クラスメート
「よ!」
「な、何してんの? えっと……、柏木くんだよね」
俺の名前を知ってくれているんだ、と祥太は少し嬉しかった。
「これ、さっき落としたろ。見ていたから間違いない」
祥太がちびた鉛筆を渡そうとすると、春希はぎょっとした。
「え? そのためにわざわざ?」
「うん。だって、大切かなと思って」
普通こんなにちびた鉛筆なら捨てると思う。春希は申し訳なさそうな顔をした。
「いいのに。僕、たくさん持っているから」
そう言って春希はトートバックの中から大きめの筆入れを見せてくれた。そこには様々な鉛筆が入っていた。
「あ、そうなのか……」
少し残念そうな顔をすると、春希が首を傾げた。
「どうかした?」
「実はさ……。俺、夕月に話しかけたかったんだ……と思う」
「え? 僕に? 何で……」
「それさ、いつも何を描いてんの?」
祥太の質問に春希は一瞬、ドキッとしたような顔をしてスケッチブックを自分の胸に引き寄せた。
「下手だから見せたくない」
「見せろ、なんて言ってないよ。何描いてんの? って聞いたんだろ」
「僕……、将来、画家とかイラストレーターになりたいんだ。でも、すっごく絵が下手だから、練習している」
「ふーん」
さっき勝手に見ちゃったけど、もっと他のも見たい。でも、ただ見せてくれ、なんてフェアじゃないよな、と考える。
「なあ、いつも俺らのサッカーしているところを描いてんだろ?」
「え? あ、う、うん。そうだけど……」
あ、こいつ、何が言いたいんだろうって顔してるな。
祥太は、春希に鉛筆を渡しながら言った。
「サッカーしているところを描かせてやるから、代わりに絵を見せてよ」
「は?」
春希が目をいっぱいに見開く。
「え、もしかしてモデルになってくれるの? 本当に?」
「うん? モデルって?」
「今、自分が言ったでしょ。描かせてやるって」
「え? そんな事言った? 俺はサッカーしているところを描かせてやるって……」
「同じ事だよね。やった。いいよ、君が僕の絵のモデルになってくれるなら」
「えっと……。ま、いいか」
何だか分からないが、とんとん拍子に話が進んで、祥太は嬉しくなった。
「じゃあ、今日は僕の家に泊まりに来てよ。柏木くんを描きたいから」
と、春希が言った。




