第六話
それから数日の間、ぼちぼちとコメントが来るようになった。
とはいえ、視聴者数は一桁前半を保っている。
それでも、数人とはいえ見に来てくれるだけでかなり嬉しかった。
雑談に付き合ってくれる人たちのおかげで、精神的にも大いに救われている。
中には、初めてコメントをくれた視聴者もいて、かなりの頻度で見に来てくれているようだった。
そんな中、最近になって視聴者数が二桁に届くようになった。
その理由は、スカウトだ。
今いる広場の近くには、プレイヤー同士でPVPを行えるステージがある。
そこで、しばしばプレイヤー同士の試合が行われている。
有名プレイヤーが試合をするとなれば、多くの人間が押し寄せ、かなりの盛況ぶりを見せる。
そして、当然ながら、その試合風景を映した配信も大いに賑わう。
だが、俺の配信を見に来ている連中は少し違う。
有名プレイヤーの試合ではなく、まだ名も知られていないプレイヤー同士の試合を観戦するためにやって来ているのだ。
その理由は、このゲームに採用されているクランシステムにある。
このゲームでは、最大10人までが同じクランに所属することができる。
攻略クラン、魔術研究クラン、考察クラン、生態調査クランなど、その種類は数え切れないほど多岐にわたっている。
そして、そんなクランにとって重要になるのが団員だ。
10人という限られた枠しかない以上、できることなら優秀な人材を加入させたい。
そこで目をつけられるのが、PVPの野試合だった。
まだ有名ではないプレイヤー同士の戦いを観察し、将来性のありそうな者をスカウトする。
いわば、原石を探しているわけだ。
だが、普通に考えれば、
「それならPVPステージの近くで直接監視していればいいのでは?」
と思うだろう。
しかし、そういうわけにもいかない。
実際に、PVPステージの近くで数時間にわたってプレイヤーを監視していた奴がいたらしい。
ところが、そいつはいつの間にか姿を消していた。
後から聞いた話では、そのプレイヤーはNPCに通報され、監獄に入れられていたという。
現実の世界で考えてみれば、何もせずに同じ場所で何時間も突っ立っている人間がいれば、不審者として通報されてもおかしくない。
どうやら、このゲームのNPCもその辺りはしっかりと判断しているらしい。
そんな理由から、PVPエリアを長時間監視するのはかなり難しくなっていた。
だが――。
俺の配信なら、どうだろうか。
まず、俺自身が石だ。
石を不審者として通報する奴なんていない。
そして、俺がログインしている限り、俺は定点カメラとして何時間でも同じ場所を見続けることができる。
そこで配信のタイトルを少し工夫した。
【SLO定点カメラ】始まりの街・噴水広場・PVPフィールド【スカウト歓迎】
その結果、有能な人材を探しているスカウトたちにとって、俺の配信は非常に都合のいい観察場所になっていた。
俺は、コメント欄を眺めている。
『今日のPVP、18時かららしいぞ』
『昨日の赤髪の奴また来るかな?』
『誰か今日の試合で強そうな奴いたら教えてくれ』
『石ニキ、今日も頼むわ』
……こうして俺の配信はPVP観戦者たちの間でちょっとした情報交換の場になっていた。
最初はただ暇を潰すために始めた配信だった。
それなのに、今では俺よりもずっと真剣にこの配信を利用している人たちがいる。
なんとも不思議な話だった。




