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けなげな王子に愛を  作者: 春野セイ
第一部 中学生編
12/51

寝坊



 翌日、祥太は朝寝坊をしてしまった。

 遅刻ぎりぎりで学校へ行く。

 でも、今日は宏人の家には行くつもりはなかった。

 まだ、自分は心の整理とやらができていなかったから。

 会いに行かないって決めた時、少しほっとした。

 もう、あんな辛い気持ちをしなくていいんだ、と思ったのだ。


 教室にぎりぎりの時間で入る。

 高校に入ったからって友達がたくさんできたわけではない。

 同じ中学から来た子もいれば、竜之介はクラスが違っていた。


 昼休みは竜之介と一緒にお弁当を食べた。

 竜之介は、大学に進学するので今から文系か理系かを悩んでいるようだった。

 自分は大学へ行くかどうかもまだ、分からない。


「宏人は元気か?」


 ご飯を食べ終わった竜之介が何気なく言った。


「え?」

「俺、あんまり連絡とっていないんや。仲直りしたんやろ?」


 いつもの祥太なら、うん、とか言ってごまかしてきたが、今日はちくっとお腹が痛かった。


「……。まだ、話せてない」

「は?」


 竜之介がびっくりした顔をした。


「嘘やろ」

「ごめん。言い出せなくて」

「どういうこと?」


 祥太は、宏人に話しかけても無視されていることを説明すると、彼はみるみるうちに顔をこわばらせた。


「あいつ、何を怒っとんのや」


 竜之介には、ケンカした原因を説明できていない。

 でも、さすがに言えなかった。

 恥ずかしさもあり、素直に話す勇気がない。


「俺、祥太が言いたくないことを無理に聞きたいなんて思わん。でも、辛かったらいつでも相談してや」

「ありがと」


 竜之介はいいやつだ。無理に聞いてこないから、一緒にいて気が楽なのかもしれない。


「サッカーの部活、大変そうやな」


 竜之介が話題を変えて言った。

 彼は部活には入っていないので、授業が終わるとすぐに帰る。

 祥太は体を動かすのは好きなのでサッカー部は楽しかったが、練習量は半端じゃないので確かにきつかった。


「うん。でも、走るのも早くなった気がするし、みんな頑張ってるから俺も頑張ろうって思う」

「はあー、まさか、俺の祥太がこんなにたくましくなるなんて思わんかったわ」

「何だよそれ」


 笑うと竜之介が祥太の肩に腕を回した。


「だいぶ、背も伸びたよな。筋肉もついたし、宏人のつけたあだ名ももう関係ないな」


 姫と呼ばれていた中学の頃がなつかしい。それに対してムッとする気持ちもない。

 中学の時の演劇は楽しかった。

 白雪姫に選ばれた時は自分は男なのにって思ったけど、今ではいい思い出だ。


「もう、俺は姫じゃないよ」

「ほんまや」

「俺は今の祥太の方が好きやな」

「どういう意味だよ」

「友達ってことだよ」


 竜之介がにっこりと笑った。


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