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路傍の石  作者: マグガネ
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7/10

第七話

このゲームを始めてから、十日が経過した。毎日8時間から12時間ほど、このゲームをしている。久しぶりにステータス画面を開いてみる。




【ステータス】




個体名 :ソラ




種族  :石




ジョブ :無職




レベル :6




生命力 :220




魔力  :0




筋力  :0




耐久  :220




敏捷  :0




器用  :0




知力  :78




幸運  :35




スキル




・硬化 Lv.10




・ヒール Lv.1




・観察 Lv.2




・分析 Lv.1




称号




・異邦人




状態:不動




レベルが6まで上がっていた。




「ようやく進化まで半分を切ったか」




......と、普通なら思うところだ。しかし、このゲームの経験値はレベルが上がるごとに倍々になっていく。つまり、ここから先はこれまでの16倍の経験値が必要になる。直視したくない現実だ。とはいえ、焦ったところでどうにかなるものでもない。




「ゆっくり、のんびり配信しながら気長にやっていくしかないか」




それよりも、意外だったのがスキルについてだ。観察は毎日のように使っているから、成長していること自体は分かっていた。試しに注視して詳細を表示してみる。




【観察 Lv.2】




効果:周囲を凝視することにより、経験値を微小に取得。


   周囲数メートルの俯瞰視点の解禁


   得られる情報が多くなる。




取得条件:対象を注意深く見ることにより取得可能。




「得られる情報が多くなる、か」




どうやらレベルが上がったことで、単純に経験値を取得するだけのスキルではなくなったらしい。実際、かなり便利になっている。以前は、観察を使ってもこんな感じだった。




【観察】




対象:赤髪




戦闘力:?




しかし、観察が成長してから同じプレイヤーを見てみると、表示される情報が変わっていた。




【観察】




対象:対象




前回観察:3日前




筋力:上昇




敏捷:微増




魔力:変化なし




戦闘技術:大幅に向上




総合的な成長度:高




このように、以前観察したプレイヤーについては、前回からどれくらい成長したのかまで分かるようになっていた。ひたすらPVPを観察している俺にとっては、かなりありがたいスキルだ。




そして、もう一つ。いつの間にか新しいスキルまで取得していた。その名も――。分析。




注視して詳細を表示する。




【分析 Lv.1】




効果:観察した対象の行動から、一定の傾向を推測できる。




取得条件:モンスターや対人戦をよく観察し、




     自分なりの仮説を立てる。




「これも、かなりいいスキルだな」




何しろ、すでにその効果を実感している。昨日、PVPを観戦していたときのことだ。いつものようにコメント欄で雑談をしながら、試合を眺めていた。




「おっ、あの赤髪のやつ今日も来てる」




ウォーミングアップなのかジャンプしたり、ストレッチをして体をほぐしている。




『あいつ毎日来てないか?』




『せやな。石ニキのアーカイブも見たけど毎日いるわ』




『注目してて草』




「でも、あいつ勝ったり負けたりで安定しないんだよな」




彼の戦績は良くて五分で、なんなら少し負け越しているような状態だった。




『わかる。なんか知らんけど安定しないんよね』




『思いつきで行動してる感あるんだよね』




「あ~、そうかも。手探りでやってて、強い行動と弱い行動がまだ分かってない感じよね」




『おっ、始まるか?』




ステージ上で、赤髪のプレイヤーが相手と距離を取る。相手の出方を見るためか両者が距離を置く。ここ数日見てきたが、最初に行う行動としては安定択だった。




「まあ、あれはあれで成長してるのが分かるから面白いんだけどね」




『初めてゲームやってた時のこと思い出すわ。応援したくなる』




その瞬間だった。赤髪の身体がわずかに沈み込んだ。そのままの勢いで相手に突っ込んでいく。




「おっ」




俺は思わず声を上げる。




「次、スキルくるね。あの薙ぎ払いみたいなやつ」




次の瞬間。赤髪が大きく身体をひねり、薙ぎ払いを放った。




『えっ、なんで分かったん?』




「いや......毎日見てるからなんだろうけど。」




俺は少し考えてから答えた。




「あいつの行動の傾向というか、癖みたいなのが分かるようになってきたんだよね」




だが、その薙ぎ払いは相手のバックステップによってあっさりとかわされてしまった。そして、その薙ぎ払いの後隙を逃さず相手が踏み込む。赤髪は痛い一撃を食らってしまった。しかもその攻撃をよけようとしたせいか少し体勢を崩している。こうなると相手はこのチャンスを逃すはずがない。攻撃のテンポを一段上げて攻勢に徹する。赤髪は防戦一方になった。




「......あ~」




俺は思わず声を漏らす。




「これ、負けパターンに入ってるわ」




『ほう、その心は?』




「今、防戦一方で徐々に体力削られてるじゃん?」




ステージ上で、赤髪がさらに攻撃を受ける。




「それで、たぶん焦りが出てくるんよね」




『ほうほう』




「それで多少無理してでも攻めに転じようとする。そのときに選ぶ技が、ほんの短い時間だけど硬直する技なんよ」




赤髪が一瞬、距離を取った。俺はその動きを見ながら続ける。




「その硬直を本人がまだちゃんと理解してないんだと思う。だから、そこで攻撃を差し込まれて――」




相手の攻撃が途切れた。その瞬間。赤髪が大技を繰り出そうとする。




「ほら」




俺が呟いた直後だった。相手がその一瞬の行動を見てタックルをかます。その衝撃で行動はキャンセルされ赤髪はしりもちをついた。そこに相手が止めとばかりに件で突き刺し、赤髪のHPが一気に削り切られた。ステージ上には相手の勝利という文字が表示された。




『マジやんけ』




『全部その通りになって草』




『なんで分かるんだよ。きっしょ』




「そりゃあ、伊達にPVPを観戦してるわけじゃないっすよ」




冗談めかしてそう答えた、その時だった。視界の端に、見慣れない光が浮かび上がった。




――ピコン。目の前にウィンドウが表示される。




【スキル『分析』を取得しました】




「......お?」




どうやら今の観察と仮説が、条件を満たしたらしい。俺は新しく手に入ったスキルを眺めながら、少しだけ笑った。




「なるほど......」




これなら、石でもできることはまだまだありそうだ。

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