迷惑がかかるのだ。

 ストレッチをして、運動場の周りを走った後、トレーニングメニューに入る。

 祥太は、ランニングをしているとフェンスの向こうでスケッチブックを持って絵を描いている少年に気づいた。 

 クラスメートの夕月ゆうづき春希はるきだ。

 珍しい名前だから覚えているし、席も隣だった。

 祥太が運動場を三周し終わっても、彼はまだ何か描いている。

 あんまり意識したことがなかったけど、なぜか今日は特に春希のことが気になった。

 そういや、春希っていつもサッカー部の練習中、絵を描いているよな。

 走り込みが終わると、先輩とペアを組んでドリブルのメニューに入る。

 相手にパスをする練習中、一瞬、ボールから目を逸らした途端、先輩の罵声が響いた。


「柏木っ、よそ見してんじゃねえっ」

「はいっ、すみませんっ」


 祥太の足をすり抜けてフェンス近くへ行ったボールを追いかける。

 ボールは春希の目の前まで転がっていた。

 春希はちょうどスケッチブックを片付けて立ち上がったところだった。その時、ぽろっと膝から何かが落ちた。


「あっ」


 祥太は小さく声を上げて呼び止めようと思ったが、先輩の声に我に返った。


「早くしろっ」

「あっ、はいっ」


 祥太はボールを蹴るとすぐに先輩の方へ走った。

 春希が落とした物が気になって仕方がなかった。


 サッカー部が使える時間ぎりぎりまで練習が続き、クラブチームに入っている生徒たちは急ぐように帰って行くと、部活組はその後で部室に戻って着替えを始めた。

 祥太は制服に着替えると、さっきまで春希が座っていた場所に行ってみた。

 場所は分かっている。春希の膝から落ちた物はまだそこにあった。

 雑草の中にぽつんと落ちていたのは、ちびたBの鉛筆だった。

 こんな鉛筆、なくっても困らないだろう。けれど、何となくそれが気になって、春希に渡したいと思った。


 祥太は、鉛筆を拾うと春希を探すことにした。

 春希がサッカー部以外でもスケッチをしていることを知っていた。

 暗くなるまで、どこかで絵を描いている姿を何度か見かけたことがある。

 きっとまだ、校内にいると思った。


 学校に残っている部活生やクラスメートをつかまえて聞いてみると、春希が弓道部の方へ向かっていたと情報を得た。

 祥太は運動場のはずれにある弓道場へ向かった。

 ちょうど弓道部員たちが、道着姿で、少し太めのゴムを弓のようにして引っ張っているのが見えた。

 春希が座って絵を描いている。

 その姿は真剣で、祥太がそっと近づいて隣に座っても全然気づかなかった。


 すごい集中力だな、と感心して、声をかけるのはためらってしまった。

 そして、そっとスケッチブックをそろそろと覗き込んでみた。

 春希は一生懸命、彼らの道着姿を描いているようだった。

 しばらくそれを見ていると、ようやく春希が手を止めて横を見た。

 そして、彼の目が大きく見開かれた。

 こいつ、目がぱっちりしていて、かわいい顔してたんだな、と思った。


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